ジェネシスGV60 詳細データテスト 韓国の高級ブランド 速く快適 四駆のハンドリングは安定志向

公開 : 2022.09.03 20:25  更新 : 2022.09.06 06:29

走り ★★★★★★★★★☆

直線加速でフォードマスタング・マッハE GTに勝るのは、100kg軽い車両重量と、ハイパワーをより長く出し続けられるパワートレインのおかげだ。ブーストモードでは、アグレッシブには見えないルックスのクロスオーバーでありながら、0−97km/hが3.8秒、0-100km/hが4秒フラットだ。

多くのEVとは異なり、速度が高くなっても勢いは衰えない。177km/hに達するまでは11.5秒で、フォードのライバルより9秒も早い。23.6秒で225km/hに達し、スピードリミッターが作動する235km/hまで問題なく加速する。

一般的なEVに比べれば、高速域での加速の衰えは小さいが、フルパワーを引き出せるブーストモードは、最大10秒しか使えない。モード選択や設定変更は手間をかけずに行える。
一般的なEVに比べれば、高速域での加速の衰えは小さいが、フルパワーを引き出せるブーストモードは、最大10秒しか使えない。モード選択や設定変更は手間をかけずに行える。    MAX EDLESTON

必要かと言われれば、そんなことはないだろう。しかし、これほどの加速性能があれば、スタートダッシュのショックが収まってきても、笑いが止まらない。もっとも、ほかのEVと同じく、ちょっとした注釈をつけ加えなくてはいけない。490psのフルパワーを長く出し続けることはできず、またどれくらいの出力を得られるかは走行モードによって変化する。

一般に、テスラとははっきり違って、設定を変えられることがGV60の特徴的な要素だ。ただし、その調整は面倒ではない。一度好みに合わせてしまえば、それ以降はいちいちメニューを呼び出していじらなくてもいい。

メインとなるモードは、エコ/コンフォート/スポーツの3つで、それだけでも大きな違いが出る。エコモードでは出力がフルパワーの半分ほどにとどまるが、分母が大きいので、普通に走るなら十分だ。

コンフォートモードでは、エコモードよりスロットルがシャープになり、より多くのパワーを引き出すが、デリバリーは奇妙な感じだ。ペダルを踏み込んでも、全開になったと感じるまでだいたい1秒くらい遅れるのである。まるで、盛大なターボラグみたいだ。

そして、すべての制約を外したのがスポーツモードということになる。ただし、ペダルを床まで踏み込んでも、435psまでしか出ない。本当のフルパワーを発揮させるには、ステアリングホイール上のブーストボタンを押す必要がある。すると、490psを最大10秒使える。それが物足りないと思うドライバーも、速さが増したと思うドライバーもいるだろう。

どのモードを選んでも、加速に伴うサウンドを選択できる。音の種類と音量が変更できて、まったくの無音から、フルに宇宙船のような感覚を味わえるモードまでが選べる。

好みのモードを見つければ、あとはできのいいEVに求められるような振る舞いを見せる。パワーはスムースに出て、トラクションコントロールのぎこちない介入はまったくない。ステアリングホイールのパドルで、回生ブレーキの具合は、フリクションのないコースティング走行からワンペダル運転まで、5段階に切り替えできる。

GV60は全車同じブレーキディスクを使用するが、スポーツ・プラスはフロントキャリパーが4ポットにアップグレードされる。ややガッカリしたのは、113−0km/hの制動テストでEV6を凌げなかったことだ。ただし、マスタング・マッハE GTよりは3m手前で止まった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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