EVなことを忘れる馴染みやすさ アウディQ4 eトロン(最終回) 長期テスト 優れたファミリーSUV

公開 : 2022.10.01 09:45

純EVでのプレゼンス拡大を狙うQ4 eトロン。電動時代における上級ファミリー・クロスオーバーの魅力を確かめます。

上級ファミリーSUVの有力な選択肢

Q4 eトロンは幅広いターゲット層を想定しており、アウディがバッテリーEV(BEV)での躍進を狙うモデルといえる。新しいモノへ積極的に感心を示すアーリーアダプターから、より一般的なマジョリティへBEVを広める役割を担っている。

カタログ値で480kmを超える航続距離と、ファミリーユーザーに丁度いいボディサイズ、全国的なディーラーネットワークやアウディというブランド力で、英国で高い人気を獲得すると予想されていた。トップのアウディA3に次ぐ勢いで。

アウディQ4 eトロン・スポーツバック 40 スポーツ(英国仕様)
アウディQ4 eトロン・スポーツバック 40 スポーツ(英国仕様)

ところが、2022年7月末の販売台数を確認すると、A5に次ぐ9位という状況。ひと回り大きいSUVのe-トロンの方が良く売れている。

アウディによれば、半導体不足が大きな影響を及ぼしているという。潜在的な需要は存在し、状況が好転すれば販売数も伸びると考えているようだ。

だとしても、Q4 eトロンはBEVであるかどうかに関わらず、プレミアム・ファミリーSUVとして優れた内容を備えている。普段使いしやすい、有力な選択肢の1つだ。

反面、惜しまれる点もなかったわけではなかった。当初はワゴン風ルーフラインを持つQ4 eトロン 40でスタートし、途中でクーペ風ルーフラインのQ4 eトロン・スポーツバック 40へ乗り換えているが、そのどちらにも存在した。

BEVなことを忘れるほど馴染みやすい

全体の印象は間違いなくイイ。ボディは実際よりコンパクトに感じる適度な大きさで、車内空間は広い。運転しやすく乗り心地は穏やかで、走行中は静か。パワーとトルクも充分。操縦性も褒められる。

少しの時間で、BEVであることを忘れるほど馴染みを覚えた。電動のパワートレインは洗練性や静寂性に優れるため、プレミアムなモデルとの相性は高い。アウディというブランドに合致する、エネルギッシュさも備えている。

アウディQ4 eトロン・スポーツバック 40 スポーツ(英国仕様)
アウディQ4 eトロン・スポーツバック 40 スポーツ(英国仕様)

一方、アウディらしさという点では充分ともいえなかった。実質的な兄弟モデルといえるフォルクスワーゲンID.4との差別化が、足りていないように筆者は思えた。

内装にはグロスブラックのプラスティック製パネルがふんだんに用いられ、ブランドの特長といえた高い知覚品質には届いていなかった。ロゴマークを隠したら、フォルクスワーゲンのモデルだと勘違いする可能性もゼロではないだろう。

電動パワートレイン自体の質感も同様。明確な違いを体感しにくい。

Q4 eトロンの航続距離は仕様によって異なる。英国価格4万4990ポンド(約742万円)の40の場合、203psの駆動用モーターがリアに1基搭載され、77kWhの駆動用バッテリーが載り、1度の充電で508km走れる。

実際の距離は、温かい夏で480kmほどだが、寒い冬場は約350kmになる。気温が低くなるほどバッテリーの効率は落ちるため、BEVを購入する場合は、お住まいの地域の冬の条件で検討することをオススメしたい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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