小型クロスオーバーに一新 新型スマート#1 プレミアムへ試乗 271psで439kmのEV

公開 : 2022.10.10 08:25

活発な動力性能と優れたシャシー設計

インフォテインメント・システムの使い勝手はいまいち。ボルボはグーグル社のアンドロイドがベースのシステムなのに対し、スマートの方はジーリー・ホールディングス傘下の企業が開発した、独自システムが実装されている。

メニューにキツネのキャラクターが登場するのが特長のようだが、試乗車のソフトは未完成だった。直感的な操作は難しく、英語表記には間違いも。アンドロイド・オートやアップル・カープレイを用いた方が良いかもしれない。

スマート#1 プレミアム(欧州仕様)
スマート#1 プレミアム(欧州仕様)

一方で、ハードウエアはかなり高性能。CPUはアメリカのクアルコム社製らしく、動作は非常に素早い。12.8インチのタッチモニターも高精細だ。

新しいスマートで、1番強い印象を受けたのがドライビング体験。車重は1788kgもあり、既存のEQフォーツーの約2倍重い。しかし活発な動力性能と優れたシャシー設計で、とても軽快に走ってくれる。

多くのBEVと同様に、発進加速は鋭い。アクセルペダル操作への反応も機敏で、トランスミッションの変速がないため、スムーズにスピードを増していく。

速度上昇とともに勢いは鈍るものの、約100km/hまでは充分な加速を続ける。120km/h以上では息苦しさが伴い、180km/hへ設定されたリミッターへ到達することは難しそうだ。

一貫性を感じにくい操縦特性

ドライブモードは、エコとコンフォート、スポーツから切り替えられる。加減速のマッピングと回生ブレーキの強さ、ステアリングホイールの重み付けが変化するものの、アダプティブダンパーではないため乗り心地は変わらない。

回生ブレーキの強さは任意でも2段階から選べるが、惰性走行はできない。アクセルペダルだけで発進から停止までをまかなうワンペダル・ドライブも可能とうたわれるが、減速感は想像より弱い。スポーツモードでは、下り坂で完全に停止できなかった。

スマート#1 プレミアム(欧州仕様)
スマート#1 プレミアム(欧州仕様)

ブレーキペダルの感触は良い。摩擦ブレーキがシームレスに働いてくれる。

全体的な操縦特性には、もう少し一貫性が欲しい。アクセルペダルを傾けてから、0.2秒前後の遅れを挟んで駆動用モーターが反応。急な加速力が、ワンテンポ遅れてやって来る印象だった。

ステアリングホイールは、バネで戻されるような手応えが強め。反応もリニアではなく、切り始めでは鋭く向きを変えるものの、その後は鈍くなっていく。カーブでのボディロールも小さくない。

ブラバス以外は後輪駆動だが、アンダーステア傾向でもある。転がり抵抗の小さい、コンチネンタル・エココンタクト6というタイヤも影響しているのだろう。

ちなみにトラクションコントロールは切れるものの、駆動用モーター自体のトラクション制御が働き、パワーオンでテールスライドさせることはできない。それを試す人は限られると思うが。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マイク・ダフ

    Mike Duff

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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