6速MTが強める独自性 トヨタ・スープラ 3.0 MTへ試乗 シャシーもチューニング

公開 : 2022.09.25 08:25

ドライバーとの一体感が向上した操縦性

燃費は少々惜しい。8速ATよりギアの少ない6速MTは、高速道路でのクルージング時に高めの回転数が必要となる。一方で郊外の道では、気がつくとシフトアップしているような、最新のAT並みに効率的にギアを選ぶことは難しい。

燃料タンクが小さいことも、ガソリンを燃やしたという気持ちを助長させる。カタログ値では11.4km/Lがうたわれる。

トヨタ・スープラ 3.0 MT(英国仕様)
トヨタスープラ 3.0 MT(英国仕様)

2022年モデルに加えられた改良でわかりやすい変化が、アクセルペダルの操作に対し、シャシーがより反応するようになったこと。コーナリング中にペダルを徐々に緩めていくと、フロントを内側に巻き込みながらラインを絞れる。

改良前のスープラでも同様な挙動は楽しめた。だが、ここまで明確な変化は得られなかった。

ステアリングのレスポンスも磨かれている。2019年モデルでは、ステアリングホイールを切ってからフロントタイヤが反応するまでに、ごく僅かな遅れがあった。

しかし最新版では、姿勢制御が向上したことで、よりダイレクトで高速にフロントが反応。ドライバーとの一体感も高まっている。操る自信にもつながり、2シーターの高性能クーペとして歓迎できる変化といえる。

一方で、スープラ本来が備える穏やかなアンダーステア傾向は変わっていない。路面が乱れたカーブで、リアタイヤの落ち着きが若干失われる挙動も、改善されていない。

ダンパーはハードとソフトの2モードから選べるが、ソフトではそれが明らか。ハードでも、完全には抑えきれていない様子だった。

一層強まったスープラの独自性

確かにスープラは当初より良くなった。だが、718ケイマンを凌駕するには至っていない。感心するほど落ち着いた身のこなしや、鮮明なステアリング・フィールが、ポルシェを有利にしていることは従来どおりだ。

スープラも、ワインディングを流れるように走ることはできる。だが、718ケイマンほどシリアスなスポーツカーではなく、グランドツアラー寄りの性格にある。

トヨタ・スープラ 3.0 MT(英国仕様)
トヨタ・スープラ 3.0 MT(英国仕様)

とはいえ、本来の快適な乗り心地も変わらない。3.0L直列6気筒エンジンは軽快に吹け上がり、パワフルでありながら現実環境で扱いやすい。

日常的に乗れる小柄なグランドツアラーをお探しのドライバーにとって、トヨタ・スープラの訴求力は6速MTの獲得でさらに増している。唯一の独自性は、一層強められたといっていい。

トヨタ・スープラ 3.0 MT(英国仕様)のスペック

英国価格:5万3495ポンド(約882万円)
全長:4379mm
全幅:1854mm
全高:1292mm
最高速度:249km/h
0-100km/h加速:4.6秒
燃費:11.4km/L
CO2排出量:198g/km
乾燥重量:1457kg
パワートレイン:直列6気筒2998ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:339ps/5000-6500rpm
最大トルク:50.9kg-m/1600-4500rpm
ギアボックス:6速マニュアル

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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