BMW 航続距離1000kmの次世代バッテリー「Gen6」公開 2025年以降EVに搭載
公開 : 2022.09.16 18:25
BMWは、2025年以降に発売する次世代EV用のバッテリーとして、「Gen6」技術を公開しました。テスラのような円筒形のセル形状を採用し、最大1000kmの航続距離を実現できるとのこと。
中国企業から調達 最新の円筒形セル
BMWは、EV用の次世代リチウムイオンバッテリー「Gen6」の詳細を発表した。
2025年以降の次世代EV「ノイエ・クラッセ(Neue Klasse)」シリーズに搭載予定で、現在使用されている角柱状のセルではなく、テスラが好んで使用している円筒形のセルを採用している。
BMWのエフィシェント・ダイナミクス担当のトーマス・アルブレヒトは、AUTOCARにこう語っている。「Gen6バッテリーは、現在のGen5よりも30%以上航続距離が伸びますが、1000km(620マイル)の航続距離を超えることはないでしょう。これほど長い航続距離は必要ないと考えています」
また、DC急速充電器の充電時間も最大30%改善される予定。つまり、Gen6時代のBMWは約270kWの超急速充電に対応する見通しだ。
さらに、バッテリーパックの重量も、ミッドレンジ仕様で約300kgのGen5よりも10~20%程度軽くなると推定される。
個々のセルは、直径46mm、高さ95mmまたは120mmの円筒形。中国のバッテリーメーカーであるCATL社とEVE社から供給されたもので、コバルトの使用量を減らす代わりにニッケルを増やしている。
セル形状の変更に伴い、バッテリーパックの設計も改められ、スリムで汎用性の高い「パック・トゥ・オープンボディ」の取り付けが可能になった。バッテリーがクルマの構造体と一体化したような形になっている。
BMWのバッテリーセル開発責任者であるマリー=テレーゼ・フォン・シュルビックは、次のように述べている。「この次世代バッテリーでは、セルの扱い方の柔軟性を高めることができます。車両全体の適応力も向上します」
また、バッテリーの寿命について、アルブレヒトは、「バッテリー寿命を保証するための法律が制定されつつあります。例えば、米国では10年後も80%以上のバッテリー性能を維持するよう求められます。Gen6はそれ以上の性能を発揮しています」と述べた。
リサイクル性も重視 環境負荷低減へ
新しいGen6バッテリーの生産のため、BMWはカナダ、中国、欧州、メキシコ、米国に6つのバッテリー工場を新設する計画である。既存の自動車生産施設の近くに配置され、輸送の必要性を軽減する。
BMWは、バッテリーの設計と製造プロセスの変更により、生産コストを約50%削減できると見積もっている。現在、バッテリーはEVの総コストの約40%を占めているため、大幅なコスト減につながりそうだ。
また、BMWの全施設およびサードパーティ・サプライヤーの施設において、完全に再生可能なエネルギーへの転換を進めるなどして、生産時に発生するCO2を60%削減すると言われている。
さらに、リサイクル性にも重点を置いている。フォン・シュルビックは次のように説明する。
「わたし達は、バッテリーに含まれる金属を循環的に使用することを目指しています。中国のあるメーカーと最初のクローズド・ループを達成することもできました。最終的には、バッテリーに含まれる貴金属のすべてではないにしても、そのほとんどをリサイクルで調達できるようになるでしょう」
Gen6バッテリーに関するより詳細な情報は、2024年以降に計画されているBMWの「バッテリー・カーボン・フットプリント宣言」で明らかにされる予定だ。
他のバッテリー技術については、否定も肯定もされていない。フォン・シュルビックは、「リン酸リチウムイオンバッテリーも研究してきましたが、セル単位のエネルギー密度がはるかに低いため、航続距離の短い車種にこの技術を使用する方が理にかなっています」としている。
Gen6バッテリーは、2025年の導入後、ロールス・ロイスからミニに至るまで、BMWグループの全ブランドで使用される見込みである。