至極のV10を積んだスーパーサルーン BMW M5(E60型) 英国版中古車ガイド
公開 : 2022.10.15 20:25
購入時に気をつけたいポイント
エンジン
このM5の信頼性に関する悪評の元凶になりがちなコンロッドベアリングは、オイル交換でケチるとトラブルが起きやすい。VANOSの警告灯には注意しよう。原因はおそらくユニットそのものではなく、オイルパンからヘッドへ引かれたホースか、1600ポンド(約26万円)のポンプに起因する油圧に関するものだ。
オーナーに、これまで使ってきたオイルの銘柄を尋ねると、口を揃えてカストロール・エッジの10W60と答えるはずだ。消費量は、1600kmあたり1Lくらい。スロットルのアクチュエーターなど、修理費がかさむところはしっかりチェックして、問題があれば購入前に交渉しよう。
トランスミッション
後期型であっても、クラッチは8万km程度で交換が必要となり、費用は3000ポンド(約50万円)ほど。市街地ではギクシャクするが、速度が上がればスムースになる。試乗の際にP500Sモードを試すのを渋られたら、クラッチに問題ありと疑おう。MTに換装された個体であれば、ギアボックスの出自と、どこで作業したのかは確認したい。
リアディファレンシャル
低速での取り回し時にノイズが大きいのは止むを得ないが、過剰な音やガタつき、摩擦が感じられたら、すぐに交換が必要になるシグナルだと思ったほうがいい。オイル漏れだけなら、30ポンド(約5000円)程度のシールの交換のみで済むはずだ。
ブレーキ
ディスクは1セット1800ポンド(約30万円)で、5万km前後で交換が必要。外周の縁をチェックしよう。また、長くハードにブレーキングした際にホイールの振れが出たら、摩耗による交換の目安だ。
ステアリングとサスペンション
おおむねタフだが、ステアリングコラムのバイブレーションやゴツゴツする感触があったら、コントロールアームの摩耗が疑われる。オプションのEDCサスペンションは信頼性が高いものの、ダンパー交換となると1本あたり600ポンド(約10万円)の部品代がかかる。
iドライブ
BMWのロゴが出た起動ページのままフリーズしたら、ハードディスクの問題が疑われる。システム交換なら700ポンド(約12万円)。ECUとコンピューターを最新のソフトウェアにアップデートすると解決する場合もある。
知っておくべきこと
2009年、BMWはM5の25周年にあたってM5 CSLの設定を示唆したが、結局、市販化は叶わなかった。計画では、排気量を5.5Lに拡大して588ps/55.3kg−mを発生し、トランスミッションはSMGからE92型M3のDCTに換装されるはずだった。
さらに、リアシートや遮音材の多くを取り去り、ルーフはカーボンパネルに。100kgの軽量化を予定していたので、実現すれば現行M4と同等の重量になり、0−100km/h加速は3秒台に入っていただろう。ぜひとも乗ってみたかったが、決してそれが叶えられることのないBMWのひとつだ。
英国ではいくら払うべき?
1万5000ポンド(約248万円)〜1万6999ポンド(約280万円)
フェイスリフト前の、走行距離が16万km以上の過走行車ばかり。おそらく、すぐにメンテナンスが必要になる。
1万7000ポンド(約281万円)〜1万9999ポンド(約330万円)
もっともタマ数が揃っている価格帯。年式の幅は広いが、走行距離は11万kmを超えるものばかり。整備記録がしっかりしていて、主なところには手が入っているクルマが多い。
2万ポンド(約330万円)~2万9999ポンド(約495万円)
より新しめのクルマが増え、ツーリングもぼちぼち見つかりはじめる。走行距離は8万km前後で、BMWやMの専門店における整備履歴がフルに残り、オーナーの数も少なめとなる。
3万ポンド(約495万円)以上
新車に近く、走行距離の短いセダンが多くなり、ワンオーナー車もちらほら。ツーリングの選択肢も増える。
英国で掘り出し物を発見
BMW M5ツーリング(E61型) 登録:2007年 走行距離:9万5000km 価格:4万4495ポンド(約734万円)
内外装ともブラックのツーリングで、低走行の3オーナー車。ロッドベアリングやオイルクーラー、エンジンマウント、VANOSの高圧ラインは、オイルと合わせて9万kmで交換済みだという。さらに注目すべきは、欧州ではこれ1台のみだという、MTに換装されたツーリングであるということだ。