スピードの出し過ぎを抑制 自動速度制御装置「ISA」について知っておくべきこと
公開 : 2022.09.07 06:05
EU欧州連合では2022年7月から発売の新型車において、ISA(自動速度制御装置)の搭載を義務付けています。交通事故の軽減を目的としたもので、日本も無縁とはいえません。今回はISAについて改めて考えてみました。
なぜ導入? クルマへの影響は
2019年4月16日、欧州議会は、2022年7月から発売される新型車にインテリジェント・スピード・アシスト(ISA)システムの装着を義務付けることを決定した。この法律はEU圏内に適用され、英国では未確定だが、導入の兆候が見られる。
欧州議会が法案にゴーサインを出してからしばらく、特に欧米の自動車メディアではISAが見出しを飾った。しかし、そのほとんどは「速度制限」についてのもので、議会が言うところの「インテリジェント(知的)な速度アシスト」に関するものではなかった。今回は、速度制限に限らず、ISAについて幅広く見ていきたい。
EUでスピードリミッターとドライバーモニターが義務化へ
欧州で見られる多くの報道では、「インテリジェント」や「アシスタンス」といった重要な単語はあまり使われず、「2022年以降すべての新型車にスピードリミッターを搭載」といった見出しが付けられることになった。
確かに、読者の興味を強く引く見出しだし、内容も大きく間違っているわけではない。英国のAUTOCARとて他媒体を揶揄することはできないだろう。しかし、偏った情報発信の方法は事実を湾曲して伝えてしまう。一部では、「速度制限」がクルマの性能とハンドリングを無意味にするとまで予測されている。
改めて、ISAの真意を考えてみたい。インテリジェント・スピード・アシスト・システムとは何か、それを搭載したクルマの運転はどのようなものか。本当にクルマをつまらなくさせてしまうものなのか。
なぜISAが必要なのか?
ISAシステムに関して欧州議会に助言を行った欧州運輸安全協議会(ETSC)によると、欧州諸国ではスピード違反が大きな問題となっており、EU圏内で毎週500人の死亡事故が発生している主な原因は、スピードの出し過ぎにあるという。
スウェーデンとオランダの研究では、ISAを導入すると、たとえシステムのスイッチを切っていても、ドライバーは比較的ゆっくりと運転することが示されている。
ETSCのプロジェクト・ディレクターであるグラツィエラ・ジョスト氏はISAについて、「EUに大きな変化をもたらす一世一代のチャンスです。すべての新型車にISAを標準装備すれば、最終的には交通死亡事故の5分の1を防ぐことができるでしょう」と述べている。
まとめると、交通死亡事故の原因はスピードの出し過ぎによるところが大きく、ISAをすべての新型車に導入することで、交通事故における死者数を大幅に減らすことができるはずだ、というのがETSCの考え方である。