V8に代わる独自性を得るか? メルセデスAMG C63へ助手席試乗 直4ターボのPHEV
公開 : 2022.10.08 08:25
V8エンジンを捨てたAMG C63はどのように変化するのか。英国編集部がひと足先に、試作車の助手席同乗で確かめました。
V8エンジンのサウンドは響かない
2.0L直列4気筒ターボ・ハイブリッドは、伝統の大排気量V型8気筒の後を担うことができるのだろうか。始めに触れておこう。ウエストゲートのホイッスルを強調し、人工的なサウンドを重ね合わせても、V8エンジンほど特別な音響は得ていない。
メルセデスAMGの技術者も、それは理解しているようだ。「わたしたちのお客様は、V8エンジンのサウンドも理由に選んでいます。この4気筒エンジンには、もはやそのサウンドは備わりません」
同社のプロダクトマネージャー、アルネ・ウィーブキング氏は臆することなく話す。そして続ける。
「今は移行期です。将来のどこかのタイミングで、V8エンジンが完全に姿を消すという現実は、多くの人が知っていることだと思います。この直列4気筒は、今の世界で高性能モデルがどうあるべきか、われわれが導き出した解釈です」
実際のところ、C63の車内ではいい音が聞こえる。制限がなくなるレース・モードを選択すると、合成されたサウンドではあるものの、驚くほど聴き応えがある。
V8エンジンの響きを模しているわけではない。キャブレターで呼吸するツインカムV6エンジンのようでもあり、水平対向4気筒のような唸りも混ざる。そこに、ブースト圧が抜ける悲鳴が重なる。
BMW M3の直列6気筒ツインターボが放つサウンドと聴き比べても、遜色ないだろう。とはいえ、自然吸気のE46型BMW M3 CSLが放つサウンドとも、だいぶ違うが。
積極的に投資を行ったサスペンション
新しいAMG C63は、重要な個性といえたV8エンジンを失った。別の部分で独自性を強める必要がある。
今回ステアリングホイールを握ったのは、AMGで動的能力の開発責任を負う技術者、レネ・シュチェペック氏。EVモードで静かにプロトタイプのC63を発進させた。
AMGの性能試験を行うテストコースは滑らか。それでも、車内の静寂性は素晴らしい。マンホールを通過した際の、20インチホイールのマナーの良さにも驚かされた。
シュチェペックは、C63のダンパーに自信を匂わせる。「サスペンションは、わたしたちが積極的に投資を行った部分です。優れたダンパーを得ることで、優れたクルマの個性を得ることができるのですから」
「クルマに対して抱ける信頼感や、コーナリング中の気持ち良さには、前後アクスルからのフィードバックが重要になります。これは高性能ブランドとして、電動化という新しい時代で失うことのできないポイントの1つになります」
静かなEVモードの走りを充分に味わってから、エンジンが始動。レーススタートという名前が与えられた、ローンチコントロールを試してもらう。
0-100km/h加速を3.4秒でこなすが、最近ではこの数字に驚くことはないかもしれない。しかし、新しいC63は数字以上に加速が激しい。スリップ音1つたてず、猛然と速度を乗せていく。