幼稚園バス3歳児置き去り死、防ぐには? 「スクールバス王国」アメリカ 安全策は意外にアナログ でも確実
公開 : 2022.09.08 07:24 更新 : 2022.09.08 09:59
センサーやカメラではない アナログな方法で子どものスクールバス置き去りを阻止
スクールバス王国、といえるアメリカでは小学校1年生(5歳~)から17歳まで約9割近くの児童生徒は自家用車またはスクールバスを利用して登校する。
4歳以下の幼稚園児の場合は保護者が自家用車で送迎するのが一般的だ。
時に命を奪う危険も大きい「車内置き去り」に対してアメリカではどのような対策が講じられているのだろうか?
アメリカのスクールバス製造会社大手「ICバス」が標準装備している「Leave No Student Behind」(後ろにいる子どもを置き去りにしない)
手順としてはシンプルでメーカー公式の動画で手順が説明されている。
スクールバスの後部安全機能「Leave No Student Behind」について
朝、子どもたちを乗せたバスが学校に到着し子どもたちが降車するのを見届けると、ドライバーはエンジンキーをイグニッションから抜く。
その瞬間からバス内にアラームが鳴り響く(10分以上の走行後のみ)。このアラームを消すためにドライバーはバスの最後部まで歩いてアラームを解除(リセットボタンを押す)する必要がある。
リセットボタンを押す際に最後部まで行く間、一席ずつ確認して子どもが眠ったまま残っていないか? シート下に隠れたりしていないか? 確認しながら歩くことになる。
カメラやセンサーではなく、ドライバーが一席ずつ歩いて子どもたちが車内に残っていないかを確認する。そして、ボタンを押すという作業を最後におこなう。
その後、ふたたび運転席に戻るまで、もう一度シートや車内を確認することもできる。
アナログなシステムではあるが、確実に子どもの置き去りを防ぐことができる。
アメリカのスクールバスは道路上最も安全な乗り物
アメリカのスクールバスは5歳からの利用が基本となる。これに対して日本の幼稚園バスは年少=3歳からバスに乗る。
3歳と5歳では体の発育も違うし、言動も異なるのは当然だが、Leave No Student Behindの方法なら3歳児だろうが5歳児だろうが中高生だろうがドライバー自身が絶対に確実に見落とすことがない。
また、体が小さすぎてセンサーに反応しない、カメラに映らないなどの心配もない。
日本では全般的に「乗車中の子ども」を守ることが保護者やスクール頼みなところがある。
つまり、社会全体、子どもに関わる産業全体で子どもを守ろうという仕組みが確立されていないのだ。
チャイルドシートに関しても同様で、法制化から20年以上経過していても着用率はやっと7割。そして正しく使用できているのはわずか2〜3割というデータがある。
どんなチャイルドシートを選んでどのようにつければいいのか? 警察に聞いても「取扱説明書を見てつけてください」としか言われない。
取り締まりも甘く、ほとんどは使用しているかの確認のみとなる。正しく着用しているか? 事故の際にちゃんと拘束されるのか? 体に合ったチャイルドシートを使っているか? といったところまでは、警察はチェックしないし、チェックできる知識や情報も持っていないだろう。
話を戻そう。
アメリカNHTSAにおいて「スクールバスは道路上、もっとも安全な乗り物」であると定義されている。
NHTSAとは日本の国交省自動車局のような組織であり、アメリカの自動車に関する保安基準を定める政府機関でもある。
NHTSAが定めた保安基準がFMVSSであるが、スクールバスに関してはあらゆる自動車の中で最も多くのFMVSSが関わってくる。
こちらに書き出すにはあまりにも膨大なので割愛するが、日本の幼児バスに関する保安基準の何十倍も多くの厳しい基準をクリアする必要がある。
その1つに、スクールバスが停車して子どもが乗降しているときに出される『ストップアーム』がある。
日本では幼児バスが止まっているときにはせいぜいウィンカーとハザードランプだけだが、アメリカのストップアームの中には約2mもの長さになる延長タイプもあり、多くのスクールバスで導入されている。
巨大で視覚的にも物理的にもクルマがスクールバスの横をすり抜けることを阻止する。
なお、日本は幼児バスの横を通るときは「徐行」だが、アメリカではスクールバスの追越は厳禁でバスが動くまで他のクルマは待つ必要がある。