世界最高の座を狙う ロールス・ロイス・シルバーシャドー キャデラック・セビル ジャガーXJ12 前編

公開 : 2022.09.25 07:05

シボレー・カプリスのプラットフォーム

シャシーはモノコック構造の前後に、サブフレームを結合。リアサスペンションはコイルスプリングにトレーリングアームという組み合わせで、セルフレベリング機構も装備していた。

またシリーズIIではステアリングラックがラック&ピニオン式へ改められ、フロント・サスペンションも改良。操縦性はシリーズIから大幅に向上していた。

キャデラック・セビル(1976〜1979年/北米仕様)
キャデラック・セビル(1976〜1979年/北米仕様)

一方のキャデラックは、シボレー・カプリスのプラットフォームがベース。剛性を高めるため追加溶接などの変更は受けていたが、基本的には1970年代のアメリカ車の延長上にあることは否定できなかった。

リアサスペンションはリジットアクスルにリーフスプリング。セルフレベリング機構は取り入れられていたが、ロールス・ロイスの洗練性には及ばない。

エンジンはシルバーシャドーと同じプッシュロッド式のV8ながら、排気量は5735ccと1L以上の差があった。燃料インジェクションと電子制御の点火システムを採用するものの、アメリカの厳しい排気ガス規制の影響でパワーも伸び悩んだ。

4400rpmで引き出せた最高出力は180ps。最大トルクは37.9kg-m/2000rpmと悪くはない。

さて、1977年に世界最高のクルマの座を狙ったのは、キャデラックだけではない。ふかふかのカーペットやしっとりしたレザーの内装だけでなく、意欲的な走りと乗り心地でユーザーを満たす必要もあった。ジャガーXJ12も、ここへ加えるべき1台といえる。

289psの最高出力は3台で1番大きい

シルバーシャドーと同様に、ジャガーXJ12の登場は古い。シリーズ1の発売は1968年にさかのぼる。1973年にシリーズ2へ交代。主にロングホイールベース版が選ばれ、1979年まで生産されている。

XJ12の魅力的な走りを生んだのが、ラバーマウントされたサブフレーム。リア側ではロワー・ウイッシュボーンを支え、ドライブシャフトがアッパー側のリンクを兼ねるという、知的な設計が施されている。

ブラックのキャデラック・セビルとゴールドのロールス・ロイス・シルバーシャドーII、ホワイトのジャガーXJ12 LWB
ブラックのキャデラック・セビルとゴールドのロールス・ロイス・シルバーシャドーII、ホワイトのジャガーXJ12 LWB

デフ側にディスクをレイアウトする、インボード・ブレーキ構造をリアに採用。バネ下重量を軽減させていたのも特徴だ。

エンジンは5344ccのV型12気筒。ウォルター・ハッサン氏とハリー・マンディ氏が開発したアルミ製ブロックにSOHCヘッドが載ったユニットは、1972年からXJシリーズへ登用された。

燃料インジェクション化され、最高出力は289ps/5750rpmと3台で1番大きい。最大トルクも40.5kg-mとシルバーシャドーへ迫る。トランスミッションは、先出の2台と同じGMの3速オートマティックが組まれた。

シャシー構成や動力性能には、それぞれ小さくない違いがある。インテリアの設えも重要だ。だが、スタイリングの存在感が選択を大きく左右したはず。

スティーブン・ブリッジス氏が所有する、1977年式ロールス・ロイス・シルバーシャドーIIへ近づくと、その点での圧倒的な強さは伝わってこない。神々しいウィロー・ゴールドのカラーでも。

3台を並べるとボディサイズは1番大きい。全高は1517mmあり、1389mmのセビルや1371mmのXJ12と比べると、威圧的なボリューム感はあるのだが。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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