ベントレー・ベンテイガxランドローバー・レンジローバー 英国ラグジュアリーSUV比較 後編
公開 : 2022.09.24 09:46
滑らかで敏捷性の高いベンテイガ S
コーナリングも同様だった。2台ともアンチロール・システムが備わり、コーナーでボディが大きく傾くことはないが、ダイレクト感やスポーティ感は小柄なモデルには及ばない。そもそも、車重2.5tを超えるSUVが目指すべき能力ではないけれど。
ベンテイガ Sであっても、ポルシェ・カイエン・ターボGTのようにはカーブを曲がらない。それでも、直径が小さい3スポークのステアリングホイールと、クイック化されたレシオによって、レンジローバーより敏捷性は高い。
ピレリPゼロというタイヤが優れたグリップ力を発揮し、タイトな身のこなしへ結びつけている。ステアリングは軽く正確で、オイルのように滑らか。操舵性は悪くない。
レンジローバーでカーブへ侵入すると、大きめのボディロールとスローなステアリングレシオに最初は少し当惑するが、すぐに慣れるはず。反応は正確で滑らか。予想したとおりにボディがゆっくり傾いていく。カーブの続く道をリズムカルに抜けていける。
タイヤはピレリ・スコーピオンというオールシーズンが標準。幅は285mmと太く、SUVらしくない運転をしない限り、グリップ力の限界を公道で迎えることはないだろう。オフロードの走破性も持ち合わるタイヤでもある。
ちなみに今回は、タイヤの能力が大きく左右するため、オフロード性能は確認しなかった。過去の試乗では、15万ポンド(約2475万円)や18万ポンド(約2970万円)の高級モデルへ期待する以上の走破性を備えることは確認できている。
ベンテイガより上質な調律のV8サウンド
最後にエンジンへ触れておこう。2台の性格付けが、如実に表れている部分といえる。
ベンテイガ Sには専用エグゾーストが組まれており、聴き応えのあるサウンドを奏でる。コンフォート・モード時は控えめにこもった唸りが響いてくる。ベントレー・モードかスポーツ・モードを選択すると、加速時にV8らしい轟音を楽しませてくれる。
レンジローバーに積まれるBMW譲りの4.4Lツインターボエンジンは、タービンがエグゾーストノートを多少消しているものの、厚みのあるV8サウンドを放つ。高負荷時の音響はベンテイガより上質で、このモデルにふさわしい調律だと思う。
最高出力は530psで、19psだけベンテイガに及ばない。だが、0-100km/h加速は4.5秒に対し4.6秒と、ほぼ同じだ。
トランスミッションは、基本的には同じZF社製の8速オートマティックを採用するが、設定が若干異なる。レンジローバーでは鋭く回るエンジンへ合わせるように、加速時はアクセルペダルの角度へ反応し素早くキックダウンする。
ベンテイガの方はオットリ気味。実際にエンジンへの負荷が高まったと判断されるまで、変速しないような印象だった。とはいえ、8速ATの振る舞いが大きな減点要素にはならないだろう。