週内合意か ルノー、日産への出資比率引き下げ 「対等」でユーザーにはどのような変化が?
公開 : 2022.10.20 11:45
ルノーによる日産への出資比率引き下げは早ければ週内にも合意といわれています。対等がもたらすユーザーへの影響を解説します。
出資比率引き下げ 週内合意か
ルノーが日産の持株比率を15%に下げる合意が、早ければ週内にも成立する見通しが出てきた。
無論、まださらに時間を要する可能性もゼロではないだろうが、パリ・モーターショーを機にルノー・グループの経営陣に加え、PFA(2018年にフランス政府主導で設立されたプラットフォルム・オートモビルという国内自動車関連企業の水平的コンソーシアム)の会長で、大臣職経験者のリュック・シャテルに続いて、ブリュノ・ルメール経済・財務大臣やマクロン大統領も会場に姿を見せた以上、フランス側のコンセンサスはまとまりつつある。
フランス政府の課す条件としては、アライアンスの利益を守れるなら、の1点に集約される。
フランスの電動化戦略はEV化というより、外交上でアメリカを含む産油国のイニシアチブや影響力を逃れるための「化石燃料外し戦略」の色合いが強い。
とはいえその最初のステップはEV化とソフトウェア開発の推進で、ゼロエミッション・ヴィークルの割合が増えれば加速度的にカーボン・ニュートラルは達成できるはず、かつ排出権や循環型サービスといった派生ビジネスに先乗りできそうというヴィジョンだ。
目下、EVについては中国メーカーの進出が著しい以上、一刻も早くICE事業と切り離してEV専業の会社として、フランス国内に資本を投下して国産のEV開発と生産体制を立ち上げたい。
その資本の元手が、ルノーが今、手放すことを検討している日産の持株という訳だ。
買い戻すための資金を日産がどこから調達するかといえば、ブルームバーグによれば合意が得られ次第、日産は中国から資金を還流させる方針という。
加えて日産はルノーが51%以上の出資で立ち上げるとされるEV専業会社「アンペール(アンペア)」への参画を求められており、さらに15%の出資割合が取沙汰されている。
つまり買い戻し資金プラス、追い銭を預けて来ないといけない。
ルノー・グループは逆に、それを元手に国内に1万人の雇用創出をフランス政府に約束している。よってルノーの株価はむしろ上昇している。
ルノーと日産 対等のメリットは?
ルノーと日産の間で持株比率が対等になるメリットは、開発の独自性が増すことだろう。
それぞれの国策、つまりエネルギーやインフラ政策、市場需要の変化に対し、より適したクルマづくりができるということだ。
すでに既存のEVでも急速充電の規格が異なるとおり、V2Hのような住居への給電を含む充給電の双方向やり取りとなってくると、また共有化は難しくなるし、レベル4以上の自動運転化技術を含む制御やソフトウェア開発、個人情報の扱いについても、法整備とのマッチングやコンプライアンスが要る。
よってデメリットとして、欧州と日本、それぞれの保護主義化、市場のブロック化に繋がる危険もある。
とくにフランスのメーカーがステランティス・グループも含め、取り組んでいる循環型経済モデルは、バッテリーをはじめ回収とリサイクルによって使用済みプロダクトを原料にすることを前提とする以上、地産地消を各地域でオペレートする色合いが濃くなる。
つまり利便性は高いがローカルなEVが、洋の東西や南米、ともすればアフリカなどで開発されていく可能性だ。
だがすでに日産とルノーの間で新しいEV専用プラットフォームはアリアとメガーヌEテックで示されているとおり、工場の生産ラインの構築というインダストリアル・レベルで共有されている。
鉄やガラス、ゴム、プラスチックといった衝突安全基準に関わるようなハコもの周りの原料の購買、パーツやモジュールの共有化については、スケールメリットは相変わらず得られるだろう。
ただしセルを含むバッテリーの組み立てや調達、ソフトウェアや制御ノウハウの開発といったものは、すでにeパワーとEテックというそれぞれのハイブリッドの違いに見られるように、グローバル共有よりも仕向け地ごとに細分化されていくのだろう。