ポルシェ911カレラS
公開 : 2014.08.14 11:02 更新 : 2017.05.22 13:49
ポルシェ911が日本に到着
今年1月に発注し、本来なら3月頃に入荷かと思われた新型911だが、実際には6月に生産され船で日本に運ばれてきた。港に着いたのは7月25日で、ずいぶんと待たされた、という印象だが、今、世界的に人気で生産が追い付かない、とのことなので止むを得ないのだろう。
無事、ポルシェ社が納車前のPDIを委託している豊橋のVWのPDIセンターに上陸した報を聞き、折角だから取材も兼ねて訪問し、現車と一足早い対面をしてしまおうと考え、8月2日に豊橋に向かった。
VWのPDIセンターに関しては、本誌の昨年12月号の“VW大研究”の際、概要を掲載しているが、28万平方メートルの広大な敷地に、自動車生産工場とも思われるような巨大な建物があり、ここでVWグループのクルマの全てのPDI作業を行っている。敷地内には、登録台数から考えれば当然だが、夥しい数のVWやアウディの新車が存在し、その中にちらほらとベントレーやランボルギーニの姿を見ることができる。私の911は、2台のパナメーラと共に、一番奥のヤードに置かれていた。パナメーラは、ライプティヒの工場を出た後、陸路を長く輸送されるため、車体全体を覆う白いカバーが装着されているが、シュツットガルトで生産される911は、写真で判る様に、部分的にテープが張られるのみになっている。既に前日、日本仕様のナビを装着していたので、PDIの作業そのものは、それほど手間の掛かるものではなく、まず、内外装のキズのチェックを行い、その後、ラインに持ち込んで、下回りの念入りなチェックをして終了である。ここで、VWなどのディーラーによっては、テーピングも剥がし、納車前の準備を全て終えてしまうケースもあるようだが、ポルシェの場合には、この状態のまま輸送し、ディーラーでの整備となるようだ。私のクルマが一時保管のカーサイロに入るのを確認し、豊橋を後にした。
その後、911はナンバーの取得が終わり8月10日に無事、納車された。今回の仕様は以下の通りである。
ポルシェ911カレラSのPDK仕様で価格は1454万円。カレラにするか、カレラSにするか、随分と迷ったが、ダウンサイジングの評価をする、というジャーナリストの面よりも、モアパワーというエンスーの気持ちが勝ってしまい、決局、カレラSとした。昨今のクルマは、何れのメーカーもオプションで稼ぐ、というような戦略がありありで、あれもこれもと選んでゆくと、あっという間に300〜500万円も跳ね上がってしまう。しかし、私は、可能な限り、素のまま乗るのが主義で、今回も必要最低限のオプションを装着するに留めた。それでも、合計で113万円となってしまった。具体的な内容は、メタリック・ペイントが208000円、スポーツクロノパッケージが358000円、スポーツエグゾーストシステムが460000円、パドルシフト付き3本スポークスポーツステアリングが74000円、フロアマットが32000円である。スポーツエグゾーストシステムは、広報車に装着されていて、聞くと非常に良い音質なので、ぜひ、付けたいと思ったオプションである。結局、税金その他の諸費用も入れれば、1500万円を越える金額となってしまった。ボディカラーは、私の所有する356Aカブリオレとお揃いのシルバーメタリックに決めたので、必然的にメタリック・ペイントの代金がかかってしまった。しかし、一概にシルバーと言っても、かなり色味は微妙で、356のシルバーはやや青みがかっており、実際に並べて見たら、かなり違うのでは、と思っている。
オド・メーターは26kmで納車されたが、取り敢えず、慣らしを行い、8月26日に開催予定の356クラブのサーキット走行会に備えようと思っているところだ。
(AUTOCAR No.113 2012年8月26日発売号掲載)
2149km走りました
8月10日に納車となったポルシェ911カレラSは、真夏の暑さにも係わらず、何のトラブルも無く、順調に走行距離を伸ばし、9月11日現在で、2149kmを走りきった。
この間、1000km走行時までは、エンジンの慣らしと決めていたので、4000rpmに回転を留めていたが、それ以後は、逆にフルに回すようにしている。とは言え、全開するチャンスはそれほど有るものではなく、今回では、スポーツランド山梨での、タイムトライアルのみであった。従って、この時を除けば、燃費に大きな変化は無く、満タン計測を始めた63km時から2112kmを走破して、合計335.02リッターのハイオクガソリンの消費し、6.30km/ℓという結果になった。平均して6km/ℓ台が出るということは、随分とポルシェも燃費が良くなったものだと思う。
私の通常の走行パターンは、朝、川崎の自宅から出て東名川崎インターまで行き、そのまま東名に乗り、料金所を過ぎ渋谷で降りて、青山墓地、乃木坂を通って赤坂の事務所に到達する。帰りは、池尻から首都高に乗って逆パターンで帰る、というのが基本である。この間が往復凡そ50kmの距離で、この他に都内の打ち合わせや、発表会への移動で毎日、20〜30kmは走っている。従って、通常の走行では、かなりの部分を都内の混雑の中で過ごしている事になる。しかも、8月は夏休みで、東名の東京口は例年の事ながら猛烈に混んでいたので、ほぼ全線が渋滞というケースが多く、燃費ではかなりつらい状況であった。
この他に、常磐道で谷田部の往復、そして、富士スピードウェイを経て、甲府に行き、スポーツランド山梨でのミニ・サーキット走行を経験した。このトライアルは全長1kmほどのコースをトータル16周ほど、レブリミットまで回して走った。使ったギアは1速から3速までで、スポーツプラスとし、マニュアル・モードで、トラクション・コントロールは解除せずに走ったが、どうしても新車ということで、手加減してしまったのは仕方の無いところだ。
