4モーター1197psのエイリアン アリエル・ハイパーカー 最新BEVの試作車へ試乗 後編

公開 : 2022.09.09 08:26

アトムやノマドなど、強刺激なモデルを生み出すアリエル。彼らが試作したBEVのハイパーカーに英国編集部が試乗しました。

4基の駆動用モーターが放つノイズ

アリエル・ハイパーカーのサイドシルは広いものの、低く乗り越えやすい。ガスタービン・エンジンが高い位置にあり、リアガラスは存在しない。後方視界はサイドミラー頼りだが、前方の視界は素晴らしい。

インテリアは、完成前のプロトタイプとはいえ、質実剛健的なデザインで美しい。量産仕様では素材の質感が改められ、さらに魅力的になるそうだ。レンジエクステンダーの起動スイッチは、ミサイルの発射ボタンのようだった。

アリエル・ハイパーカー4WD プロトタイプ
アリエル・ハイパーカー4WD プロトタイプ

飛行機のコックピット的に、ルーフ側にコンソールパネルがある。手を伸ばしドライブを選択すれば、準備完了。アクセルペダルを徐々に傾けると、静かにハイパーカーが発進した。

シャシーには、まだ防音材が備わらない。ミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2の巻き上げる小石が、アルミ製のタブシャシーに当たる。

前後左右から、合計4基の駆動用モーターが放つノイズが響いてくる。ちなみに、2基の後輪駆動版も予定されている。BEVとして悪くない音だから、量産版にも残って欲しい。人工的なサウンドチューニングは必要ないように思う。

車外には、クルマの接近を知らせる低いハミングのような音が再生されるが、車内ではほとんど聞こえない。モーターのローターが発する悲鳴のような高音と、高圧電流が流れるシステムの電気的な唸りが、速度の上昇とともに大きくなる。

ドリフト・モード付きのドライブモード

静止からの加速は、1197psという最高出力から想像するほど野蛮ではない。アクセルペダルの操作に対する、駆動用モーターの調律が穏やかなためだ。

乗り心地は若干硬め。ステアリングホイールは重く、安定感がある。レシオはロックトゥロックが3回転と、クイックではない。開発技術者のトム・マクラーレン氏によれば、あくまでも現在は仮の設定だそうだ。

アリエル・ハイパーカー4WD プロトタイプ
アリエル・ハイパーカー4WD プロトタイプ

「まだチューニングには殆ど時間を割けていません。ダイナミックな性格付けにしたいと考えているので、サスペンション・スプリングやダンパー、ステアリングのレシオなどは、これから徐々に詰めていく予定です」

ドライブモードとして、エコとスポーツ、シリアス、ファンという4種類が用意されていた。最後のファンは、いい換えればドリフト・モードだ。デルタ・コスワース社によるシステムを実装するが、これも開発段階とのこと。

駆動用モーターの制御には、トルクベクタリング機能も加えられる予定。スポーツ・モードを選ぶと、最高出力の80%まで引き出せるようになる。というわけで、このハイパーカーの実力を確かめられる段階にはまだない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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