見て良し、走って良し フィアット500e 長期テスト(最終回) EVを身近な存在に

公開 : 2022.10.22 09:45

かわいいカタチのフィアット500が純EVに。日本導入も始まった最新ハッチバックを、長期テストで検証します。

積算5310km 深く感心する運転の楽しさ

普段のトム・モーガンにかわって、今回はわたし、ジャック・ウォリックが運転させてもらった。フィアット500eの運転の楽しさに、深く感心してしまった。

ただし、身長が185cmほどあり頭が天井に当たってしまうため、自分で選ぶならカブリオレにするだろう。運転する楽しさも広がる。ボディカラーは英国では600ポンド(約10万円)のオプション、ローズゴールドにすると思う。

フィアット500e 42kWh アイコン(英国仕様)
フィアット500e 42kWh アイコン(英国仕様)

積算5586km BEVを身近な存在にした500e

これまで数カ月に渡ってフィアット500eの長期テストを進めてきたが、今回で最終回。優れた第一印象は、最後まで霞むことはなかったと思う。

内燃エンジンの現行のフィアット500が登場したのは、2007年。2021年のイタリアでの販売状況を確認すると、500eを含む500シリーズはパンダに次ぐフィアットの人気モデルにランクインしている。

フィアット500e 42kWh アイコン(英国仕様)
フィアット500e 42kWh アイコン(英国仕様)

同社はオリジナルのイメージを変えることなく、巧みに新しいバッテリーEV(BEV)をまとめ上げた。同じくレトロなデザインのミニ・エレクトリックより、BEVを身近な存在にしたといっていい。

500eのサイズはひと回り大きくなったとはいえ、入り組んだイタリアの市街地をすり抜け、狭い路地に問題なく駐車できるほど小さい。若い家族や老夫婦が、ファミリーカーとするのに不足ない車内空間がある。ホンダeより荷室も広い。

筆者も運転してすぐに、内燃エンジン版の特長が受け継がれていると実感した。車内にあしらわれた、Made in Turin(トリノ製)のロゴはチャーミング。スタイリングも見事にリ・デザインされており、寸法は必要なだけ大きくなっている。

開放的で近未来的なインテリア

ドライバーズシートの座面は少々筆者には高めなものの、内燃エンジン版と比べれば、車内空間は大きく改善している。フロア下に駆動用バッテリーが敷き詰められていても。

コンパクトなサイズでも、車内に押し込められたような感覚は受けない。軽量な新素材が、近未来的な乗り物感の雰囲気を醸し出している。唯一残念といえたのが、右ハンドル車のペダルレイアウト。足元が狭いのだ。

フィアット500e 42kWh アイコン(英国仕様)
フィアット500e 42kWh アイコン(英国仕様)

アバルト595との比較試乗では、インテリアの進化ぶりをつぶさに確認できた。インフォテインメント・システムが、マセラティのスーパーカー、MC20と共有するという発見もあった。

アンドロイド・オートとアップル・カープレイには無線で対応。500eの価格帯では贅沢装備といえるものだが、独自のシステムも高機能で、あえてスマートフォンを起動する必要性は感じなかった。

ただし、システムのフリーズも何度か起きている。リセットで解決したものの、バグも幾つか含まれていた。距離の単位がマイルからキロメートルへリセットされたり、ドアのロック時にクラクションが鳴るなど、小さな内容ではあったが。

歩行者向けの車両接近音は個性的。イタリア人映画監督、フェデリコ・フェリーニ氏の作品を想起させるサウンドで、魅力をプラスしている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    トム・モーガン・フリーランダー

    Tom Morgan-Freelander

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

長期テスト フィアット500eの前後関係

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