という訳で、スポーツカーであるポルシェの燃費ということではかなり不利な状況にあったにも係わらず、6.3km/ℓが出た、ということは評価して良いと思う。因みに、ほぼ全ての走行はスポーツ・エグゾストがオンとなる、スポーツモードにしての走行であった。
今日現在、未だ新車の香りの残る室内はタン一色で、かなり明るい感じだ。しかし、ダッシュボードも同色としたので、他のクルマよりも光の反射が多く、サングラスが必需品となってしまった。やはりダッシュはブラックを中心とした濃い目のカラーにすべきだったかと思っている。居住空間は、かってのモデルよりも数値的には広くなっているはずだが、あまり実感は無い。後部座席に大き目のゴルフバックを入れるのはかなり難しいが、長さが無い荷物であれば、フロント部分と後部座席で大概は収まるはずだ。先日、お台場から、川崎の家まで始めて3人乗りで帰った。過去のモデルより座席そのものもかなり広くなっているはずだが、それでもこの程度が後部座席の限界距離だろう。
オプションで装着した、スポーツ・エグゾストはやはり装着して良かったと思っている。スイッチをオンにした途端に、アイドリングでも野太い大音量に替わり、アクセルのオフ時には、共鳴音がボロボロと鳴って、非常に心地良い。3500rpm当たりからの鋭い音質もその気にさせてくれる。フェラーリやマセラティとも違い、また、アストンマーティンとも違う独特の音質で、音感は実に良いと思う。スポーツランド山梨でも、ポルシェ356クラブの皆さんが、良い音だとビックリしていたのが印象的だった。
電動となったパワーステアリングは、全く何の違和感もない。むしろ、この感触に慣れるとキックバックが少ない分だけ操舵しやすい、と思う。路面の感触もしっかりと捉えられているので、不満は何もない。
2000kmあまりを走り、漸くこのポルシェに慣れてきたところで、来月は、飛び石によるキズの防止用のフィルムを張る予定だ。
(AUTOCAR No.114 2012年9月26日発売号掲載)
プロテクションフィルムを貼りました
納車から、約2ヵ月が過ぎた911は、相変わらず何のトラブルもなく、好調に毎日の足として、また、時には無上の楽しみの提供者として活躍してくれている。毎日の通勤では、夏場を過ぎて、東名の交通量が減ったこともあり、次第に速度域が上がってきて、それが燃費には良い効果を出している。今月は10月8日までで1663kmを走り、250.85ℓのハイオク・ガソリンを消費した。したがって、燃費は6.63km/ℓと若干ではあるが向上している。
911のようなスポーツカーでは走行距離が多くなればなるほど、飛び石によるフロント部分の細かい傷が入ってしまい、塗装面はボロボロになってしまうことが多い。それを防ぐために、米国などではブラジャーと呼ばれるプロテクト・カバーなどを装着するのが流行ったが、今は、それよりも、プロテクト・フィルムを貼る方が一般的となっている。この911も、あまり走行距離が伸びない内に、何らかの対策をしようと思っていたが、AUTOCAR JAPANのWebサイトのスペシャルショップ・ナビに参加のショップで、エクスペルジャパン/エクセルフィルムが取り扱う商品が非常に優れていることが判り、早速、装着してみた。
おそらく読者の皆さんはその結果が知りたいと思うので、まずは完成した写真を見て頂きたいが、実際にフィルムを貼ってあるかどうかは、言われなければ気が付かないレベルの、非常に高い完成度だと思う。一昔前の、如何にもフィルムが貼ってあります、というような仕上がりでは一切無いのは素晴らしい。
この製品は、米国のエクスぺルプロテクションフィルムで、現在はスタンダードから、最高級のULTIMATE(アルティメート)まで数種類があり、今回装着したのは、その内、最高級のULTIMATEで、フロント部分を全て、すなわちフェンダー、ボンネット、そしてライト周りも全て貼りこんだ。フィルムの構造は、図で判るように4層になっており、貼るときは、その一番下層の剥離紙をはがすので、実際にボディに貼られるのは3層で、その厚さは僅かに0.2mmである。
このULTIMATEフィルムは60℃以上の温水を掛けることで細かな傷を修復する「セルフヒーリング機能」が備わっている画期的なフィルムということだ。米国の本社には、現在販売されているほぼ全てのクルマのプレカット・データが存在し、その型を米国XPEL社と直結されたオンラインシステム(D.A.P)と接続された専用のカッティング・マシーンで切り出し、効率よく貼りこんでゆく。作業時間は丸一日かかり、費用は凡そ18万円〜となっている。ボディ全体を包むことも可能なので、興味のある方は問い合わせてみるといいだろう。この他、製品の種類としてはカーボン地肌やつや消し地肌に見せるステルス・フィルムなど、様々な対応ができる。
完成して数日間はフィルムの独特の臭いがするが、それもすぐに消えるので、貼ってあることすら忘れるほど、自然であるという事だ。優れモノであり、お勧めである。
どうやら、レポート車のアヴェンタドールも、早速、貼りこみをすることになったようだ 。
(AUTOCAR No.115 2012年10月26日発売号掲載)
改めて伝統を感じます
3か月目を迎えた911カレラSは、相変わらず好調で何のトラブルもなく距離を重ねている。今月は、出張や他の試乗車に乗る機会が多かったため、走行距離は意外と伸びず、970kmに留まった。この間、燃料は143.3ℓを消費しているので、平均燃費は6.77km/ℓとなり、これまでで最高を記録した。総走行距離が5000km近くになったので、そろそろ、オイル類の交換をしてみようかと思っている。現状ではオイル類の減りは少なく、また、マニュアルでは、新車時より1.5万kmに1回の交換でOKとなっているが、初回だけは念のため交換するつもりだ。
