ハイウェイの145kmを全力疾走 自作のロータス・カールトン 平均記録は264km/h 前編

公開 : 2022.10.16 07:05

オメガのボディへロータスの駆動系を搭載

それ以来、彼はロータス・カールトンに関する理解を深めていった。しかし本物は当時も人気が高く、手の届く価格ではなかった。そこで、廃車状態から救い出したヴォグゾールオペル)・オメガのボディへ、自ら不要になったロータスの部品を組むことにした。

「廃車置場には3台のオメガがあり、本当は全部買いたいところでした。カールトンにはサンルーフが付いていて、1990年代はステータスシンボルのようなものだったので、ルーフの状態にはコダワリました」

ジョー・エリス氏が仕上げたヴォグゾール(オペル)・オメガがベースのロータス・カールトン(2000年)
ジョー・エリス氏が仕上げたヴォグゾール(オペル)・オメガがベースのロータス・カールトン(2000年)

「最終的に、山積みになっていた1番上のクルマから、サンルーフ部分をノコギリで切り取っています」。エリスが笑みを浮かべる。

「フェンダーアーチは、ロータスから治具を借りて加工。最初に取り付けたのは燃料タンクです。ホイールベース内で可能な限り前方へ積めるよう、採寸して固定方法を練りました。F1仕様のスペックで、80Lのものを自作しています」

ロータス側も協力的だったようで、ロールケージが組まれた耐久試験用車両も借りられたそうだ。その結果、オリジナルに近い価値のあるシャシーへ仕上げることができた。

同時に、ロータス側の秘密も知ることになった。「ナルドのテストコースで、ロータス・カールトンは時速177マイル(約284km/h)を記録しています。ナルドはバンクカーブが延々と続く円錐状をしていて、荷物などを積んで重くした方が速かったそうです」

横転の可能性はゼロではない

「エンジンのリミッターを高め、セルフレベリング・サスペンションはフロントを下げ、リアを上げるように改良されていました。フロントを低くし、アンダーボディへ流れる空気を少なくするために」

「このカールトンでも同様ですが、見事に機能しています。空気で生じる圧力の中心は、重心より後ろで生じているようです」

ジョー・エリス氏が仕上げたヴォグゾール(オペル)・オメガがベースのロータス・カールトン(2000年)
ジョー・エリス氏が仕上げたヴォグゾール(オペル)・オメガがベースのロータス・カールトン(2000年)

「空気抵抗も良く、ボディ面と平滑なガラスなどでCd値は0.3。ボディキットを付けても0.32程度です。気流を改善するため、シャシー底面にはベニア板を貼っています。純正の燃料タンクがあった場所は埋めました」

カールトンには弱点もあった。リアのディファレンシャルギアは加熱しやすく、2000年9月にエリスが挑んだデビュー戦では使い物にならなくなった。フルードの冷却用システムを荷室内に追加していたが。

「フルードを循環させる電動ポンプはリアにあり、問題が起きても気付かない可能性はありました。最初はエアが混入してしまい、充分に機能していなかったようですし」

「本番は気温が高く、240km/h前後にスピードを抑えて走行していると、コルベットC5がオーバーテイク。過ぎ去る後ろ姿に、白いオイルスモークも見えました。そのオイルでのスピンを恐れ、さらにスピードを落としましたよ」

「横転の可能性もゼロではありません。考えられるのは、タイヤのバーストや横風でのコースアウト。路面のワダチでステアリングが取られることもあり得ます。リアタイヤが浮いて、エンジンの回転数が不意に上昇するのを何度か見ています」

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジャック・フィリップス

    Jack Phillips

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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