フォルクスワーゲンの現在

フォルクスワーゲンは、「ドイツ車」というものに対するステータスや信頼性、性能、技術水準などの面で、世界中の消費者が抱くポジティブなイメージに支えられてきた。これは、他のドイツの自動車メーカーも同様だろう。

そのため、21世紀に入ってからもこのブランド力を利用し、2008年からは米国をはじめ多くの英語圏市場で「Das Auto」というスローガンを使っている。これは、ドイツ語で文字通り「クルマ」を意味する言葉であり、しばらくは成功とみなされていた。そう、しばらくの間は。

フォルクスワーゲンはロゴとブランド・アイデンティティを刷新し、悪いイメージを払拭しようとしている。スローガンどころではないのかも?
フォルクスワーゲンはロゴとブランド・アイデンティティを刷新し、悪いイメージを払拭しようとしている。スローガンどころではないのかも?

2015年、いわゆるディーゼルゲート事件が発生し、同社の評判に甚大なるダメージを与えてしまった。これにより、「Das Auto」のやや帝国主義的なスローガンが不吉な空気を帯び、スキャンダルが発覚してからわずか3か月で使用を取りやめることになった。

現在、フォルクスワーゲンのロゴの下に書かれているのは、すばり「Volkswagen」である。2019年のフランクフルト・モーターショーでは、新しく簡素なロゴとブランド・アイデンティティを発表。新たなスタートを切ろうとしている(写真)。

ボルボ:For Life

この驚くほどシンプルでスマートなボルボ・カーズのスローガンは、フォードが同社を買収した直後の1999年に初めて使用されたものだ。このスローガンの秀逸な点は、ボルボが安全性、耐久性、オーナーの生活にフィットする能力、他のブランドを買う必要がないこと(理論的には)、さらには環境への配慮を重視していることを、「For Life」というたった2つのシンプルな単語で表現しているところである。

「For Life」を日本語に直訳するなら「一生」となるが、スローガンとして意訳するなら、「生きるために」といったところだろうか?

ボルボ:For Life
ボルボ:For Life

フォード傘下の11年間で、ボルボはモデルレンジを拡大し、2002年には大型SUVであるXC90を発売して大ヒットを飛ばした。GMがスウェーデンのサーブを所有し、消滅させるよりははるかにマシな結果を残している。

ボルボの現在

「For Life」は、ボルボ・カーズが2010年に中国のジーリー(吉利汽車)の傘下に入ってからも、20年近くメインスローガンとして掲げられてきた。ジーリーの資金力を活かし、ボルボはモデルレンジの若返りと拡大を図り、ドイツの高級車ブランドに対抗するライバルとして台頭してきている。

それに伴い、ボルボは2018年に新しいスローガンと社是である「Freedom to Move(モビリティの自由)」を発表した。ボルボのホーカン・サミュエルソンCEO(当時)は、「Freedom to move……それは、まさにクルマの美点です。いつでも好きな場所に移動することができますが、それはもちろん、持続可能で、パーソナルで、安全なものでなければなりません」と語っている。

現在のボルボは「Freedom to Move(モビリティの自由)」を主なスローガンとしている。
現在のボルボは「Freedom to Move(モビリティの自由)」を主なスローガンとしている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ロナン・グロン

    Ronan Glon

  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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