このところ都内でも、新型911を見かけるようになってきた。先日などは、全く同じシルバーのカレラの後ろについたが、リアエンドの印象は、スポイラー部分でサイドに伸びるラインが入ったことにより、ストンと下がっている997とはかなり違う感じに見える。
我が家には、55年前にポルシェ社のファクトリーから出荷された356Aカブリオレがある。パナメーラの時も、実際に並べてそのサイズの違いをチェックしてみたが、今回も2台を並べて、その違いを検証してみた。パナメーラの時は、2回りほども違うボディサイズに今更ながら驚いたが、やはり今回も、実際に並べてみると、一回りは確実に大きくなっていることが判る。しかし、そのコンセプトは何ら変わらず、一目見てポルシェと判るルックスも維持されていて、明らかに後継車であることが判るのだ。
先月、施工したプロテクション・フィルムは、その後何の問題もなく機能してくれている。クルマを見たほぼ全員がフィルムを貼ってあることを気が付かず、これは大成功だったと思う。特に秋になり、高速道路では、虫の死骸がフロントに大量に付着するようになったので、より一層効果的だ。
さて、いよいよ冬が近づいてきて、ウインター・タイヤの宣伝も盛んな季節になってきた。折しも、AUTOCARのWebサイトで911とミシュラン・タイヤによるスノータイヤテストの動画が掲載されている。 R-Rのポルシェでは、雪道のコントロールについては、かなりテクニックがいるはずであるが、そもそも20インチ以上の幅広タイヤで、雪道に行く必要があるか、という根源的な問題がある。ポルシェと雪道では、私は今でも忘れられないシーンがずっと記憶の中にしまわれている。それは、1974年頃の冬の志賀高原にさかのぼるのだが、当時の志賀草津道路の料金所で、私がなけなしの金をはたいて買った中古のフェアレディZのチェーンの脱着をしている時、その脇をシルバーの911が隣に美女を乗せ、純正のルーフラックにスキー板を積んで、4輪スパイクの音をシャラシャラと鳴らして走り去ったのだ。そのカッコ良さといったらなく、私は呆然と見送ったものである。そして、いつかは私も同じことをやりたいと心に誓ったのだ。その後、それを実現するチャンスは、隣の美女!を除いて、無いわけではなく、現に今でもやろうと思えばできるのだが、いざ雪道にポルシェで乗りだす、というのは現在ではリアリティがないと思う。ごまんとある4駆のSUVで行けば、こんな便利なことはないし、荷物も何もリアに放り込んで置けば全てOKなのだ。例えば、北海道のポルシェオーナーが冬、ポルシェに乗る確率はカイエンを除けば、殆どゼロだと思う。先頃、フェラーリ社から4駆のFFというクルマが発売され、雪道での素晴らしい性能を当編集部でも体感したのだが、購入したユーザーが、実際に雪道に行くのかは、はなはだ疑問であると言わざるを得ない。ましてや、強行した挙句に、運悪く貰い事故などに遭ってしまったら、目も当てられない、というところだと思う。
ということで、この冬は、現在のタイヤのまま、過ごす予定だ。
(AUTOCAR No.116 2012年11月26日発売号掲載)
フロントガラスが割れました
ポルシェ911カレラSは、納車から、丸4ヶ月が経った。今月は他のクルマでイベントに参加したり、もう一台のレポート車であるVOLVO XC60に乗ることが多かったので、走行距離はあまり伸びず、625kmに留まった。ガソリンは2回補給をして、103.18ℓのハイオクを飲み込んだので、都合、6.06km/ℓの燃費となった。今回は殆ど、高速に乗らず、都内を走ることばかりだったので、止むを得ないか、と思っている。
今月、ショックだったのは、フロントガラスが割れ、交換を余儀なくされたことである。事の顛末は以下のとおりだ。11月16日の深夜、丁度締め切りの真っ最中でヘロヘロになって帰宅途中、東名の多摩川橋付近で、ピシッという音がして、何かが当たったことが判ったが、特に大きな損傷も見えないのでそのまま帰宅した。ところが、週末が過ぎ19日になって、会社に向かうためドライバーズ・シートに乗り込むと、ステアリングのすぐ上の部分のウインドウに小さな凹みがあり、そこから既にヒビ割れが成長して5cmほどになってしまっていた。このまま放置すれば、更に成長することも予想されるので、すぐにディーラーに連絡し、交換をお願いした。幸いにもフロントガラスの在庫はあり、装着時の接着剤の硬化の時間を考えても、丸2日間の入場で済む事がわかった。問題は価格で、ウインドウシールドが10万3110円、ルームミラーの装着場所のシールである粘着性のフィルムが3360円、工賃が5万2800円で、合計15万9270円となったが、この金額で車両保険を使うのは後の保険代の上昇を考えると得策ではなく、かと言って自分の財布から出すのは予想外の出費なので面白くなかったが、結局、保険は使わないことにした。こうしたトラブルは不運としか言い様が無いが、仕方の無いことだ。
さて、話は前後するが、走行距離が5000kmに達したのでエンジン・オイルの交換を行った。元々、ポルシェは空冷の時代からオイル消費はかなり多いのが普通で、356の時代などは1000kmで1ℓの消費までは正常値だと言われていた。無論、今はそんなことは無いが、5000kmで1ℓの消費は普通のようだ。私の911も、5000km走行時にダッシュボードのレベルゲージで見る限り1ℓ以上は消費していた。オイル交換は1時間ほどの待ち時間で終了し、8ℓのオイルを使ったが、この他、携行用として、取り敢えず1ℓを購入した。実際のオイル交換のインターバルは、1万5000kmなので、少なくとも、2ℓは必要なのだが、それは様子を見てからと思っている。
