価格度外視で欲しくなる フォルクスワーゲンID.バズへ試乗 航続410kmのEVミニバン 後編

公開 : 2022.09.12 08:26  更新 : 2022.09.12 11:36

多くの人に愛されるVWタイプIIが、ポップなBEVになって復活。最新のミニバンを公道で英国編集部が評価しました。

機能性重視の広々としたインテリア

フォルクスワーゲンID.バズのスタイリングが放つポップな印象と比べて、インテリアは機能性重視。とはいえ、ライフ・グレードの試乗車のようにポップな配色が施されれば、リアシートに乗っていても明るく陽気な気持ちで移動できるはず。

フロントシート側はトランスミッション・トンネルがなく、非常に広々している。いい換えると、運転席と助手席は離れている。大きなフロントガラスも遠く感じる。内装にはリサイクル素材を積極的に採用する一方で、レザーは指定できないそうだ。

フォルクスワーゲンID.バズ・スタイル(欧州仕様)
フォルクスワーゲンID.バズ・スタイル(欧州仕様)

車内には、手持ちの小物をしまえるポケットなどの収納があちこちに用意されている。USB-Cポートは最大8個まで装備可能だから、家族全員がスマートフォンの充電をしても困ることはない。

ダッシュボードの中央には大きなインフォテインメント用のタッチモニターが据えられる。システム・バージョンは最新の3.2で、フォルクスワーゲンのCEO、トーマス・シェーファー氏は従来より遥かに安定して動作すると自信を見せる。

同時に、少々扱いにくいことも認めていた。従来のクルマなら、ボタンを1つ押せば済む機能が、このシステムではメニューを掘り下げる必要がある。運転中のことを考えれば、煩雑な操作は避けたいところ。改良の余地はあると思う。

タッチセンサー式のエアコン用操作パネルには、バックライトが内蔵されていない。夜間に温度を変えようと思っても、暗くてどこを触れて良いのかわかりにくい。こちらも再考するべきだろう。

乗用車のようなドライビング体験

インテリアには気になる部分もなくはないID.バズだが、走り出せば楽しい気分で満たされる。バッテリーEV(BEV)は、ミニバンとの相性がとてもいい。特に静寂性や洗練性は、内燃エンジン・モデルでは実現し難いだろう。

ドライビング体験自体は、フォルクスワーゲンID.4アウディQ4 eトロンなど、MQBプラットフォームをベースとするモデルと大きな違いはない。加速力が恐ろしく鋭いわけではないものの、極めて活発。回生ブレーキの効き具合も丁度いい。

フォルクスワーゲンID.バズ・スタイル(欧州仕様)
フォルクスワーゲンID.バズ・スタイル(欧州仕様)

ステアリングコラムから伸びるセレクターでBモードを選択すれば、ワンペダル・ドライブも可能になる。アクセルペダルの加減で発進から停止までまかなえる。

日常的な条件なら、必要に応じて不満ない中間加速も引き出せる。モーターの回転速度が速くなり、速度域が高くなっても、太いトルクが湧き出てくる印象だった。

ステアリングホイールには適度な重み付けが施され、反応は正確。大きなミニバンに乗っているというより、乗用車のような感覚を受ける。風切り音も小さい。

ID.バズ全体の操縦性にもそれは当てはまり、低い位置の駆動用バッテリーが叶える低重心のおかげで、カーブでのボディロールは想像より遥かに抑えられている。見た目の印象を良い意味で裏切るほど、意欲的に曲がりくねった道を駆け抜ける。

リアモーターの後輪駆動というパッケージのおかげで、小回りも効く。最小回転直径は11.1mだそうだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

価格度返しで欲しくなる フォルクスワーゲンID.バズへ試乗 航続410kmのEVミニバンの前後関係

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