フォード:Built Ford Tough(タフなフォード車)

「Built Ford Tough(タフなフォード車)」というスローガンは、1979年のモデルイヤーに米国でデビューした。度重なる石油危機に見舞われた激動の10年を終え、1980年代を迎えようとするフォードが掲げたものである。ピックアップトラックのFシリーズが1977年にベストセラーとなったことを受け、タフネスを強調して勢いを持続させるスローガンとして構想された。

スローガンには、主要ライバルであるシボレーダッジよりも高い耐久性を持つという意味が込められている。短くて覚えやすい、シンプルなメッセージということもあり、驚くほどの広告効果を発揮した。特に、米国でフォードを支えているピックアップトラックのオーナーの心に響いた。

フォード:Built Ford Tough
フォード:Built Ford Tough

「Built Ford Tough」は何十年にもわたって使用され、ナンバープレートフレーム、Tシャツ、帽子など、さまざまなものに使用された。米国のディーラーも採用しており、現在でもよく見かける。「Built Ford Proud(誇り高いフォード車)」も使われている。

フォードの現在

フォードは2009年の経営危機から立ち直った後、2012年に現在の「Go Further(さらに先へ)」を展開した。「Go Further」は、これまでのスローガンとは異なり、消費者だけでなく従業員にも語りかけるように作られた。

同社の経営陣によると、このスローガンの根底にあるのは、フォードが自己満足に浸っているうちに会社組織全体が劣化し、危うく倒産に追いやられるところだったというメッセージである。インターン生から役員、そしてすべての従業員に、健全で利益を上げられるよう努力を求めるために採用されたようだ。

フォードの「Go Further」は、経営危機に陥った自社に対する自戒のメッセージのようだ。
フォードの「Go Further」は、経営危機に陥った自社に対する自戒のメッセージのようだ。

こうした意味合いは、フォードの従業員であれば理解できるだろうが、クルマを買おうとしている消費者にはちょっと難しいだろう。クルマでさらに遠くへ行く?新しいSUVでさらに荒野を目指す?正直なところ、どのようにでも受け取れる曖昧なスローガンであり、明確な定義がなく、フォード車との関連も不透明なのが実情だ。

GMC:We Are Professional Grade(わたし達はプロフェッショナル・グレードです)

GMCのピックアップトラックやSUVは、兄弟ブランドのシボレーとほとんど差別化されてこなかったが、概して高価なものが多い。2000年には「We Are Professional Grade(わたし達はプロフェッショナル・グレードです)」という直球のスローガンを掲げ、兄弟車よりも過酷な要求に応えることができると訴えた。

しかし、このスローガンからはちょっと怪しいニオイが漂ってくる。というのも、エンボイのような内装レザー張りのファミリー向けSUVにプロフェッショナルなイメージはなかったからだ。また、シエラがシボレー・シルバラードよりもプロフェッショナルである理由を問われたとき、GMCは具体的な根拠を示さなかった。

GMC:We Are Professional Grade
GMC:We Are Professional Grade

それでも、広告の効果はあったようだ。2000年代に親会社のゼネラルモーターズがオールズモビル、ポンティアック、ハマー、サターンなどのブランドを次々と廃止した際にも、高い価格設定を許されるGMCの不思議なパワーによって、ブラックリストから外されたのである。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ロナン・グロン

    Ronan Glon

  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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