フロント部分にフィルムを貼ってから、何回か洗車をしたが、フィルムそのものに問題は無い。ボディカラーがシルバーなので汚れは目立たないが、ホィールがパッドの粉ですぐに汚れるので、比較的マメに洗車をしなければと思っている。自分で洗う時間は無いので、馴染みのガソリンスタンドで手洗い洗車をお願いしているのだが、どうしても20分ほどは掛かってしまう。
さて、先頃、ロサンゼルス・ショーにおいて、新型ケイマンが発表となり、パナメーラから始まった新世代ポルシェが全て出揃った。キープコンセプトなのは当然として、全体が先代よりも、カチッと仕上がっているイメージが共通していると思う。これに、来年、カイエンの小型版のマカンが加われば、それこそ、日本での販売が年間5000台ということも現実性を帯びてくると思う。
(AUTOCAR No.117 2012年12月26日発売号掲載)
燃費が向上しました
今月は燃費がかなり向上した。この1ヵ月で1289kmを走破し、この間、燃料補給は4回、合計179.6ℓのハイオクガソリンを消費した。従って7.2km/ℓとなり、初めて7km/ℓ台に突入した。この間の燃費を走行パターン別にみると、都内ばかりを走っていた時の5km/ℓ台から、高速を主体としたパターンの8km/ℓ台までの幅になっている。無論、スポーツ・モードにしなければ更に良い燃費になるのは判っているが、それでは何のためのポルシェかという思いもあるので、今のところ、ノーマル・モードで走ることはしていない。
先日、フロントウインドウが飛び石で割れた経過をレポートしたが、保険代理店を営んでいるという読者の方から電話を頂いた。その内容は15万円程度なら保険を使った方が安かったのでは、というご指摘であったが、そのような場合もあるので、もう少し詳しく紹介をしたい。
そもそも、昨年の秋までの車両保険では、飛び石に限り車両保険を使っても、その翌年の保険金額にペナリティが付かず、従って保険料が増額にはならなかったのである。しかし、この制度を拡大解釈して、高額の保険料を要求する人が多くなり、私が保険を加入している東京海上日動火災保険では遂に廃止となってしまった。ということは、他の保険でもほぼ同時にそうなる訳で、まず、状況が変わってしまったことを認識して頂きたい。更に、私のポルシェの場合、諸般の事情から新規に保険に入らざるを得ず、この場合は、無事故割引などの恩典には浴することができないので、保険を使った場合の割り増し料もかなりな額になってしまうのだ。無論、永年保険に加入していて、最大の割引率に近くなっているような場合には、間違いなく、保険を使った方が安くなるはずである。それぞれのケースでかなり、状況は異なるので、よく調べることをお勧めする次第だ。
さて、先日、JAIAから、2012年の新車登録台数が発表された。それによると、ポルシェの販売台数は4661台で、前年対比では127.4%となり大幅なアップとなった。無論、昨今の円高では、並行輸入もかなり行われているはずなのだが、それにしても、大きな向上である。今年はケイマンのモデルチェンジも予定されているので、この調子で行けば悲願の5000台も実現のリアリティが出てくるはずだ。最近では都内でも991の姿を頻繁に見かけるようになった。それと、パナメーラの数も増えているように思う。パナメーラに乗っていた時もそうだったが、まず、トラブルとは無縁であることがとても有難い。しかも、燃費もかなり向上しているので、日常の足として何ら問題ないのだ。
今、本誌では認定中古車の購入を勧めているが、最近では、991の下取りでかなり良質の997のディーラーへの入荷が多くなってきた。997はカブリオレからターボまで全てのモデルが揃っているので、今はチャンスだと思う。
(AUTOCAR No.118 2013年1月26日発売号掲載)
初めてのトラブル?
昨年8月の納車以来、早いもので既に半年が経過してしまった。この間の総走行距離は2月5日現在で7757kmとなっている。これは当初の予想より大分少ないが、伸びなかったのは他の試乗車にも掛け持ちで乗っていたからで、単独なら、おそらく1万2000km程度までメーターは進んでいたはずだ。
今月は、始めてトラブル?らしきものに遭遇した。先月で燃費が向上したことをレポートしたが、私の場合、常にスポーツ・モードで走っているため、ノーマルモードと比べ、常時エンジン回転数は高く、アイドリング時でも、100回転以上高くなっている。それでも、先月は燃費が向上したことから、一度、ノーマルモードで、アイドリングストップも全てオンにしたままで走ってみたら、どの程度の燃費になるかを計測しよう、と考えを進めた。実際に7086km時の満タンからスタートして、300km程度走ったある日の夜、パーキングから出して、最初のコーナーで一旦停止をしたら、アイドリングストップと同時に全てがオフになってしまった。幸いセルモーターはしっかりと回るので、すぐに再始動し事なきを得たが、その後も症状は治らず、仕方なく、ポルシェセンター目黒の担当に連絡すると、バッテリーの電圧降下だという答えだった。真夏、真冬は、通常でもエアコンの負荷が大きく、しかも、夜間などは、ライト類の点灯とエアコンのフル稼働により、最大の消費量となるので、それにアイドリングストップが加われば、再スタート時のセルモーターのために、使用量が限度を超えて電圧が降下してしまうことがあるという。対策としては、単に「アイドリングストップは使わないでください」とのことであった。確かにノーマルモードでは、例えば高速道路などでも、アクセルオフした途端に7速に入り、殆ど1000回転台のエンジンスピードになってしまうので、充電効果は少なく、なかなかバッテリーの回復は難しいと思う。それでいて、セルモーターを回すのはかなりな電力を必要とするので、こういった事象も起こるのだろう。であれば、アイドリングストップをデフォルトでオンにしておく今のシステムは、逆のような気がしているが如何だろうか。
