台湾プロロジウム EV用の固体電池工場、欧州建設へ 候補地は5か国90か所

公開 : 2022.09.06 18:25

台湾の電池メーカー、プロロジウムは新工場の建設候補地としてフランス、ポルトガル、スペインなど5か国をリストアップ。数千人規模の雇用を生み出すギガファクトリーをめぐり、各国の競争が始まっています。

年間120GWh規模 固体電池工場を建設へ

台湾の固体電池メーカーであるプロロジウム(ProLogium Technology、輝能科技)は、同社初の海外工場の建設候補地として、欧州5か国を挙げていることを明らかにした。建設にあたっては、80億ドル(1兆1000万円)の投資を行う予定だ。

同社は、この電池工場が欧州最大級になると見込んでおり、年間120GWhの生産能力を目標としている。参考までに、フォルクスワーゲン・グループは昨年、2030年までに合計240GWh(欧州6拠点分)の生産を目指すと発表している。

プロロジム社は以前、2023年までに固体電池の量産を開始すると表明していた。
プロロジム社は以前、2023年までに固体電池の量産を開始すると表明していた。

プロロジムによると、この新工場はサプライチェーンも含め、数千人の雇用を創出するという。

金融・戦略コンサルティング会社のアキュラシーとの提携により、フランス、ドイツ、オランダ、ポーランド、英国でのフィージビリティ・スタディ(実行可能性調査)を行った後、建設地を決定する。

選ばれる国の基準としては、既存のEV用インフラとサプライチェーンの強さ、エネルギー安全保障、再生可能エネルギー源へのアクセス、地元の人材プールなどが考慮される。

プロロジムのヴィンセント・ヤンCEOは次のように述べている。

「海外に積極的に進出する多くのアジア企業にとって、成功の鍵の1つは戦略的計画に根ざした強固な基盤です。立地選定には、その市場に適した技術やソリューションだけでなく、需要やトレンドに関する深い知識も必要です」

プロロジアムの立地選定には当然、政府の援助も影響する。例えば、英国と韓国の合弁企業ユーロセルが最近、英国ではなくオランダに電池工場を建設することを決めたのは、英国政府からの支援が得られなかったためだと考えられている。

ユーロセル社の最高商務責任者ニック・クレイ氏によると、電池の「原産地規則」によって英国・EU間の出荷が影響を受けるかどうかについて、「明確な回答を得ることができなかった」という。この規則では、英国製の製品には一定レベルの現地調達品が含まれていることが義務付けられている。

また、クレイ氏は、「フランス、ポルトガル、スペインでは、EUの資金援助を受けることができる」とも述べている。このため、アキュラシー社とプロロジム社にとっても、英国の優先順位は高くないと言えるだろう。

アキュラシー社のパートナーであるザヒール・ミンハス氏は、「用地確保の競争はすでに熾烈を極めている」とし、「選ばれた地域にとって変革のきっかけとなる」「質が高くて環境に優しい仕事を今後数年間導入する」ことになるだろうと述べている。

プロロジウムは、2023年の第2四半期までに建設地の最終決定を下す予定。同社は現在、メルセデス・ベンツと技術提携を結んでいるほか、中国のEVメーカーであるニオ(Nio)やベトナムの自動車メーカー、ビンファストと提携し、自動車用固体電池の開発を進めている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事