注目はキドニーグリルだけじゃない BMW iX(1) 長期テスト BEVのベンチマーク
公開 : 2022.10.02 09:45
エンジンを売りにする上級ブランドが発売した、フラッグシップBEVのiX。英国編集部が長期テストで実力を検証します。
初回 革新的な技術が盛りだくさん
BMW最新のフラッグシップ・バッテリーEV(BEV)、iXに関しては、フロントマスクを中心にデザインへ話題が集まりがち。だが、それ以外にも触れるべき多くの特徴が備わっている。
特に、革新的な技術には余りスポットライトが向けられていない。アップルの新製品だとしたら、SNSで話題になるであろう多くの機能が実装されている。
iXというモデルの位置づけも注目に値する。BMWは7シリーズと8シリーズ、X7といった大型のモデルを長年提供しているが、ライバルブランドほどの成功は収めてこなかった。
しかし、大きなボディのiXは静かでパワフル。製品として洗練され、乗り心地も快適で、レンジローバーと直接的に比較できる仕上がりにある。もちろん、50年という歴史を持つ英国製の高級SUVに、一日の長があることも間違いはないが。
どうしても目がいくキドニーグリル部分には、運転支援システムのセンサーやカメラなどが集約されている。多少の擦り傷なら自己修復できる、特殊な素材で表面はコーティングされている。
確かにグリルは大きく目立つが、クロームメッキ部分をブラックアウトしてボディカラーと馴染ませれば、そこまで目立つ存在でもない。意見を二分する大胆な処理ながら、iXで味わうべき仕上がりは、そこではないだろう。
競合のBEVと一線を画す走り味
iXは、シティカーのi3の遠い親戚といっていい。同社2番目のBEV専用モデルとして、i3と入れ変わるように市場へ投入された。どちらも「カーボンケージ」と呼ばれるボディシェルで構成され、環境に配慮された軽い素材で内装が設えられている。
iXの全長は4953mmと長い。英国価格は約8万ポンド(約1320万円)もする。i3との違いは大きいけれど。
英国のiXには3種類が存在する。71kWhの駆動用バッテリーを搭載する、xドライブ40が航続距離は最も短く413kmがうたわれる。105kWhのM60では、560kmまで伸びる。
その間に位置するのが、長期テストにやって来たxドライブ50。M60と同じ105kWhの駆動用バッテリーを搭載し、パワーは劣るものの航続距離は37km多い。
xドライブ50が搭載する駆動用モーターは2基で、合計の最高出力は523ps。カーボン製の構造を採用していても車重は2.5tを超えるため、BMWとして必要な馬力といえる。
ステアリングホイールを握りアクセルペダルを踏めば、競合のBEVと一線を画すことが明らかになる。内燃エンジンの時代にお別れを告げ、新しいモデルを生み出そうという決意がみなぎっている。
加速時は宇宙船のようなサウンドが車内に響く。これは著名な作曲家、ハンス・ジマー氏によってデザインされ、音質やボリュームは右足の加減で変化する。
内燃エンジンでは一般的な聴覚的変化といえるが、BEVでこれほど成功させている例は現在では唯一。SF映画を実体験しているような音響で楽しい。BMWの仕事を喜びたい。