ポルシェ911 GT3xGT3カップ 9割の類似性を確かめる 抜群のシャシーバランス 後編

公開 : 2022.10.08 09:46

最新のカレラカップ向けレーシングカー、GT3カップ。9割がた近いという公道用GT3と、英国編集部が比較試乗しました。

親しみやすいハードコアなコクピット環境

ポルシェ911 GT3カップのポリカーボネート製ウインドウ越しに見える、ハードコアなコクピット環境に圧倒される。余計な内装トリムは省かれている。

しかし、軽いカーボンファイバー製のドアを開き、屈強そうなロールケージを乗り越えれば、親しみやすいことに感心する。空間は比較的広々としていて、ステアリングコラムは一般的なモデルのように調整が可能。

イエローとブルーのポルシェ911 GT3カップと、ホワイトのポルシェ911 GT3
イエローとブルーのポルシェ911 GT3カップと、ホワイトのポルシェ911 GT3

レーシングシートの高さは2段階に切り替えられる。公道用の992型ポルシェ911 GT3に近いドライビングポジションに収まることができた。

エアコンもちゃんと装備されている。取材日は最高気温が35℃もあったから、命の恩人だ。

いきなりGT3カップでドニントンパーク・サーキットのアスファルトを攻めるのは、流石にハードルが高すぎる。チームがお昼休みを取っている間に、コースレイアウトの確認を兼ねてGT3で事前に走ることにした。2周だけだが。

今回は僅かな時間だったとはいえ、筆者は1週間前にもポルシェ911でグレートブリテン島の中東部、ノース・ヨークシャーまでロングドライブを体験している。それ以外にも何度か乗り込んでいるから、すぐに感覚を掴むことはできた。

フロントがダブルウイッシュボーン式になったサスペンションの恩恵もあり、コーナーへのターンインは極めて鋭く、ステアリングホイールへ伝わるフィードバックは鮮明。タイヤとアスファルトとの関係性を明瞭に感知できる。

クルマとの深い信頼関係を築ける

ペースを速めていっても、シャシーはひたすら安定性を保つ。そしてGT3最大の美点といえるのが、速度域を問わず素晴らしく調整しろが広く、クルマと深い信頼関係を築けること。つまり、レーシングカーとしても大きな強みといえる。

その事実は、GT3カップへ乗り換えてすぐに体感できた。お昼休みが終わると、レーシングシートへ筆者の身体が固定され、ピットレーンのシグナルがグリーンに切り替わった。

ポルシェ911 GT3カップ(カレラカップGB仕様)
ポルシェ911 GT3カップ(カレラカップGB仕様)

GT3カップには、ABSもトラクションコントロールも備わらない。チームのメカニックは、タイヤやオイルなどすべての温度が上昇するまで、4・5周は様子を見ながら走るべきだと教えてくれた。それを心に留めながら、自分とシャシーの準備運動をこなす。

筆者はシングルシーターのフォーミュラカーでサーキットを走っていた経験もあり、冷えた状態では反応が過敏で扱いにくいと想像していた。ところが、GT3カップは公道用のGT3に遠からず、打ち解けやすい。

水平対向エンジンには公道で乗り慣れたフィーリングが伴い、太いトルクがリニアに湧き出てくる。温まりきらないタイヤでも、早めにパワーオンしていける。フロントタイヤの感触はソリッドで、ブレーキングゾーンを徐々に詰められる。ABSが備わらなくても。

数周を走った辺りで、フェラーリ488チャレンジ GT3 エボへ追いつき、2台を追い越すこともできた。ドニントンパークのストレートでは、GT3カップの方がトップスピードは上のようだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ニール・ウィン

    Neil Winn

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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