V8に代わる独自性を得るか? メルセデスAMG C63へ助手席試乗 直4ターボのPHEV

公開 : 2022.10.08 08:25

可変の四輪駆動と四輪操舵を搭載

カーブが連続する区間では、四輪駆動と四輪操舵の2つの可変システムが、明確にクルマの挙動へ影響を及ぼしている。ドライブモードによる変化の幅も広いようだ。

コンフォート・モードではエンジンが静かに回り、4気筒らしい音質になる。駆動用モーターは、本来の出力の25%までしかアシストを加えないという。

メルセデスAMG C63 プロトタイプ
メルセデスAMG C63 プロトタイプ

至って安定してコーナーを抜けていく。走行時のバランスは、フロントタイヤが主軸のように感じられた。

スポーツ・モードへ切り替えると、駆動用モーターは65%まで力を開放する。動力性能が明確に高まり、リアタイヤ側の存在感が強くなるものの、上品さは失わない。

スポーツ+モードでは、駆動用モーターは本来の80%まで力を発揮する。このモードのまま下り坂のコーナーへ進んだところで、シュチェペックが四輪ドリフトを披露してくれた。

レース・モードは期待通り。エンジン音はボリュームを増し、約2.1tもあるサルーンを機敏に走らせるため、多くの技術が背後で働いていることを助手席でも感じる。四輪操舵システムは、コーナリング中にボディの向きを巧みに制御する。

リアタイヤは、アクセルペダルを深く踏み込むとサイドスライド。だが同時にフロントタイヤにも不足ないトルクが伝わっているため、深いドリフトアングルへ転じていくことはなかった。

システムの主張が薄いPHEV

新しいAMG C63はプラグイン・ハイブリッド(PHEV)ではあるが、そのシステムの主張はかなり薄い。同社の技術者は、可能な限りリニアで自然な印象のパワートレインにするべく、開発を進めてきたそうだ。

一般的なPHEVとは異なり、100kWもの回生能力を活かし、駆動用バッテリーの充電量を高く保つことも可能だという。ブースト・モードを選択すれば、バッテリー残量を維持させるため、駆動用モーターの出力を僅かに抑えることもできる。

メルセデスAMG C63 プロトタイプ
メルセデスAMG C63 プロトタイプ

モードに関わらず、駆動用バッテリーの充電量は驚くほど激しく変化していた。瞬間瞬間の走りに応じて。

メルセデスAMGが新技術を武器として捉え、強みに変換しようとした結果には唸らされる。しかし、実際にC63のステアリングホイールを握るまで、本当にリニアで自然な印象なのか、断言することはできない。

今回は助手席試乗に留まり、アッファルターバッハが手掛けた直列4気筒ターボのPHEVがどんな走りを示すのか、興味は尽きない。幸いにも、2022年中には実際に試乗する機会を得られそうだ。その時に、改めてお伝えさせていただきたい。

記事に関わった人々

  • イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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