【詳細データテスト】シトロエンC5 X C以上D未満 快適志向のソフトな足回り 静粛性はあと一歩
公開 : 2022.10.08 20:25 更新 : 2022.10.10 00:57
走り ★★★★★★★☆☆☆
C5 Xの販売は、ほとんどをエントリーレベルの130ピュアテックが占めることになりそうだ。これほどのサイズのクルマに、1.2Lの3気筒を積んでいるというのは奇妙な感じだと思うかもしれない。
ところがあのエンジン、ほかのクルマで乗った限りでは、驚くほど力強く、しかも静かだ。C5 Xでも登場時に試乗したが、スポーティさを求めないクルマであれば文句なしに必要最低限を満たしてくれる、という印象だった。
それでも、今回の180ピュアテックは、予算が許すならば130からステップアップする価値がある。1気筒で400ccほどプラスされ、50psほどアップすることで、C5 Xは楽しいクルマになる。とはいえ、圧倒的な速さが加わるわけではないが。
ここ最近テストした競合しうるワゴンモデルの大半がディーゼルで、だいたいがMTだったが、そのマーケットがどのように変化するかをまさに物語るクルマだ。このC5 Xをディーゼルのオクタヴィアと比較すると、ディーゼルから乗り換えたドライバーがどのような経験をするかがよくわかる。
ガソリン車のシトロエンはゼロ発進から速いが、トルクの太いディーゼルは低回転から力強く加速する。実際には、エンジンの本領を発揮させ続けるために、C5 Xは8速ギアボックスをかなり慌ただしく変速させる必要があるだろう。
C5 Xはスポーティさやダイナミックさを求めようとしないクルマなので、速く走らせようとすることにはあまり意味がない。しかしながら、エンジンパワーが多少なりとも上がることで、より楽に走れるようになる。
パフォーマンスそのものもそうだが、ここでより重要なのはステランティスのピュアテックエンジンは洗練度の高さが実証されているということだ。それは、C5 Xでも変わらない。
急加速した場合を除けば、この1.6Lユニットはほとんどエンジン音が聞こえず、ハードに走らせたときでさえ、気に触るような音ではない。トランスミッションをATのみとしたのはおそらく正解だ。耳で聞いて、変速ポイントを判断することができないのだから。
8速トルクコンバーターATには、取り立てて問題にするような点はない。変速のポイントは入念に選び、全般的にスロットルの急な入力に対しては、必要とあれば素早いシフトダウンで応える。とはいえ、ギアボックスの評価は満点にはほど遠い。
高回転でのシフトアップには間があるものの、中回転域での力強さは十分なので、そこは問題にならない。本当にフラストレーションを感じるのは、40km/h以下の領域だ。スロットル入力がパーフェクトにスムースでないと、車体にややギクシャクした挙動が出てしまう。まるで、駆動系のゴム部品が劣化しているような動きだ。
ブレーキ性能は、ライバルと同等といったところ。スプリングがソフトなのでボディはかなり波打つが、安定して停車する。
それでも、ペダルには注文がある。もっと楽に効き具合を調節できるようにしてもらいたい。高い速度域でなら、ペダルフィールは軽いにしても許容できる。だが、混み合った道をゆっくり進むようなときには、安定しないペダルの踏み応えやレスポンスにより、なめらかに停止させることが難しくなる。それはもう、イライラするほどに。