いま運転の楽しいEVは? 11位と10位 マスタング・マッハE GT ミニ・エレクトリック 英編集部選TOP 11(1)

公開 : 2022.10.15 09:45

ワイルドな走りは楽しめる

フロントタイヤが浮き、リアタイヤが沈み込むような感覚がある。あまり好ましい挙動とはいえないだろう。このコーナリングスタンスは、1970年代のフォード・カプリのレーシングカーに似ている。コーナーの度に、ノーズが激しく上下する。

そこからアクセルペダルを踏み続け、ステアリングホイールの角度を緩めていくと、テールスライドも維持できなくはない。しかし、ターンイン時の反応が鋭い一方で、初期のボディロールも強すぎる。

フォード・マスタング・マッハE GT(欧州仕様)
フォード・マスタング・マッハE GT(欧州仕様)

マスタング・マッハE GTは、長い航続距離を備えたBEVらしく、車重が重い。フォードは、シャシー特性を詰めきれていないのだろう。反応が活発過ぎ、フォード・フィエスタSTのような操縦性は得られていない。

とはいえ、自然なフィーリングではなくても、派手なコーナリングは可能。かなりワイルドな走りは楽しめる。 Matt Prior(マット・プライヤー)  

10位 ミニ・エレクトリック BEVとしては軽い車重

今回の選出では、ミニ・エレクトリックが上位にランクインするのではないかと予想していた。登場は2019年だが、運転好きの嗜好に応えるような、手頃な価格の小さなBEVは現在でも選択肢は多くない。

コストパフォーマンスに優れたドライバーズカーとして、ミニ・エレクトリックは高価格帯のモデルを破るのではないかと期待していた。だが、そこまでには至らなかった。

フォード・マスタング・マッハE GTと、ミニ・エレクトリック・クーパー、フォルクスワーゲンID.4 GTX
フォード・マスタング・マッハE GTと、ミニ・エレクトリック・クーパー、フォルクスワーゲンID.4 GTX

開発時には、実用性が大きく左右される航続距離を優先することもできたはず。しかし当時の技術者が選んだのは、ミニらしく軽快に運転する楽しさ。駆動用バッテリーは32.6kWhと容量が小さく、車重は1365kgとBEVとしては軽く収まっている。

3ドアというボディ形状も、多少実用性を制限する。一方で、ミニと呼ぶのにふさわしいスタイリングであることも間違いない。

ところが、ミニの電動パワートレインはサーキットへうまく対応できなかった。さらにシャシーは、コーナリング時の横方向のグリップ力が不足気味。最新のミニに期待するような、機敏さも足りていなかった。

姿勢制御やシャシーの反応は良い

電動パワートレインの課題は、試乗した英国編集部の全員が感じていた様子。クロフト・サーキットを2周ほど気張って走ると、駆動用モーターはセーブモードに入りパワーを制限。鋭く加速できるのは、ごく短時間だけという状態に。

メーター用モニターには、利用可能なパワーが絞られていることが表示されていた。その事実を、ドライバーに教えてくれていた点は評価できるが。

ミニ・エレクトリック・クーパー(英国仕様)
ミニ・エレクトリック・クーパー(英国仕様)

燃費重視のタイヤはグリップが頼りなく、小型犬のようにクルクルと向きを変えるような敏捷さもない。タイトコーナーでは外に膨らみがちで、芝生へアウト側のタイヤが乗り上げることもしばしば。

公道でもミニ・エレクトリックのパワートレインは、われわれの高い要求へ充分には応えきれなかった。少なくとも姿勢制御は好ましく、シャシーの反応も鋭いものだったのだが。 Matt Saunders(マット・ソーンダース)

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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