スピードの出し過ぎを抑制 自動速度制御装置「ISA」について知っておくべきこと

公開 : 2022.09.07 06:05

ISAはどのように機能するのか?

ISAは、クルマに取り付けたフロントカメラと、車載のナビゲーションシステム(カーナビ)を使って制限速度を認識する。カメラで道路標識を読み取り、ナビの位置情報と合わせて認識する仕組み。制限速度を超えている場合は、エンジンに供給される燃料を制限することで速度を抑制する。

ブレーキ操作には一切介入しないので、車速の低下は緩やかで段階的とされる。ISAが作動すると、アクセルペダルが反応しなくなるが、EUではオーバーライドが可能で、アクセルを強く踏めば加速できる。もし制限速度を超えて運転し続けた場合、ISAは警告音を鳴らし、ディスプレイにも数秒間警告を表示する。

ISAはフロントカメラによる標識の読み取りと、ナビの位置情報を利用して制限速度を認識する。
ISAはフロントカメラによる標識の読み取りと、ナビの位置情報を利用して制限速度を認識する。

システムはいつでもキャンセルすることができる。ETSCは、ドライバーがISAを受け入れやすくするために、最初の数年間はキャンセル機能の搭載を推奨している。もちろん、搭載されれば半永久的に使えるはずだが、いずれは搭載されなくなるかもしれない。

ISAシステムの精度は?

ドイツのドライバー団体ADACが実施したテストでは、2015年に発売のフォードSマックスに搭載されたISAシステムは、約90%の正確性を示した。2018年、道路標識認識システムとISAのサプライヤーであるインテル傘下のモービルアイ(Mobileye)社は、欧州議会のワークショップで、ほとんどのEU諸国で最高95%の精度があると述べた。また、さらに精度を高められるとしている。

ISAシステムの使い方

フォードは2015年、欧州で販売するギャラクシーとSマックスにISAをオプションで導入したところ、購入者の95%が追加したという。現行のフォード・フォーカスは、初めて標準装備されたモデルだ。AUTOCARの英国編集部は、公道において約300kmのテスト走行を行っている。

システムを起動するには、ステアリングホイール上の「LIM」ボタンを押す。制限速度はメーターディスプレイとナビ画面に表示される。先述の通り、ドライバーの意思でいつでも解除可能だ。

フォードが欧州で販売するMPV、Sマックス。以前から購入者の任意でISAを搭載することは出来た。
フォードが欧州で販売するMPV、Sマックス。以前から購入者の任意でISAを搭載することは出来た。

システム作動中、制限速度を超えようとすると、エンジンのパワーが落ちていくのを感じる。ペダルを少し強く踏み込むと(キックダウンの必要はない)、リミッターが解除され、フルパワーに戻る。

フォードに搭載されたISAでは、メインのLIMボタンとは別に、複数のボタンで上限速度の設定を上げたり下げたりすることができる。一見、おかしなものにも思えるが、後続車の列ができると使うようになる。システムが義務化されれば、スピードアップへのプレッシャーは軽減されるはずだ。

編集部が英国でテストしたところ、ISAは、時速20マイルゾーンと30マイルゾーンが交互に存在するようなエリアで特に有効であることがわかった。また、制限速度が時速40マイルから30マイルに変更された区間でも有効であった。どこから制限速度が切り替わるのかわかりにくい場所でも便利だ。

テスト中、システムの反応が鈍く、近隣の別の道路で設定されている制限速度に惑わされたことがあった。また、ハンプシャーの静かな村で、制限速度が誤って時速60マイル(97km/h)と表示されたことも一度だけあった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョン・エバンス

    John Evans

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ愛知在住。幼少期から乗り物好き。住宅営業や記事編集者といった職を経て、フリーランスとして自動車メディアで記事を書くことに。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。

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