メルセデス・ベンツSL400 AMGスポーツ
公開 : 2014.08.08 23:40 更新 : 2017.05.13 12:51
■どんなクルマ?
メルセデスの発表したSL400は、モダンで豪華なSLクラスの6気筒版だ。しきりにダウンサイジング化が求められる昨今、このようなクルマが作られることを不思議に思う読者もいらっしゃるかもしれない。
2年前に現行型のSLがデビューした際、SL500には最高傑作ともいえるV型8気筒エンジンが組み合わされていたのだが、最新版に3.5ℓのV型6気筒エンジンにすり替わった。
そしてSL350はSL400へと昇進し、今までの味わい深きV6エンジンが新設計の3.0ℓ直噴ツインターボ・エンジンへと置き換えられたと言う運びだ。
3.0ℓの直噴ツインターボと聞いて、ミドル・レンジのトルクが増強されたことをイメージできる読者も少なくないだろう。こればかりは先代のV6エンジンには成し得なかった芸当だと言っていい。そのようにして最大トルクは11.1kg-m増の49.0kg-mを先代の半分の回転数である1600rpmにて発生するに至った。
0-100km/h加速タイムも5.2秒へと、抜かりなく短縮されていることもここに書き加えておこう。
■どんな感じ?
かなりの速さに驚かされる。特に初期の加速は、0-100km/h加速のタイムから想像する以上に速い。
2対のターボの反応も素早く、とにかく滑らかに加速してゆくのだ。
エンジンとメルセデス製の7Gトロニック・オートマティック・ギアボックスの相性も非常によくなっている。先代の変速はまったりとしていたし、不本意なキックダウンが多かったことを考えれば、なおさら進化したことが伺える。
クルマの多い市街地でもリラックスして運転することができるし、こちらがその気になれば身が引き締まっているようなキビキビとした動きをする。同じ6シリンダーのポルシェ・911やジャガーFタイプほど、ピリリとした速さはないけれど、SLオーナーはそんなこと気にならないだろう。
パフォーマンスに関しては申し分ないのだが、改善して欲しいと感じる部分も何点か見受けられた。
第一にメカニカルな部分での洗練だ。スムーズさが売りのSLにそんなことがあるのかと信じられない人も多いかもしれないが、アイドリング中の音が耳につくし、その音が特定の回転数でキャビンに侵入してくるのだ。
10.6km/ℓという複合サイクル燃費は悪い結果ではないのだが、V8ターボを積んだSL500でも同じようなシチュエーションで9.2km/ℓに届くことを考えれば、わざわざ小さい方のエンジンを選ぶ根拠は薄れてしまう。
乗り心地に関しては、SL特有の優雅な雰囲気がとてもよく再現出来ている。また、ステアリングの味付けは、運転を心ゆくまで楽しむというよりもむしろ、リラックスして楽に運転できるような方向に振っているようだ。
アクティブ・ボディ・コントロール・サスペンションがオプション選択されていたおかげで、高速道路での乗り心地は思わずうっとりするほどのしなやかさがある反面、未舗装路を高速で走った場合のみ、時に突き上げが激しいこともあった。
またリアル・タイムでシャシー・レートが変化するため、高速コーナーでは荷重移動や操舵が行いにくいこともあった。ハンドリングは非常にダイレクトで、バランスも絶妙ではあるが、もう少し自然なフィールがあっても良いのではないかと考える。
■「買い」か?
もしV型8気筒のSLが買えるのであれば、わざわざSL400を選ぶ必要はない。また、もしSL400を購入するならば、従来のコイル・スプリングを足元に組み合わせることをおすすめする。
いや、しかしそれでも我々は£9,500(140万円)を投げ打ってでも、さらに豪華なSL500を買うことをすすめるかもしれない。仮に新しいエンジンを組み合わせたモデルがデビューしたとしてもだ。動力性能、洗練性、味わい深さ、柔軟性などどれをとってもV8エンジンのモデル方が現時点では一歩上のレベルにある。
(マット・ソーンダース)
メルセデス・ベンツSL400 AMGスポーツ
価格 | £72,500(1,250万円) |
最高速度 | 250km/h |
0-100km/h加速 | 5.2秒 |
燃費 | 13.0km/ℓ |
CO2排出量 | 178g/km |
乾燥重量 | 1730kg |
エンジン | V型6気筒2996ccツインターボ |
最高出力 | 333ps/5280-6500rpm |
最大トルク | 48.9kg-m/1600-4000rpm |
ギアボックス | 7速オートマティック |
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