スバル・クロストレック話題 北米の稼ぎ頭 世界発表の舞台を日本にしたワケ

公開 : 2022.09.20 05:45

北米での稼ぎ頭はクロストレック

クロストレックは、スバルの主力市場であるアメリカなど海外市場で日本でのXVに対して用いられてきたモデル名だ。

その北米で今、クロストレックの存在感が急上昇している。

スバル・クロストレックとPGMの毛塚招一郎氏
スバル・クロストレックとPGMの毛塚招一郎氏    スバル

今回、クロステックのオンライン記者会見での質疑応答で、スバルの中村知美社長は「(直近の)8月はアメリカで(月販)1万5000台が売れている。スバルにとってエントリーモデルというべきモデル」と紹介している。

実際、SOA(スバル・オブ・アメリカ)の資料を確認すると、2022年8月は販売トップモデルがクロストレック(1万5126台)、次いでアウトバック(1万0928台)、フォレスター(1万0477台)、アセント(5638台)、そしてインプレッサ(3449台)と続いている状況だ。

2022年1~8月の累計でも、クロストレックが9万9252台と、インプレッサの5倍近い販売を記録するスバル北米事業の稼ぎ頭なのだ。

これは、北米全体で2010年代から強まってきた、コンパクトセダン(Cセグメント)からコンパクトSUV(Cセグメント)への市場のシフトがスバルにも大きく影響していることを示している。

そのうえで、クロストレックのPGMである毛塚招一郎氏は「北米コンパクトSUV市場が寡占状態にある」と指摘している。 

つまり、スバルとしてはクロストレックの商品として特長をさらに際立たせる必要があったということを意味する。

世界発表を日本でおこなった背景

では、どうしてクロストレックの世界発表を日本でおこなったのか?

それは、先に紹介したように、アメリカでは現行モデルの販売がいまだに好調だからだ。

スバル・クロストレックの発表の場を日本にしたのも、北米市場を意識した結果といえる。
スバル・クロストレックの発表の場を日本にしたのも、北米市場を意識した結果といえる。    スバル

アメリカでは年次モデルを販売する形であり、現行は2023年モデルと呼ばれる。

つまり、クロストレック北米仕様は2024年モデルとして2023年春から夏に北米導入される可能性が高い。

だが、北米市場に対するメッセージという面では、日本でクロストレックのフルモデルチェンジを公開することが有益だったと考えられる。

また、日本市場のおいては、今回の発表動画の収録場所を「とある里山」として、コロナ禍で加速する日本でのライフスタイルの変化を踏まえたプレゼンテーションをおこなった。

そこには、電動化というスバルにとって極めて大きな時代変化に直面しているいまこそ、スバルがこれから何を目指すのかを日本のユーザーに丁寧に説明しようとしている姿勢がうかがえる。

スバルは2020年に実施した技術ミーティングで、「2030年に死亡事故ゼロ」と「個性と技術革新で脱炭素社会へ貢献」によって、「安心と愉しさを支える技術をさらに進化させる」という、スバルが目指す方向性を示している。

クロストレックは、そうしたスバルの将来像を現時点で具現化するには、日本におけるベストチョイスだといえるのかもしれない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?

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