と言う訳で、結局、その後はいつもどおり、必ずスポーツ・モードにして走っていたので、総燃費は逆に前回よりも悪化してしまった。今回の走行距離は1035kmで、この間152.58ℓのハイオクを飲み込んで、平均燃費は6.78km/ℓとなった。それでも、以前よりはマシである。節約モードで走った時の燃費は7.3km/ℓで、スポーツ・モードでガンガン回した時が6.64km/ℓなので、その差は0.6km/ℓ程度であり、これなら、ポルシェらしく楽しく走った方が気持ちが良い、と思う。
さて、先日、親切に1997年型のマニュアル仕様のカレラSが出た、と教えてくれた人がいた。この911を購入する前に、実は993の最終型のカレラSのマニュアルが欲しい、と大騒ぎしていたので、覚えてくれていたらしい。今はさすがにこのクルマがあるので、買うのに躊躇するが、家の近くのカレントという専門店に出ていた件のクルマは、走行距離も少なく魅力的であった。価格は流石に高く600万円を超えていたが、それでも、空冷エンジンの最後で、しかも、リアが張り出したカッコよいスタイルは、歴代911の中では一番好きである。無論、仮にガレージにこの993と991の2台があれば、一体どちらに乗ろうか、と迷うのは必定で、結局購入には至らないのだが、一瞬、冷静さを失いそうになるほどであった。
やはり、私はポルシェ好きなんだな、としみじみ思う。
(AUTOCAR No.119 2013年2月26日発売号掲載)
911の完成形
今月は順調に走行距離が延び、1717kmを走破した。何回か高速を使った長距離も走ったので、911本来の走りをかなり楽しむことができたと思う。この間に257.14ℓのハイオクタン・ガソリンを消費したので、燃費は6.68km/ℓとなった。最も、燃費が良かったのは、主に高速を走ったセッションの7.13km/ℓで、逆にワーストは都内を徘徊していた時の6.21km/ℓである。私の周囲の声としては、もう少し燃費は良いはずで少し回しすぎでは、と言われる。確かにスポーツモードにして、スポーツマフラーの気持ちの良い音色を聴きながら、という事になると、3000r.p.m以上を使う率が高くなるので、このような燃費となるのだろう。しかし、これでも、過去の911からするとかなりの向上になるはずで、先日、友人の一人が購入した1979年式の911SCは、コンディションが非常に良い状態だが、平均的には5km/ℓだそうだ。私の経験でも、そのくらいだと記憶しているので、現行モデルが良くなっているのは間違いない。7ヵ月が経って、幸い、ドアを当てられたようなエクボも無く、ボディも室内も特に目立ったダメージはない。プロテクションフィルムを張ってあるので、フロント部分については全く問題が無い。しかし、残念なことにフロントガラスには、先日再度撥石が当たり、小さな傷ができてしまったが、今のところ、前回のように成長する気配はないので、そのままにしてある。オイル消費は、メーター上で2目盛り分が減少しているが、まだ継ぎ足すレベルではないと思う。このところは、高速道路走行の時は、サスペンションもスポーツモードにしている。ある程度の速度になると、段差の大きな継ぎ目やうねりのある個所などで、ノーマルセッティンングでは収まりが悪い感じがしているからだが、乗り心地との兼ね合いが難しい。タイヤは新車時からピレリが装着されているが、現時点でリアが5分山程度まで減ってきた。そろそろ次のタイヤを考える時期で、選考に入ろうかと考えている。
さて、そろそろ国内発表となるケイマンの新車で、新世代のポルシェのラインナップが全て揃うことになる。ボクスターとケイマンの品質は更に向上し、911と遜色ないレベルになった、と言われている。本誌UKのテスターは、ケイマンがポルシェの中のベストバイだ、とまで言い切っていて、大枚をはたいた911オーナーにとっては、嬉しいような寂しいような気分だが、日常乗ってみて、その切れ味の良さを思うと、然もありなん、と言うところだ。
今号で大特集をしているように、911は今年で50周年を迎えた。911を30代の頃から乗っている私の経験からしても、このクルマは毎日乗ってこそ、その真価が発揮できるのだと思う。スポーツカーとして卓越した性能を持ちながら、毎日乗ってもストレスを全く感じない、というのが、一番の美点だ。無論、最初期のナローモデルなどになれば、勿体なくて、ということになるのかもしれないが、それとて、毎日乗ろうと思えば乗れるのだ。今月の特集では、英国と、日本のそれぞれ編集スタッフが911に対しての思いの丈を語っていて、私もこれまでの経験の中で、最も強烈な印象だった2ℓの911Sの事を書かせて頂いたが、50年もの間のモデルの変遷はそれぞれの時代で、魅力的なものが多く、実際には甲乙つけがたい、というところだ。先号で記述した、空冷最終の993のカレラSも魅力的だが、930ターボに改めて乗ってみたい、という誘惑もあり、考え始めると際限がなくなってしまう。
(AUTOCAR No.120 2013年3月26日発売号掲載)
ジムカーナに参加しました
納車直後の昨年8月の終わりに、スポーツランド山梨でタイム・トライアルをして以来、特にスポーツ・イベントへの参加をしていなかったが、3月31日に開催されたポルシェ356クラブの大磯ジムカーナで久々に走ることになった。本来は356Aで参加の予定だったが、天候が悪化し土砂降りの雨も予想されたので、この911を代役としたのだが、実際には、雨は朝方で上がり、競技を開始する頃には路面も完全なドライとなっていた。大磯プリンスホテルの駐車場は、いつもお馴染みの場所で、ジムカーナには本当に最適なところだと思う。参加車は、356、911、914などのポルシェ勢以外にもビジターとして、ケータハム・セブン、MR2などにも来て頂き、遊びなれた大人の集まりとなった。
