ロータス仕様にV6エンジン版も フォード・コルティナ Mk1からMk5まで5世代比較 後編
公開 : 2022.10.23 07:06
新型シエラのつなぎ役といえたMk5
コルティナ Mk4の寿命は2年と短かった。その頃、フォードは1982年に発売されるシエラの開発をスタートさせており、つなぎ役としてMk4へ大幅に改良を加えたMk5を1979年8月から提供した。
ルーフラインを変更し、グラスエリアを拡大。フロントグリルを改め、装備が見直され、充分に考え抜かれたバージョンアップといえた。モデル末期の1982年には、スポーツホイールと上質な内装、電動ドアミラーなどを装備したクルセイダーも追加されている。
見た目はスマートで、後輪駆動で、フォード自慢の高音質プッシュボタン・ラジオも採用。当時の企業の貸与車両を管理していた人には、ベターなチョイスに映ったことだろう。実際、クルセイダーの人気は低くなく、3万台以上をラインオフしている。
最後まで英国市民の支持を集めたコルティナは、1982年7月22日までに427万9079台が生産された。新型のシエラは同年9月に販売が始まったものの、保守的な層からはMk5の在庫へ注文が寄せられたという。
ただし、晩年には在庫処分として3割引きで販売されており、コルティナ・クルセイダーはシエラ 1.6Lより手頃でもあった。レナード・ギルダーシルバー氏がオーナーの、ライトブルーのMk5もそうして売られたのかもしれない。
市民の暮らしに浸透していた各世代
「2.0Lエンジンは、オートマティックとの相性が良いですね。とても優れた高速クルーザーです。スーパーマーケットやガソリンスタンドでは、懐かしんで多くの人が集まってきます。出発するのが大変な時もあるほどです」。とギルダーシルバーが笑顔で話す。
コルティナ・クルセイダーが特定の年齢層に響く理由は、何といっても1980年代という時代を色濃く反映しているからだろう。ロックバンド、アダム&ジ・アンツの楽曲がラジオから聞こえてきそうだ。
BBA 18Yのナンバーで登録されたMk5は、ベロアのインテリアから巨大なグローブボックスまで、当時のファミリーカーの匂いで満ちている。ブルーのボディにあしらわれたレッドとホワイトのピンストライプは、現代の駐車場でも不足ない存在感を放つはず。
日本における日産ブルーバードやトヨタ・カリーナのような、英国ファミリーカーの定番といえたフォード・コルティナ。市民の暮らしに浸透していた様子が、Mk1からMk5まで各世代ごとに感じ取れる。
ロックバンドのトムロビンソン・バンドは、レーシング・トリムで仕立てたグレーのコルティナを所有する喜びを曲にした。俳優のアレクセイ・セイル氏は、「プライベート・ライフ・オブ・フォード・コルティナ」という映画に出演。Mk1を讃えた。
われわれに最適なフォードとして、妥当な内容で妥当な時期にコルティナは提供されてきた。今回揃った5世代を通じ、その事実を再確認することになった。当時のライバルメーカーは、さぞかし悔しがっていたことだろう。
協力:フライング・クラブ・コニントン、アフォーダブル・クラシック社