ジャガーの現在

ジャガーは1984年にBLから脱却して独立を果たすが、1989年にフォードに吸収された。ジャガーは現在、公式には「Grace, Space, Pace」という言葉を使用していないが、これに由来する車名を新しいSUVシリーズに与えたことで、英国では称賛を集めた。

2015年にFペイス(F-Pace)を発表したデザインチーフのイアン・カラム氏は、ジャガーは常にスタイルとスピードを追求してきた一方で、スペース(広さ)が欠けていたことを認め、同社初のSUVでそれを叶えることにしたと語っている。

ジャガーはかつてのスローガンの一部を、FペイスやEペイスなどのSUVモデルに応用している。
ジャガーはかつてのスローガンの一部を、FペイスやEペイスなどのSUVモデルに応用している。

昨今のジャガーの主要スローガンは「The Art of Performance」であり、とても風通しの良いものではあるが、50年代のオリジナルには及ばないだろう。

ランドローバー:The best 4 x 4 x far(間違いなく最高の4×4)

ランドローバーは、どこにでも行けて何でもできることを常に謳ってきた。創業当初は「The go anywhere vehicle(どこでも行けるクルマ)」「Britain’s most versatile vehicle(英国で最も多用途なクルマ)」といったスローガンを掲げていた。

1986年、ランドローバーはさらなる高みを目指す。ウェールズ中部にある高さ70mのダムを、ランドローバーがほぼ垂直によじ登る様子を撮影。50年代の名作戦争映画『暁の出撃(原題:The Dambusters)』の音楽と『スタートレック』でおなじみパトリック・スチュワートのナレーションに乗せて、テレビCMとして放映したのだ。ここで使われたのが「The best 4 x 4 x far(間違いなく最高の4×4)」である。

ランドローバー:The best 4 x 4 x far
ランドローバー:The best 4 x 4 x far

これは、四輪駆動を示す「4×4(フォー・バイ・フォー)」と、「遥かに、群を抜いて」という意味の熟語「by far(バイ・ファー)」をかけたダジャレだ。

その約30年後、BBCの人気番組『Top Gear』のリチャード・ハモンドが、別のダムでこのCMの再現を試みた。チャレンジは見事に成功し、ハモンドは「テレビの魔法」と表現しているが、実はオリジナルのCMでは上部で巨大なウインチが使われていたのである。

ランドローバーの現在

「The best 4 x 4 x far」のスローガンは、今でも時々、ランドローバーの広告やプレゼンテーションで使われている。しかし、ランドローバーの主要スローガンは「Above & Beyond(はるか先へ)」であり、これはこれでいいのだが、筆者はやはり前者を好む。

1986年当時、ランドローバーに直接的なライバルはほとんどいなかったが、今ではフォルクスワーゲンからロールス・ロイスまで、世界中のほぼすべての自動車メーカーが何らかの形でSUVを製造している。クルマの電動化も着々と進む中、ランドローバーがこの先どのようにして存在感を発揮していくのか、注目したい。

群雄割拠のSUV市場において、現代のランドローバーは存在感を発揮できるか。
群雄割拠のSUV市場において、現代のランドローバーは存在感を発揮できるか。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ロナン・グロン

    Ronan Glon

  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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