スバル・クロストレック試乗 「見た目<性能」のフルモデルチェンジ 穏やかさ増した走りの肌触り

公開 : 2022.10.17 11:00

巧みな抑制 振動騒音&走りが穏やかに 

先代モデルのハンドリングはスバル4WD車群では穏健派。

SUV系は切れ味よりも挙動の滑らかさや安心感を重視した設計になっているが、XVはとくにその感が強く、後継となるクロストレックにも引き継がれている。

新型スバル・クロストレックは、走りの肌触りが随分と良くなっていると筆者。
新型スバル・クロストレックは、走りの肌触りが随分と良くなっていると筆者。    宮澤佳久

ただし、鈍重とかルーズというわけではない。

SUVとしては低全高/低重心/低アイポイントの長所をいかし、穏やかながら従順なラインコントロール性を示す。

加減速による方向性の乱れも少なく、速度制御によるラインコントロールも容易。あれこれ小技を労せずとも速度と舵角に応じたコーナリングラインを描く。

装着タイヤはオールシーズン(M+S)だが、急加減速を伴うようなコーナリングにも不安はない。

フットワークの改善点は乗り心地。細かな振動の抑制が巧みである。

ひび割れや補修跡などの細かな凹凸からの振動の遮断がいい。

正しくは「遮断」というよりは「均し」という感じなのだが、当たりが穏やかさは速度感などの圧迫感も減少する。

また、ロードノイズなどのサスや骨格から伝わる振動騒音も減少し、耳当たりも穏やか。

前項で述べたパワートレインまわりの騒音とあわせて走りの質感向上に役立っている。

加速性能にしても操安性にしても大きく変わっていないのに、走りの肌触りが随分と良くなっている。

引き締まった挙動望むなら「FF車」

先代から継承したハードが多いせいか、FMCとしてはインパクトが薄いのだが、その中で1番印象に残ったのがFF車の設定だ。

姉妹車ともいえるインプレッサに設定されているのだから、クロストレックにあっても不思議ではないが、4WD推しのスバル、しかもSUVならば「意外」以外の何物でもない。もちろん、先代は4WD車のみの構成である。

新型スバル・クロストレックは4WDとFFの設定がある。
新型スバル・クロストレックは4WDとFFの設定がある。    宮澤佳久

4WD車に対しては価格と燃費の経済仕様と考えることも可能だが、それだけですますのは些か早計である。

1つの視点はインプレッサFFのステップアップモデル。4WDの必要性はないがSUVの雰囲気が好きなユーザーを対象とするにはちょうどいい。

もう1つはドライブフィール。

基本的な特性は前項で述べた4WD車と変わらないのだが、フットワークに多少引き締まった印象を受けた。

ハンドリングの方向性は同じ。過敏な反応を抑えて操舵や加減速の修正少なくすませる素直なタイプ。

コーナーの立ち上がりで大きめの駆動力を掛けてもよく粘る。前後サスとも荷重変動を抑えるようによく踏ん張っている。

だからといってスポーツ仕様というほど締まっているわけではないのだが、小気味よさや締まった挙動を望むなら4WD車よりFF車のほうが好まれそうである。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 撮影

    宮澤佳久

    Yoshihisa Miyazawa

    1963年生まれ。日大芸術学部写真学科を卒業後、スタジオ、個人写真家の助手を経て、1989年に独立。人物撮影を中心に、雑誌/広告/カタログ/ウェブ媒体などで撮影。大のクルマ好きでありながら、仕事柄、荷物が多く積める実用車ばかり乗り継いできた。遅咲きデビューの自動車専門誌。多様な被写体を撮ってきた経験を活かしつつ、老体に鞭を打ち日々奮闘中。

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