ポルシェ718ケイマン RS 比較試乗 メルセデスAMG SLSxBMW M3 GTS 純な運転の喜び 後編
公開 : 2022.09.10 09:46
ポルシェがケイマンに設定したハードコアなRS。約10年前のAMG SLSとM3 GTSとの比較で、英国編集部が最新の実力を探ります。
もくじ
ーレーシングカーを運転するような気分
ーV8の滑らかで咽び泣くような高音
ー本能へ訴える豊かさと痛快なアグレッシブさ
ー記念すべきドライバーズカー
ー718ケイマン RS メルセデスAMG SLS BMW M3 GTS 3台のスペック
レーシングカーを運転するような気分
メルセデスAMG SLS ブラックシリーズから、BMW M3 GTSへ乗り換える。シートへ腰を下ろし、それぞれの位置を確認していくと、今回の3台で最も走りへの期待が高まることに気が付いた。デザインは、少々時代遅れなところがあるけれど。
シートの座面高は2台より高く、筆者にとって理想といえるドライビングポジションではないものの、特別感に溢れている。レカロのレーシングシートと鮮やかなロールケージが据えられ、レーシングカーを運転するような気分を生み出す。
そのまま発進すると、ハーネスをロールケージに固定する金具が、カチカチとうるさい。防音材も省かれているから、通常の3シリーズとは比較にならないほど車内へ届くノイズが大きい。聴覚的にもレーシングカー的だ。
スピードを追い求めて開発されたモデルは、走行速度がドライビング体験の重要な要素だとお考えかもしれない。だが実際には、ステアリングホイールやブレーキペダルへのフィードバック、クルマとの一体感や姿勢制御、エンジンの反応などがより重要となる。
実際、3台の動力性能は驚くほどではない。SLS ブラックシリーズは0-100km/h加速が3.6秒で、バッテリーEVの瞬発力に慣れてしまうと、際立つ数字とは思えない。
AMG製の自然吸気V型8気筒エンジンは、最大トルクが64.5kg-mと太いものの、5500rpmで生み出されるから少し気張って回す必要がある。とはいえ、鳥肌の立つようなサウンドと加速時の生々しい感覚という、ドラマチックさには言葉を失う。
V8の滑らかで咽び泣くような高音
タコメーターの針が傾くほど、興奮度も高まる。AMGのエンジニアは、あえて低速トルクを抑え、高回転型のピーキーなパワーデリバリーを与えたという。大きなボディに大きなパワーを組み合わせることで、濃密な速度変化を堪能できるように。
英国郊外を飛ばす場合は、アダプティブ・ダンパーを少し硬くした方がいい。通常のSLSより軽量化されているものの、路面の起伏に対して上下動が想像以上に大きい。サスペンションを引き締めれば、落ち着きがずっと高まる。
ステアリングは正確で精密。アクセルペダルの加減でリアアクスルを反応させ、旋回姿勢も調整できる。
それでも、滑らかで幅の広い道の方がAMG SLSを一層楽しめる。ブラックシリーズとはいえ、快適なグランドツアラーという本質は変わらない。
対象的に、変化に富んだタイトなルートを得意とするのが、M3 GTS。手動調整式のコイルオーバー・サスペンションは低く設定されているが、不整の多い路面を巧みに処理する。小さな凹凸を見事に吸収し、グリップへ影響が出る場面は限定的だ。
ステアリングホイールへ伝わる感覚は薄く、操舵感も軽い。7速デュアルクラッチATも、シフトダウン時に反応が若干遅れる。だが、V8エンジンが生む体感がそれらを上回る。ドロドロという重苦しさは一切なく、滑らかに咽び泣くように高音を響かせる。
M3 GTSの最大トルクは44.8kg-mと、2022年の水準でいえば控えめ。5000rpm以上を保ちたいと思わせる。もう少しの刺激が欲しいと感じたことも、確かではある。