らしさ満点のファミリーカー シトロエンBX 英国版クラシック・ガイド 見えない錆にご注意 後編

公開 : 2022.09.04 07:06  更新 : 2022.09.04 12:53

1980年代のシトロエンを救ったBX。スタイリッシュで個性的、実用的なクラシックを英国編集部がご紹介します。

試乗で確かめたいハイドロの調子

シトロエンBXの中古車選びでは、可能な限り試乗をしてハイドロニューマチックの仕事ぶりを確かめたい。車高を一番高く設定し、上昇中によろめく場合はフロント・ストラットの劣化が疑われる。新品部品は出てきにくい。

LHMと呼ばれる化学合成の専用フルードは、外から見て漏れがなくても、内部で漏れている可能性はある。カチカチと不自然な機械音が数秒毎に聞こえるなら、ハイドロポンプや、窒素ガスで満たされた緑の球体、スフェアが劣化している証拠といえる。

シトロエンBX(1982〜1994年/英国仕様)
シトロエンBX(1982〜1994年/英国仕様)

エンジンを切ると、ハイドロニューマチックの圧力が抜けて車高がゆっくり落ちる。最初にリアが徐々に沈んでいくが、フロントは丸1日くらい高いままの例もある。これで正常だ。

エンジンをアイドリングさせた状態でブレーキペダルを踏んでみて、リアの車高が沈むなら、ブレーキバルブの劣化が疑われる。車高が高くなる場合は、ハイドロ・システム内にエアが混入している可能性がある。

乗り心地が固いのは、スフェアの不調だろう。ふわふわと落ち着かない場合は、正しくないスフェアが取り付けられたことが原因かもしれない。ブッシュやボールジョイントが劣化すると、滑らかな質感に影響が出る。

パワーステアリングが装備されているBXでは、ステアリングアーム部分のジョイントブーツの状態を確かめる。交換作業は、悪夢のように大変だという。

スタイリングは巨匠、ガンディーニ

シトロエンBXでは、マニュアル・トランスミッションが弱点の1つ。2速と3速のシンクロメッシュが傷みやすく、走行中にギアが抜けることもあるようだ。シフトフィールが悪い場合は、リンケージの交換で解決することが多い。

シトロエンは、多彩なエンジンへ理想的なギア比を与えるため、それぞれ異なるセットをBXに用意していた。異なるグレード用のトランスミッションへ交換されると、ギア比が不自然にロングだったりショートに感じられることがある。

シトロエンBX(1982〜1994年/英国仕様)
シトロエンBX(1982〜1994年/英国仕様)

1.4LエンジンのBXでは、デフギアが弱点。四輪駆動版も極少数存在するものの、肝心のトランスファーが弱い。台数が少ないため部品を探すことも極めて困難で、錆びやすいエグゾーストも出てこない。

初期のBXにはインチではなく、ミリ単位のタイヤとホイールが組まれていた。交換用タイヤは驚くほど高い一方で希少性は高く、マニアにとってはそそられるポイントになっている。

メカニズムにはシトロエン特有の難解さがあるBXだが、ベルトーネ社に在籍していた巨匠、マルチェロ・ガンディーニ氏によるスタイリングは、時代を超越する美しさがある。シャープで特徴的で、ブランドらしい個性に溢れたモダン・クラシックだといえる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マルコム・マッケイ

    Malcolm Mckay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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