【詳細データテスト】ケータハム・セブン 調整式のダンパーを初採用 音と乗り心地は強烈 価格は高い

公開 : 2022.09.10 20:25  更新 : 2022.10.04 04:56

快適性/静粛性 ★★★☆☆☆☆☆☆☆

420カップ、それもフロントウインドウがない仕様に、乗員を快適に過ごさせようという気があるとは思えない。重要なのは、サーキット走行をするかぎり、ほとんど不満はないということだ。このクルマはピュアで、守備範囲が広いだけでなく、45分程度の短いスティントであれば快適に乗れる。すばやい動きには慣れっこのはずだが、それでもフレッシュさはある。

シートは、身体が動かないようしっかり支えてくれる。速度が上がるとステアリングは軽く、高負荷のコーナーが連続しても楽に扱える。

フルフェイスのヘルメットと耳栓が必要なクルマに、乗り心地や静粛性を期待するのは野暮というもの。420カップは、そう割り切れるひとのためのセブンだ。
フルフェイスのヘルメットと耳栓が必要なクルマに、乗り心地や静粛性を期待するのは野暮というもの。420カップは、そう割り切れるひとのためのセブンだ。    MAX EDLESTON

とはいえ、420カップはナンバー付きのロードゴーイングカーだ。公道での性質にも触れなくてはならない。とことん折り合おうとしないそれにだ。

ストレートカットのギアを用いるトランスミッションは盛大に音を発し、3000rpm以下なら、決して耳に心地よいという程度に収まらない排気音すらかき消してしまう。ヘルメットの下に耳栓をすることをおすすめする。

そう、ヘルメットはフルフェイスが必須。さもないと、走行中に虫が口に入ったり、もっと悪いと飛び石が顔を直撃することも考えられる。

乗り心地については、ダンパーをもっともソフトにすれば、プライマリーライドは上々。しかし、バスタブにタイヤをつけたようなクルマでは避けがたい衝撃一般を和らげてくれるほどではない。ペダルボックスはぎゅうぎゅう詰めだが、少なくともクラッチペダルは幸か不幸かだいぶ重いので、クルージング中のフットレスト代わりになる。

間違いなく、105mm広くて250mm長いSVシャシーは、25kg重くなる代わりに状況を改善してくれるし、レーシングスクリーンをフロントウインドーに付け替えればさらによくなるはずだ。しかし、420カップの旨みは薄らいでしまうだろう。結局これは、弱気になったらメリットを享受できないクルマなのだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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