私の911が実は一番車重が重く、また、パワーも一番ある、ということで、相当スムーズに走らせないと、タイムを出すのは難しいと思われた。完熟の走行では、久しぶりのジムカーナということもあって、早めにブレーキを踏んでしまい、アンダーを出しがちであったが、次第に慣れ、きちんと荷重移動さえすれば、非常にスムーズにパイロンをクリアできることが判った。因みに、サスペンションはハードに、シフトはスポーツ・プラスにし、PSM(ポルシェ・スタビリティ・マネージメント)は解除してマニュアルで走行した。ジムカーナではPSMの解除は必須である。911の運動性能の良さはよく理解できたが、ピレリPゼロ・タイヤはこの走行でいよいよ摩耗し、そろそろ次期のタイヤの選定をせざるを得ないことになりつつある。
さて、納車から8ヵ月を経て、遂に走行距離は1万kmを超えた。今月はジムカーナも含めて、1612kmを走行、243.61ℓのハイオクガソリンを消費し、従って6.61km/ℓという燃費となった。新車時からの総走行距離は4月13日現在で11086kmとなり、その間の平均燃費は6.62km/ℓなったので、今回はほぼ平均どおりの燃費ということになった。私の走行パターンでの平均燃費の数値は6.5km/ℓ前後であろう、というのが、ここまでのデータから伺える。ただ、年度末の3月の混雑を経て、4月以降は通勤経路の首都高3号線も例年通り、かなり空いてきたので、これからは良い数値が期待できるはずだ。
前回のオイル交換から、約6000kmを走行したが、ダッシュのデータで読むとオイルゲージで2メモリ減少しただけなので、0.5ℓの消費に留まっている。
そろそろ陽気も良くなって来て、アベノミクスで景気もよくなりそうだし、連休前後には少し、ロングランをやってみようか、とも考えている。
(AUTOCAR No.121 2013年4月26日発売号掲載)
ライムラリーに参加しました
今月は所謂タイムラリー競技で、最近非常に人気を集めている“ヒストリックカー・ミーティング・イン豊橋”に参加してみた。このイベントは名古屋の天野さんが主催しており、タイムラリーの楽しさは勿論、夜のナイトパーティも毎回大変な盛り上がりで、一度参加すると、病み付きになってしまうような不思議な雰囲気がある。普段はポルシェ356で参加しているのだが、今回は911で遠出をしたかったので、ごく僅かにエントリーが許されているスーパーカー・クラスに参加させて頂いた。
1日目の5月11日の天気予報はどうやら雨模様。まだ、降り出していない早朝に川崎を出て、豊橋に向かった。御殿場までは、走り屋のスバル・インプレッサなどをいなしながら良いペースで走れたが、その後はかなり酷い降りになってしまったので、ペースダウン。新東名はまだ新しいため路面が荒れていず、濡れていても非常に走りやすく、無事午前9時開催のドライバーズ・ミーティングに間に合った。この後、残念ながら、ラリー開催の一日中、雨にたたられてしまった。今回のラリーは、比較的走行距離が長く、ワインディングも本宮山スカイラインと引佐方面のオレンジロードの2ヵ所が設定されていた。かなりの降雨のためコーナーの入り口付近に川が出来ていて、ブレーキングには注意が必要だったがそれ以外は問題なく、やはり、356とは大違いの快適な走行が楽しめた。
2日目はカラリと晴れ上がった。この日のハイライトは、西浦サーキットでのPCであった。西浦サーキットは海沿いのロケーションで、ミニ・サーキットとしてはかなり設備も良く、コースもよく考えられていて、タイム・アタックなどは面白そうであった。今回は、ほぼ1周を90秒で走るというPCのみであったので、さわりを味わうに留まったが、チャンスがあればチャレンジして見たいと思っている。
トラブルもなく全競技を終了し、表彰式の後は新東名をひた走り、連休開けで比較的空いていたこともあって、午後9時には家に着き、何と、F1スペイン・グランプリに間に合ったのである。総走行距離は800kmあまりで、平均燃費は7km/ℓをはるかに上回ったが、それ以前の都内走行が響いて、今回の全体の燃費としては、6.93km/ℓに留まった。この1ヶ月の走行距離は2090kmで、下ろしたての新車時に次ぐ距離となっている。
今回のようにロングランをすると、ポルシェ911のスポーツカーとしての長所が改めて見えてくる。あらゆる速度域で非常に安定しており、フル加速に移ったときでも、フロントが浮くようなそぶりも見せず、安心して踏み込んでゆける。スポーツマフラーの鋭い音質以外は、どちらかというとパナメーラの領域に近くなっており、法が許せば、どこまでもいつまでも全開で走って行けそうだ。今回の991になって一番のメリットは、おそらくロングランの際の疲れ方がかなり軽減されていることだろう。シャシー全てに渡っての全面設計の見直しが、非常に効果的だったということだと思う。
(AUTOCAR No.122 2013年5月26日発売号掲載)
後席を考える
長期レポート車として昨年の8月に導入以来、991は今月で漸く10ヶ月目を迎えた。走行距離は遂に1万5000km近くになったが、トラブルは皆無で快調である。今月の走行距離は1785kmで都内の走行が比較的多かったため燃費は下降気味となったかと思ったが、感覚と言うのは意外に当てにならないもので、実際には6.77km/ℓでまずまずの数値となった。
さて、今月は911の後部座席について考えてみよう。ポルシェは356の時代から、自社の製品をスポーツカーではなくツーリングカーと認識していて、一部のモデルを除いて、必ず後席を設定していた。しかし、そのサイズは、大人なら、身をかがめて何とか入り込める程度の空間が確保されているに過ぎなかったが、実はこれがなかなか有用なスペースで使い勝手が良いのである。
