【詳細データテスト】ポルシェ718ケイマン GT3譲りの6気筒 秀逸なシャシー ポルシェの到達点

公開 : 2022.09.24 20:25  更新 : 2022.10.04 11:57

意匠と技術 ★★★★★★★★★★

これまで、ケイマンは987/981/982の3世代、兄弟分のボクスターも合わせれば初代の986から4世代を数える。ポルシェが2世代ごとに発展させ、技術面の大幅な移行を実施する傾向にあることを考えると、斬新な技術の導入は次世代まで持ち越しとなるだろう。来年に登場する新型のボクスターとケイマンはフル電動モデルを含め、コンセプトからガラリと変わりそうだ。

しかし、いまは既存技術を称賛したい。GT4 RSが積む3996ccの自然吸気フラット6は、ケイマンGT4の3995ccユニットとはまったくの別物だ。かなりオーバースクエアな設計のシリンダー、13.3:1という驚異的な圧縮比、ロッカーアーム駆動のバルブなどを擁し、最高出力は500ps/8400rpm、最大トルクは45.9kg-m/6750rpmを発生。最高回転数は9000rpmに達する。

新たなエンジンには、カーボン素材の新たな吸気システムが装備される。振動を抑えるために、多くの固定ポイントが必要だったことが見て取れる。
新たなエンジンには、カーボン素材の新たな吸気システムが装備される。振動を抑えるために、多くの固定ポイントが必要だったことが見て取れる。    MAX EDLESTON

ポルシェ曰く、これは911GT3のエンジンそのものだとか。パワーもトルクもやや落ちるのは、排気系の取り回しが長く複雑になっているから。911と異なり、リアアクスルを避ける必要がある。

しかし、エンジン音を決定付けているのはこのエキゾーストではない。むしろ、カーボンファイバーで形成された吸気系のほうだ。吸気口は、乗員の頭のすぐ後ろに新設された。通常モデルでは、リアクオーターウインドウがはまっている場所だ。

そのエンジンの後方には、7速のDCT、ポルシェ風にいえばPDKが搭載される。ポルシェの手持ちではもっともローギアードのそれは、991.2世代の911GT3 RS用に開発されたものだ。ケイマンGT4のギア比がロングすぎると批判されたことへの対応でもあるのだろう。

LSDは機械式だ。これは、アクティブデフを詰め込むスペースがなかったから、ということらしい。

シャシーにも、911のGT系やRSモデルのコンポーネンツがいろいろと流用されている。前後ともマクファーソンストラットのままだが、ジョイントはすべてピロボール化され、フィードバックとホイールコントロールの最適化が図られている。

車高は通常モデルより30mmダウンで、コイルスプリングはGT4よりフロントが40%、リアが66%ハード。さらに補助スプリングが設置された。トレッドは拡幅され、アクティブダンパーのPASMとパッシブの調整式スタビライザーもレートが引き上げられ、キャンバーとトーも角度調整が可能だ。

ドアパネルやウインドウガラスは軽量化され、カーボンのバケットシートやカーボンコンポジットのボディパネルも重量削減に貢献。1415kgという公称重量は、ケイマンGT4のPDK仕様より35kg軽い。さらに、カーボンセラミックブレーキやマグネシウムホイール、インテリアの簡素化といったダイエットの手段が、オプションで用意されている。

テスト車は、そうした軽量オプションをいくつか装備し、満タンで計量して1444kgだった。2021年に計測した992GT3のPDK仕様より14kg重いが、それでも現在のポルシェのGT系モデルとしては軽いほうだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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