A110並みの馬力重量 カム・マヌファクトゥア912cへ試乗 750kgに170psのフラット4

公開 : 2022.11.01 08:25

4気筒のポルシェ912を、750kgまで減量しレストモッド。独自性の高さと、運転の楽しさを英国編集部は評価します。

4気筒のポルシェ912がベース

今回は、普段とは違うポルシェのレストモッドをご紹介しよう。ハンガリー・ブダペストでチューニングを手掛けるミクロス・カズメール氏は、ベース車としてポルシェ912を選んでいる。リアアクスルの後方に、水平対向4気筒エンジンを積んだポルシェだ。

オリジナルの912は、初代ポルシェといえる356の後継モデルとして1965年から1969年にかけて作られた。水平対向6気筒エンジンを積んだ新型911の、エントリーグレードという位置づけにあった。

カム・マヌファクトゥア912c(欧州仕様)
カム・マヌファクトゥア912c(欧州仕様)

実際、高価な911より多く売れた。価格を抑えるため車載装備の一部が省かれ、エンジンも2気筒少なくコンパクトで、911より車重は軽かった。リア寄りの重心バランスが改善し、燃費も優れていた。

ポルシェは912を3万台近く生産している。良いポルシェだと思う。カズメールがカム・マヌファクトゥアというブランドを立ち上げ、レストモッドの対象に選ぶほど。

試乗したクルマは彼が初めて仕上げた1台で、プロトタイプといえる状態にあった。名前は912cという。2023年の初めには、本格的な生産体制に移るそうだ。既にオーダーした人は、その1年後から完成車を受け取れるという。

カズメールは、クラシックなポルシェとレンジローバーの大ファン。そんな彼のアイデアを、ひと足先に筆者が楽しませていただいた。

入念な軽量化で車重は750kg

レストモッドの出発点は、入念な軽量化。ボディパネルはボンネットにエンジンリッド、フロントフェンダー、ドアがカーボンファイバー製へ置き換えられる。内側にある細かな部材も。

オリジナルのスチール製ボディシェルは、サスペンションの取り付け部分を中心に強化される。ノーマルの912の車重は950kgと重くないが、カム・マヌファクトゥアの912cは750kgまで減量している。エアコンを搭載し、ガソリンが満タンの状態で。

カム・マヌファクトゥア912c(欧州仕様)
カム・マヌファクトゥア912c(欧州仕様)

カズメールは、実際に走り込んで燃料タンクが空になったら、700kgを切るだろうと話す。現代の感覚では驚くほど軽い。

ボディパネルのフィッティングはバッチリ。仕上がりは極めて美しい。ヘッドライトなどがLEDに交換されていないため、一見するとオリジナルのままに勘違いするほど。

車内にはカーボン製バケットシートが載り、ダッシュボードの化粧パネルもカーボン製。パネル類は、カーボンの織り目を見せることも、当時のクルマのようにクラシカルにすることも可能だという。1960年代や1970年代のレーシングカー風を理想としている。

アルミホイールはオリジナルと異なるデザインだが、お好みで選べる。タイヤはヨコハマのAD08RS。15インチでフロントが195/55、リアが205/50と控えめながら、サーキットも許容するアイテムだ。

お値段は、ベース車両と英国での税金などを含めて、30万ポンド(約4950万円)から。これより仕上がりが良くないレストモッドで、より高い例を筆者は知っている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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