至極のV10を積んだスーパーサルーン BMW M5(E60型) 英国版中古車ガイド

公開 : 2022.10.15 20:25

ADASは皆無だがデザインと性能は色褪せず

快適なクルーザーとしてこの世代のM5を手に入れたいと思っていて、燃費や320kmほどしかない航続距離、信頼性の問題を気にしないというのなら、忠告すべきはスタンダードな5シリーズが備えている運転支援システムが用意されていない、という点だろう。

アダプティブクルーズコントロールはおろか、車線逸脱ウォーニングも、自動緊急ブレーキも、M5には装備されていない。おそらく、この巨大で特殊なエンジンが要求する吸気と冷却を適えるべくエアインテークを最大化するには、前方センサーが邪魔だったのだろう。とりわけ、330km/hの最高速度を実現することを優先して考えるなら、開口部の一部をふさぐ機器など装着したくはなかったはずだ。

今見ても美しいスタイリング。運転支援システムは皆無だが、そんなものが必要なドライバーはM5の運転席に似合わない。
今見ても美しいスタイリング。運転支援システムは皆無だが、そんなものが必要なドライバーはM5の運転席に似合わない。

また、アップデート後であっても、SMGのスムースさと信頼性は文句なし、とは言い難い。クラッチの寿命を伸ばし、変速タイムやギクシャクした動きを改善するには、変速時にスロットルペダルを少し戻すのがコツだ。

いっぽうで、そこはやはりBMW、このM5はドライビングが最高に楽しいクルマだ。しかも、技術の粋を集めたエンジンや、フルステンレスのエグゾーストも堪能できる。もちろん、507psのフルパワーを叩き出すP500Sモードも味わおう。スタンダードな状態では400psにとどまるのだから。

そうそう、せっかくだからスタイリングも愛でたいところだ。クリス・バングル率いるティームで、ダビデ・アルカンジェリが描き出したデザインは、今見ても十分にモダンで、パフォーマンスと同じく現在でも通用するものだ。

新車時代のAUTOCARの評価は

このクルマのエンジンは、そのスペックを語るだけで2号にわたって記事が書けるだろうと思わされた。

これぞ、エンジニアの夢であり、これまでに生産された中でも最高の部類に入るロードカーのエンジンだ。(2004年9月14日)

その話題だけで紙幅が尽きてしまいそうなほど、S85B50ユニットは魅力的なエンジンだ。
その話題だけで紙幅が尽きてしまいそうなほど、S85B50ユニットは魅力的なエンジンだ。

専門家の意見を聞いてみる

ジョン・シモンズ
「このM5が心から好きですが、とりわけ、5000rpmからが本当にイキイキしはじめる、高回転型のみごとなエンジンがポイントですね。エグゾーストを改良すれば、もっといい音が出るとは思います。あと、ローンチコントロールはあまり役に立ちませんが、それ以外はすばらしくファンなクルマなので、多少の欠点など許せてしまいますよ。ただ、整備記録は念入りにチェックしてください。修理するとなると、どれも高くつきますから。とくに、クランクシャフトのビッグエンドベアリングは要注意です。そうそう、燃費はよくて6km/Lといったところです」。

みごとなクルマであることは間違いない。ただし、修理の必要が出た場合には、かなりの出費を覚悟しなくてはならないのもまた事実だ。
みごとなクルマであることは間違いない。ただし、修理の必要が出た場合には、かなりの出費を覚悟しなくてはならないのもまた事実だ。

記事に関わった人々

  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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