EV24時間チャレンジ ポルシェ・タイカンで行く欧州14か国弾丸ツアー オランダ−セルビア1900km

公開 : 2022.10.22 20:25

フランスからドイツ、そしてスイスへ

タイカンの正確な航続距離表示は、巡航速度を上げようという自信をもたらした。われわれにとって速度を増すというのは事実上、アフターバーナーを点火するというのと同じような意味だ。午後9時1分にライン川を渡ると、アウトバーンの速度無制限区間まで長くはかからない。速度計の表示は238km/h。タイカンの公称最高速度を8km/hほど上回っている。

おかげで、遅れを20分ほど取り返せた。さらに、マールベルクのイオニティは、充電がすばらしく速かった。オーコンクールとは違って、4基の充電器はすべて空いていたので、250kWほどの充電ピークが出た。

充電は、自動車メーカー数社の合弁会社であるイオニティが展開するチャージャーで行った。
充電は、自動車メーカー数社の合弁会社であるイオニティが展開するチャージャーで行った。    JOHN BRADSHAW

30分後には、充電量は90%まで回復。その間に人間さまのほうはコーヒーとジャンクフードを胃袋に詰め込んで準備万端。6つめの国、スイスへいざ向かおう。

スイス、リヒテンシュタイン、オーストリアからイタリアへ

リンダウで、タイカンを95%まで充電したのは、このあと320kmほどのセクションに、高い峠が待ち受けているからだ。オーストリア−イタリア国境のブレンナー峠である。そしてまもなく、この余分に充電したことのありがたみを知ることになる。

というのも、いったんリヒテンシュタイン公国に入ると、10分ほどで通過する小国とはいえ、タイトで曲がりくねり、路面がうねったアルプスの山道が電力を激しく消費させたからだ。午前3時25分にイタリア入りしたとき、バッテリー残量は10%を下回っていた。

充電器の最大性能が使えれば、コーヒー1杯飲む間にチャージは完了する。
充電器の最大性能が使えれば、コーヒー1杯飲む間にチャージは完了する。    JOHN BRADSHAW

それでも、ブレンナーでの充電では幸いにも、過去最高の262kWをマークしたので、長く足を止めずに済んだ。さらによかったのは、タイカン・クロスツーリスモを楽しめたことだ。アマルフィでの休暇から帰る友人が乗ってきたクルマで、彼はフィレンツェのグッチでショッピングし、夜遅くにハンブルクへ戻る途中だった。われわれとは違う暮らしぶりにため息は出たが。

イタリアから再びオーストリア、そしてスロヴェニアへ

北イタリアをかすめたわれわれは、南オーストリアへ。その道すがら、思い出していたのは2021年のロードテストのことだ。バッテリーEV初の満点を獲得したのがタイカンだった。並外れて精密で手応えのあるステアリング、驚くほどの安定感、さらに十分なフィールのあるブレーキを備え、アルプス山間の道を300km以上、それも音もなく駆け抜けるのはこの上なく楽しかった。

加えてこのスティントでは、スロヴェニアに向けての下りが含まれていたので、ほとんどの時間を出来のいいアダプティブ回生ブレーキシステムを用いたエネルギー回収に費やせたのもありがたかった。

下り坂が多ければ、エネルギーを節約できるだけではなく、回収することもできるのが、電動車の利点だ。
下り坂が多ければ、エネルギーを節約できるだけではなく、回収することもできるのが、電動車の利点だ。    JOHN BRADSHAW

ここでの利点はふたつ。ひとつは、巡航速度を最大化できたので、一晩で30分以上の時間を稼げたこと。もうひとつは、翌朝7時30分にスロヴェニアへ着いたとき、バッテリー残量が50%もあったこと。そのため、ラドヴリツァでの充電は30分とかからずに済んだ。疲れ果てた同乗者は、「この充電プロセスは、われわれのプランより容赦ない」と嘆いていたが。

ありがたいことに、次の充電ポイントもスロヴェニア国内で、130kmも走れば到着する。その目的地であるスメドニックに着いてみると、なかなかいいペースで走れたことに気がついた。スロベニアの国境警備隊は、われわれのパスポートをちらっと見ただけで通してくれて、ここまでの平均速度は予想のかなり上をいっていた。そこで、ひとつのアイデアが浮かんだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ニール・ウィン

    Neil Winn

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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