シボレー:The Heartbeat of America(アメリカのハートビート)

シボレーは、自社製品を「The Heartbeat of America(アメリカのハートビート)」として売り出すことで、米国の消費者のハートを掴もうとした。このスローガンが導入された1985年、シボレーは日本車の台頭により、市場シェアが低下していくのを目の当たりにしていたのだ。

「The Heartbeat of America」は、シボレーのクルマが国土に根付いたものであることを示すスローガンだ。トラックは農場で働き、バンは西海岸から東海岸まで荷物を運び、乗用車は子供たちを学校に連れて行く。ノスタルジーと親しみやすい愛国心が感じられる。

シボレー:The Heartbeat of America
シボレー:The Heartbeat of America

このスローガンを使ったテレビCMは、キャッチーなジングルが特徴で、シボレーのメッセージを消費者の心に定着させるのに一役買った。

シボレーの現在

シボレーは2013年、「Find New Roads(新たな道を切り開く)」を新たなスローガンに採用した。親会社のゼネラルモーターズ(GM)が2009年に破産を申請したため、イメージを刷新する必要があったのだ。その根底には、シボレーが学び、進化し、変化してきたというメッセージが込められている。

「Find New Roads」は、後述するフォードの「Go Further(さらに先へ)」とよく似ているが、けっこう曖昧な表現だ。ダイレクトにメッセージを伝えるのではなく、消費者の想像力に任せている。シボレーの「The Heartbeat of America」というスローガンは、ほとんどすべての米国人が知っていたが、「Find New Roads」はそれほど有名なものではない。

苦難を経験したシボレーは、自らが進むべき新しい道を探しているのかもしれない。
苦難を経験したシボレーは、自らが進むべき新しい道を探しているのかもしれない。

それは、自動車を運転する人が雑誌、テレビ番組、ラジオに触れる機会が昔よりずっと少なくなったからかもしれない。Netflixでシボレーの広告を見ることはない。スローガンを定着させることは、1980年代より難しくなっている。

ダッジ:Grab Life by the Horns(人生の角をつかめ)

英語の慣用句に「Grab the bull by the horns」または「Take the bull by the horns」というフレーズがある。いずれも直訳すると「雄牛の角をつかめ」となり、「困難に立ち向かえ」といった意味合いが含まれている。ダッジはこれをもじって「Grab Life by the Horns(人生の角をつかめ)」とし、2001年にスローガンに採用した。

ダッジのロゴは巨大な角を持つ雄羊(牛ではない)で、大胆で恐れを知らないブランドイメージを表現するものだ。ダッジに乗る人は、平凡なクルマで通勤している人よりも大胆で、刺激的な人生を歩んでいる……。それが、このスローガンのメッセージだ。

ダッジ:Grab Life by the Horns
ダッジ:Grab Life by the Horns

ダッジのマーケティング部門は、2000年代前半に退屈なクルマの代名詞となっていたトヨタを意識していたのだろうかと邪推してしまう。「Grab Life by the Horns」は、多くの米国人に馴染みやすいフレーズだったので、すぐに定着した。しかし、広告スローガンとしては少し長かったので、2007年に「Grab Life(人生をつかめ)」に短縮している。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ロナン・グロン

    Ronan Glon

  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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