フェラーリがSUVだと! 「プロサングエ」発表 4ドア/4座「スポーツカー」 いま実現のワケ

公開 : 2022.09.14 02:00  更新 : 2022.09.14 16:50

4ドア・4座が今まで実現しなかったワケ

「じつをいうと、フェラーリは1980年代にも4人乗り4ドアのプロジェクトを、ピニンファリーナとともに計画したことがあります」

前出のガリエラ氏は教えてくれた。

フェラーリ・プロサングエ
フェラーリ・プロサングエ    フェラーリ

「フェラーリの顧客には、2シーターに加えて、家族で外出するときもフェラーリに乗りたいというひとが少なくないんです。その要求に応えようとしたんです。ところが、クルマの出来が、(故)エンツォ・フェラーリが設定した基準に達しませんでした。そこで計画は中止となったんです」

そういうフルゼンツィ氏に、ではなぜいま企画が実現したんですか、と尋ねた。

ひょっとして、このようなクルマの市場が拡大したからですか。

「たしかに、たとえばSF90に乗りながら、家族で乗れるフェラーリを作ってほしいと、顧客からの要望は依然として強くありました。でもプロサングエが実現した最大の理由は、わたし達がこれなら、と納得できるアクティブサスペンションが完成したからです」

自然吸気エンジンで表現する「スポーツカー

プロサングエのサスペンションは48Vで動作するモーターを使った電磁式で、ボディの動きとタイヤの動きの両方を高周波で制御するので、ロールとピッチを抑えると共に、路面の凹凸も(コイルスプリングをうまく使って)吸収。エアサスペンションよりはるかにすぐれたレスポンスの高さゆえ、コーナリング性能を最大化できるという

フロントはダブルウィッシュボーンをベースにロワーアームに2本のリンクを使ったもので、「あらゆる方向への自由度を高めています」とフルゼンツィ氏。

フェラーリ・プロサングエ
フェラーリ・プロサングエ    フェラーリ

サスペンションの上部にはコイルスプリングも取り付けられている。乗り心地のためと説明された。

エアサスペンションを使わなかったのは、「反応が遅すぎるから」とばっさり。

さらに、後輪には操舵システムもそなえ、「スポーツカー」としてのハンドリングが追求されている。

エンジンは、6496ccのV型12気筒で、あえて自然吸気。

最高出力は725CV(523kW)で、最大トルクは73.0kg‐m。

フェラーリによると、静止から100km/hまでを3.3秒で加速する。

ハイブリッドなどのパワートレインは予定にあるかと尋ねると、「V12があってこそのクルマ」ということで、「予定は当面ありません」というのがガリエラ氏の返答だった。

8段ツインクラッチのギアボックスはリアディファレンシャルギアと一体型のトランスアクスル方式を採用。

「7速までクロースで、8速は高速ツーリング向き。ダウンシフティングなどが楽しめるようにしています」とフルゼンツィ氏。

4WDシステムは、フロントはPTU(パワートランスファーユニット)に組み込まれたクラッチで左右の駆動力配分を調整する。

後輪の操舵システムの特徴は、左右輪を同時におなじ角度で動かすではなく、別べつに。

基本的に外側のタイヤは直進方向を向いている。

「それによって、より加速に対する反応が速く、よりステアリングの精度が上がります」。フルゼンツィ氏はメリットを説明してくれた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    小川フミオ

    1959年生まれ。慶應義塾大学文学部英米文学科卒業。二玄社(にげんしゃ)で「NAVI」の編集に携わる。1999〜2001年、編集長。02年より「モーターマガジン」(モーターマガジン社)の編集長に。同年秋より「Food and Style」を謳うグルメ誌「アリガット」(IMAGICAパブリッシング)の編集長に。2004年よりフリーランス。
  • 編集

    上野太朗

    Taro Ueno

    1991年生まれ。親が買ってくれた玩具はミニカー、ゲームはレース系、書籍は自動車関連、週末は父のサーキット走行のタイム計測というエリート・コース(?)を歩む。学生時代はボルボ940→アルファ・スパイダー(916)→トヨタ86→アルファ156→マツダ・ロードスター(NC)→VWゴルフGTIにありったけのお金を溶かす。ある日突然、編集長から「遊びにこない?」の電話。現職に至る。

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