ゴルフGTIと競ったホットハッチ フォード・エスコート XR3/XR3i 英国版クラシック・ガイド 後編

公開 : 2022.10.30 07:06

購入時に気をつけたいポイント

エンジン

油圧タペットを備えたオーバーヘッドカム・エンジンは、Mk3から導入された新ユニット。耐久性は高いようだ。初期のキャブレターは経年劣化するものの、XR3iには信頼性の高いボッシュ社の燃料インジェクションが組まれていた。

1990年からはフォード独自のインジェクションへ交代するが、構造は複雑で湿気などが原因で内部が腐食し、不具合を招く。大きなバッテリーに交換すると、スターター・モーターなどの負荷を減らせる。

ボディとシャシー

フォード・エスコート XR3/XR3i(Mk3/1980〜1986年/英国仕様)
フォード・エスコート XR3/XR3i(Mk3/1980〜1986年/英国仕様)

ホットハッチが故に、事故歴を持つ例は少なくない。フェンダーの付け根やトランクのフロアなどに、変形の跡や塗装の継ぎ目がないか確認する。

フロントバンパーの裏側、バンパーのマウント部分などは錆びがち。フロントガラスやリアガラスのラバーシール部分、ルーフのエッジやサンルーフまわり、フロントフェンダーも錆びやすい。ヘッドライトの内側が腐食することも。

それ以外にも、ヒーターの裏側にヒューズボックスの下、サイドシル、シャシーレール、リアフェンダー、給油口、ドアの下側、荷室のフロアなどが弱点。バッテリートレイ下の腐食で穴が空き、フロアに雨水が侵入することもある。

カブリオレの場合は、ソフトトップの構造が複雑。交換部品は安くない。

インテリアと電装系

内装はヘタりやすく、きれいな交換部品は出てきにくい。ダッシュボードは割れがち。シートやドアの内張りも摩耗しやすい。

すべての車載装備が動くか確かめる。パワーウインドウは不調になりやすい。Mk3のエスコートの場合は、ヒューズボックス自体の不調が珍しくない。

ブレーキとサスペンション、トランスミッション

5速マニュアルは1982年から。XR3の能力を大きく高め、燃費も向上させている。シンクロメッシュは弱い。不自然なノイズがないか確かめたい。

サスペンションブッシュやドライブシャフトブーツ、アルミホイールのヒビ、ハブベアリングなどの異音や振動がないか、試乗で確かめたい。ブレーキキャリパーは長期乗らないでいると固着しがち。

フォード・エスコート XR3/XR3iのまとめ

現在まで生き抜いてきたMk3のエスコートは、近年まで放置されてきた例が多い。ビッグ・マイナーチェンジ版のMk4でも同様。状態の良いクルマは価格が高騰しつつある。

カブリオレはボディシェルが緩く、スポーティな走りの魅力では劣るものの、良好な生存数は多い。価格もハッチバックより手頃。英国ではファンによるネットワークが維持する上で大きな助けになる。

フォード・エスコート XR3/XR3i(Mk3/1980〜1986年/英国仕様)
フォード・エスコート XR3/XR3i(Mk3/1980〜1986年/英国仕様)

入手困難な部品もあるため、可能な限り状態の良いエスコートを選びたいところ。下手な改造車や長く野ざらしだったクルマは、その後の修理や維持で悪夢を招くことも。

良いトコロ

モダンなスタイリング。優れた実用性に楽しい走り。まだ価格は高すぎず、多くの部品が入手可能な状態にある。信頼性も高い。

良くないトコロ

ボディは錆びやすい。手荒に乗られてきた例も少なくなく、修理へ車両代以上の出費が必要になることも。内装のパネル、特に装飾トリム類は入手が難しい。

フォード・エスコート XR3/XR3i(Mk3・Mk4/1980〜1990年/英国仕様)のスペック

英国価格:8438ポンド(1987年時)
生産台数:約15万台
全長:3970mm
全幅:1590mm
全高:1335mm
最高速度:178-186km/h
0-97km/h加速:8.6〜9.9秒
燃費:6.9-13.1km/L
CO2排出量:−
車両重量:901-980kg
パワートレイン:直列4気筒1596cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:97ps/6000rpm-109ps/6000rpm
最大トルク:13.4kg-m/4000rpm-14.0kg-m/4800rpm
ギアボックス:4速・5速マニュアル

記事に関わった人々

  • 執筆

    マルコム・マッケイ

    Malcolm Mckay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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