オリジナルの911の後席スペースは、写真(79年型911SCのもの)で判るとおりのサイズで、身長150cm程度までの人なら比較的楽に座ることができるが、170cmを越えると首を曲げていなければならず、フット・スペースも非常に狭いので、実際に耐えられる時間は30分ぐらいが精々だと思われる。身長168cmの私も昔、富士スピードウェイから甲府まで約1時間ほど後席に乗ったことがあるが、かなり辛かったのを記憶している。991になり全体にボディサイズが拡大されたことに伴って、後席の空間自体も広がったが、かと言って大幅な改善にはなっていない。やはり、例えば近所のレストランまで食事に行くためのチョイ乗り、とかの使い方しか出来ないのは変わらないところだ。この991を購入してから、後席に人が乗ったことは2回しかないが、その2回が案外有用でどんなに狭かろうが後席があって助かったと感じたのは間違いない事実である。
しかし、この空間を荷物置き場と考えると、大きく見方は変わってくる。911レベルの高性能を発揮するスポーツカーで、荷室の殆ど無いスポーツカーは数多くあり、助手席に置く以外ゴルフクラブすら積めないクルマが多いのである。それに比べると、写真のように、楽に置けるだけでなく、更に多くのスペースが残り、フロント部分の深いトランクスペースを合わせれば、相当な荷物が搭載できることになる。これは991の大きなメリットの一つだと思う。しかも、左右分割化倒式なので、すこぶる便利で、夫婦と小さな子供1人、或いは子供2人の家族での移動も問題ないはずだ。
最近は都内で996の姿をよく見かける。元々かなりの販売台数だったので、まだ、相当数が東京にも棲息しているはずだが、それにしても頻繁に見かける。まだまだアシとして使うのは全く問題ないし、価格もかなりこなれて来ているので、新たに購入したユーザーが乗り出しているのかもしれない。リアからみると、他のモデルよりも丸く、そしてフロントは、例の涙眼なので、すぐに見分けがつく。その一方、993はやや減少気味かもしれない。やはり、時代の変化なのだろうか。
(AUTOCAR No.123 2013年6月26日発売号掲載)
皆さん洗車はどうしてますか?
私の911のように毎日、通勤から近所の買い物までできる限り使うようにしているクルマの場合、洗車をするための時間は意外と取りづらい。15年ほど前までは、たとえアシのクルマでも自分で手洗いをしていたが、最近は流石に時間が無く、ガソリンスタンドで手洗い洗車をお願いしている。都内では、スタンドそのものが少なくなっている上に高額なので、川崎の家の近くで比較的安価で丁寧なところを選んで洗っている。この911の場合、ボディ・カラーがシルバーなので汚れは目立たず、放っておいても1ヶ月ぐらいは気にならない程度だが、ブレーキ・パッドのカスによるホィールの汚れは酷く、1週間程度で、斑に汚れが目立つようになってしまい、3週間もたてば、殆ど真っ黒という状態だ。メルセデス・ベンツなどでは、ヤナセが独自で製作した、あまり汚れないブレーキ・パッドがあり、実際に我が家のCクラスに装着したところ、効きも変わらずしかもかなり目立たなくなったが、991の場合にそのようなパッドがあるかどうかは判らない。という事で、3週間に一回程度は洗車をしているが、先日、行きつけのスタンドで5万円の洗車回数券を勧められ、思わず購入してしまった。それは、3万5000円で5万円分の洗車券が買え、しかも、買った当日の洗車も無料ということで、8〜9回分の洗車がタダになった。そういえば、装着してから既に9ヶ月がたつプロテクション・フィルムは、変色やはがれなどといったトラブルもなく、とても良い状態を維持している。高速道路を長距離走行したおりなどは、びっしりと虫の死骸なのがついているので、かなり効果的だと思う。
今月の走行距離は1708kmで、ごく平均的なものであった。この間の消費したハイオク・ガソリンの量は260.93ℓで平均燃費は6.54km/ℓとなった。例によって、スポーツモードで、アイドリング・ストップはオフにし、渋滞以外ではガンガン踏んでもこの程度の燃費は得られる、ということである。暑くなってきたので、エアコンはフルに稼働しているが、油温、水温ともに何の問題もない。さすがに1万6000kmを超えると、タイヤの摩耗が心配になってきた。遂に2分山程度まで減ってきて、同時に乗り心地もかなり荒くなってきている。高速道路の継ぎ目などのショックも、ボディに直接ドンとくる感じで、明らかに限界である。この911の場合、適合するサイズを用意しているメーカーが少なく、再度ピレリを選択という可能性が高そうだ。
(AUTOCAR No.124 2013年7月26日発売号掲載)
タイヤを交換しました
今月は懸案だったタイヤの交換と、1年点検を行った。
タイヤは、新車時から、ピレリP ZEROが装着されていたが、フロント245/35ZR20、リヤ295/30ZR20サイズのタイヤは、それほど種類が多い訳ではなく選択の余地は限られてしまう。また、常々、ポルシェとピレリの親和性は良いと感じていたことから、今回は、再度ピレリを履くことにした。交換は1年点検と同時に、ポルシェセンター目黒にお願いしたが、オドメーターで17834km時であった。減りは、サーキット走行や、ジムカーナなどに参加した割には少なく、フロント5部山、リア3部山程度であった。しかし、特にリヤのセンター部は殆どスリック状態になっていたので、限界だろうと思う。この程度の溝になると、大雨の際は、かなり気をつけて走行しないとハイドロをすぐに起こす危険がある。昨今の異常気象では思いもかけない集中豪雨があるので、普段にも増してタイヤのメインテナンスは重要だと思う。交換時に、ホィールのキズなどのチェックを行ったが、コインパーキングに入れる際にうっかりガリっと傷つけた箇所以外は全く無傷であった。
新しいタイヤになり、早速取材のお供で箱根に行ったが、流石にゴツゴツ感は全く無くなり、非常に柔らかい乗り心地になった。舗装路の継ぎ目の段差でもショックは圧倒的に小さくなっている。
