日産:You can with a Nissan(日産でできること)

長い間、日産は多くの海外市場で「ダットサン」の名で販売されており、現在の日産ブランドは1970年代から徐々に導入された。米国や英国では、1984年にダットサンから日産に切り替わっている。日本ならまだしも、海外の消費者から見れば日産はいわば「新しいブランド」であり、改めて認知度を高める必要があった。

そこで、英国では、「You can with a Nissan(日産でできること)」という韻を踏んだフレーズを作成。写真のテラノII(スペイン製造で、日本向けにはミストラルとして輸出)のようなSUVの宣伝に使うことで、それなりの効果を発揮した。

日産:You can with a Nissan
日産:You can with a Nissan

米国では、「The name is Nissan(その名は、日産)」という超ストレートな表現が使われた。また、高性能モデルの宣伝においては、「Built for the Human Race」という、人類(Human Race)とレース(Race)をかけた巧みなフレーズが用いられたことがある。

日産の現在

いわゆる「ライフスタイル」に焦点を当てたマーケティングが主流の現代において、日産のスローガンは広告の山に埋もれてしまっている。日本では、2015年から使われ始めた「やっちゃえ日産」がクルマ好きの間では有名だが、その後の「ぶっちぎれ 技術の日産」や「日産がやらなくて、ほかに誰がやる」などは正直ちょっと印象が薄いのではないだろうか。

なお、米国・英国で掲げられているスローガンは「Innovation that excites(ワクワクするようなイノベーション)」であり、日本向けと同じように「技術」を推していることがわかるが、面白みはあまり感じられない。

日本では「やっちゃえ日産」の印象が強すぎたかもしれない。
日本では「やっちゃえ日産」の印象が強すぎたかもしれない。

フォルクスワーゲン:Think Small(小さく考える)

1950年代、フォルクスワーゲンは北米への進出を目指したが、ある問題があった。当時、市場を席巻していた艀(はしけ)のように巨大なアメ車に比べ、ビートルは非常に小さなクルマだったのだ。そこで、このことを恥ずかしがるのではなく、堂々と、小さなクルマの素朴な良さをスローガンに表現したのである。

「Think Small(小さく考える)」というスローガンは、1959年に米国の広告代理店ドイル・デイン・バーンバック(DDB)でコピーライターを務めていたジュリアン・コーニッヒ(1921-2014)が考案したものである。広告の大部分は白抜きで、ビートルのサイズを強調。その下にテキストで駐車のしやすさ、燃費、保険代や修理代の安さなど「小さい」ことのメリットを訴求した。

フォルクスワーゲン:Think Small
フォルクスワーゲン:Think Small

この広告は大成功を収め、60年代後半には北米で年間40万台以上の販売を達成。1999年、マーケティング業界誌『アドバタイジング・エイジ』によって、今世紀最高の広告キャンペーンに選ばれている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ロナン・グロン

    Ronan Glon

  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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