BMWの現在

「The Ultimate Driving Machine」は現在も使用されており、BMWの英語版ウェブサイト(米国や英国向け)を訪れると、たいてい最初に目にするのはこのスローガンである。たびたび、海外で物議を醸した「Joy」(2009年に初めて使用)などのシリーズが登場することもあったが、いずれも短命に終わっている。「Joy」はあまり受けが良くなかったようで、2012年に廃止されると、再び「Ultimate」が使われ始めた。

日本で有名なのは、「Freude am Fahren(駆けぬける歓び)」というスローガンだろう。英語圏でも同じ意味合いの「Sheer Driving Pleasure」が使われており、「Ultimate」と並ぶBMWの二大スローガンといえる。

BMWは「Freude am Fahren」と「The Ultimate Driving Machine」の2つのスローガンを掲げている。
BMWは「Freude am Fahren」と「The Ultimate Driving Machine」の2つのスローガンを掲げている。

BMWは2018年ごろから、英語圏の市場でもドイツ語を用いて、ドイツらしさをアピールするようになったと思われる。そのため、しばしばBMWの正式な社名である「Bayerische Motoren Werke」が使われることもある。

いずれにせよ、「究極のドライビングマシン」で「駆けぬける歓び」という、一貫性のあるスローガンが使われているのは素晴らしいことだ。半世紀近く前に作られた文言でありながら、今なお鮮烈に感じられるのは、マーケティングの成功と言えるだろう。

クライスラー:Imported From Detroit(デトロイトからの輸入車)

94年の歴史を持つクライスラーの最も有名なスローガンが、2011年に作られたものだというのは、何度も経営危機に陥った同社の不手際を暗示しているといえるかもしれない。

それにしても、「Imported From Detroit(デトロイトからの輸入車)」というスローガンは刺激的だ。多くの米国人は、自国の自動車産業の栄光と衰退を体現するモーターシティを、犯罪や麻薬にまみれた異国の地と感じているということを、このスローガンは暗に揶揄しているのだ。

クライスラー:Imported From Detroit
クライスラー:Imported From Detroit

「Imported From Detroit」は、デトロイトのラップスター、エミネム(写真)が出演する新型クライスラー200のテレビCMもあって、大いに注目を集めた。広告代理店のWieden + Kennedy社が制作したこのCMは、クライスラーとその生まれ故郷の最近の窮状を、エミネムの曲「Born of Fire」をキーに、軽快に表現している。そして、CMの最後でエミネムは、「これがモーターシティだ、そしてこれが俺たちのしていることだ」と訴える。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ロナン・グロン

    Ronan Glon

  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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