【詳細データテスト】ケータハム・セブン 調整式のダンパーを初採用 音と乗り心地は強烈 価格は高い

公開 : 2022.09.10 20:25  更新 : 2022.10.04 04:56

走り ★★★★★★★★★☆

420カップは、パワーとトルクが比較的低いが、それでもかなり元気に感じられるという、ケータハム・セブンらしさを存分に味わえるクルマだ。213psというと、いまどきフォルクスワーゲン・ゴルフGTIよりも低い。

しかし、トランスミッションはローギアードなうえに、なにより車両重量が560kgしかないので、本格的なパフォーマンスカーであっても立派だといえるような加速タイムをマークする。

ゴルフGTIより非力なエンジンと、現代のクルマとは思えないCd値でありながら、911カレラS並みの加速を見せる。軽さと前面投影面積の小ささが効いている。
ゴルフGTIより非力なエンジンと、現代のクルマとは思えないCd値でありながら、911カレラS並みの加速を見せる。軽さと前面投影面積の小ささが効いている。    MAX EDLESTON

3速・48−80km/hは1.9秒で、これはポルシェ911カレラSに肩を並べる。コンクリートブロックのようなシェイプでありながら、前面投影面積が小さいので、高速域での空気抵抗は小さく、161km/h到達タイムは、510psのBMW M4コンペティションに0.6秒遅れるにすぎない。

スタンディングスタートも冴えていて、楽しめる。ただし、今回のテストでマークした0−97km/hタイムは4.2秒と、公称値の3.6秒に及ばない。おそらくケータハムは、よりハイグリップなZZRエクストリームを履かせて計測したのだろう。

しかしながら、数字より大きな意味を持つのは、このパワートレインがもたらす感覚だ。スロットルレスポンスはうれしいくらいにシャープで、パワーデリバリーはリニア。それが7900rpmのレッドラインまで淀みなく続く。しかも、少なくともデリバリーに関してはマナーがみごとだ。

1500rpmあたりで勢いよくスロットルを開けると、エンジンは一瞬遅れるが、現実的なシーンでそういう操作をすることはないだろう。そして、それ以外にこの2.0Lユニットを粗く感じさせる要素は、荒っぽい吸気音と、ドライバーの右下で唸りを上げるエグゾーストくらいだ。

問題があるとすれば、たまに起こるカンガルー・ペトロールだろう。たいていは低速時に起きるそれは、スロットルペダルの敏感さと、スムースに入力し続けるのが難しくなるような路面で、車体がジャークする現象だ。

シフトチェンジは、このクルマの白眉だ。カジュアルなドライビングでは、この途切れ目がありレバーが硬いトランスミッションを扱うのにクラッチを使ったほうがいいことが多い。しかし、レッドラインまで回してクラッチなしで変速すると、その変速スピードと精密さには驚きを禁じ得ない。ものすごい音にもだ。

ゴツゴツと音を立てるディファレンシャルとすすり泣くようなギア、機械的な音を立てるシフトの中で繰り広げられる420カップのドライビングは、どんな速度域でも暴力的で、しかし楽しく、元気が湧いてくる。

注意が必要なのは、リバースギアのセレクトがトリッキーなこと。バックが必要な切り返しは避けたいところだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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