1年点検では、通常の定期点検項目の他、エンジン・オイル、フィルターの交換のみを行った。ブレーキパッドは、フロントがまだ9mm残存していたので、交換せず。リヤは、ブレーキの鳴きを止める改良製品に交換するキャンペーンということで、無償交換となった。因みに残存警告灯が点くのは3mm程度だそうである。費用は、総計10万8774円となったが、この内、タイヤの脱着工賃及びバルブ代が2万3850円なので、点検費用のみでは8万4794円である。作業期間は、2日間であった。
さて、ポルシェセンター目黒のショールームで、ダックテール付きの991を発見した。私が購入した時は、こんなパーツは無かった記憶があるので、いささか驚いたが、訊いてみると、つい先日、オプションパーツで追加になったのだという。ダックテールといえば、あの73カレラRSに装備されていたもので、我々の世代にはグサリと刺さるアイテムだ。しかも、材質はFRPなので軽く魅力的だと思ったが、これから装着するとなると、フロントのエア・スポイラーとセットで約100万円掛かる、と聞いて断念した。因みに新車時のオプションでは73万6000円だそうである。一番カッコよいのは、911の50周年記念車にこのテールを装着することだが、まだ、僅か一年しか経っていないので、買い替えなどは有り得ないところだ。
(AUTOCAR No.125 2013年9月26日発売号掲載)
1年間の締め括りです
昨年の8月10日に納車されてから、丸1年間に亘り連載してきたこのレポートだが、区切りの良い今号をもってひとまず終了としたい。来月号からは、新たに、同じポルシェながらごく最近やはり新車で購入した、ケイマンSにバトンタッチをしたいと思う。レポートの書き手は、本誌でも試乗記を執筆している河村康彦さんである。
さて、1年間、ほぼ毎日乗り続けての感想は、というと、“時代の変化に対応して、911もモデルチェンジ毎に変貌してきているが、その本質は、50年前の誕生の時のスピリッツが脈々と流れている”ということに尽きる。では、その本質は何か、ということだが、大雑把にいえば、必要にして充分なサイズ、すなわち、無駄なスペースを削ぎ落とした、タイトなサイズのスポーツカーで、独特のテールがすぼまったスタイルを持ち、リアに水平対向エンジンを搭載し、クオリティはこの上なく上質で、性能も抜きん出ている、というようなことではないかと思う。この991になって、電動パワーステアリングになったり、ボディサイズがやや拡大されたり、といった変更があったが、それは、基本的に大きなデメリットとはならなかったと今、感じている。逆に、毎日乗っていて、いつも秀逸だと思ったのは改良されたPDKのシフトで、殆どショック無しに、アップもダウンも瞬時に行われるのは、実に気持ち良い。また、オプションで装着した、スポーツマフラーも、一度サウンドを聞いてしまうと病み付きになってしまい、アクセル・オフ時のボロボロというサウンドを聞きたいがために、必ずオンにして走っていた。オプションで選択した、スポーツステアリングは絶対にお勧めで、明らかに、コックピットの表情が違い、しかもパドルシフトの使い勝手は比較にならないほど良い。実際に使ってみて、失敗したと思ったのは、電動折り畳みのドアミラーで、まさか、これがオプションとは思わず、注文をし忘れてしまったのだが、パーキングに入れる際は、手で閉じなければならず、面倒である。オプションリストは詳細に検討する必要があると感じた次第だ。しかし、あれもこれもとオーダーし始めると、とんでもない金額になってしまうので、本当に必要かどうかの吟味は大切だ。
1年間乗ってみて、トラブルらしきものは無かったが、唯一冬場に、アイドリングストップをオンにしていた時、バッテリーの電圧低下により、再始動が出来なくなったことがあったぐらいだ。これも、アイドリングストップをオフにしたら、問題は無くなり、その後は発生していない。今年の夏は猛暑であったが、その中でも強力なエアコンのお陰で何ら問題なく過ごすことができた。
総走行距離は8月16日現在で18334kmとなった。仕事柄、他のクルマも乗りながら、ということを考えれば、多いほうだと思う。この間のハイオクガソリンの消費は2751.53ℓで、総平均燃費は6.65km/ℓとなった。昨今は燃費競争での真っ只中で、テレビをつければどのクルマもリッター30km/ℓなどと連呼している。そんな中で、この燃費をどう思うかは、なかなか難しいが、昔に比べれば、このカレラSでも随分と良くなっており、直前に1年間乗っていたパナメーラ4Sの平均燃費が確か5km台だったことからもけっして悪いわけではないと思う(尤も、現在のパナメーラ4SはエンジンがV6ターボに換わり、更に燃費は向上しているはずだが)。要は、燃費を気にして、ポルシェを所有しながらロクにエンジンを回さずに走る、などと言うことはナンセンス以外の何物でもないのだ。盛大にエンジンを回して大いにパフォーマンスを楽しんでこそ、ポルシェライフが満喫できる、というものである。
先日、この号の特集で、911カレラカブリオレに乗ってみたが、カレラとカレラSの予想以上の差に驚いた。一時期は、911におけるグレードの差異がそれほど大きくない時期もあったが、今回は、ナローの頃のTとSの差ほどの大きな違いがあり、ボクスターともエンジンを共用するカレラは全体に軽快なフィーリングだが、カレラSの方は内装の素材なども含め、全てに重厚な感じがする。どちらがお勧めかは難しいところだが、予算があれば、カレラSを買うことをお勧めする。
1年間乗ってみての結論は、言い古された言葉だが、最新のポルシェは最良のポルシェ、ということを再認識させられたのである。
(AUTOCAR No.126 2013年10月26日発売号掲載)