週内合意か ルノー、日産への出資比率引き下げ 「対等」でユーザーにはどのような変化が?

公開 : 2022.10.20 11:45

ユーザーにはどのような影響が?

これがユーザー目線でどういうことかといえば、四輪のジオメトリーや乗車した際の室内のサイズ感や操作系は似ていても、インフォテインメントやネットワーク経由による制御や情報サービスはまったく異なる可能性が出てきた、ということだ。

むしろ情報サービスやアプリ、インフォテインメントのインターフェイスについては、共有化できることがネットワークとしての強味を、ユーザーには利便性を発揮するはずだが、悪い意味で独立独歩になる可能性も出てきた。

ルノーは目下、ハイブリッド車「Eテック」の展開拡充を進行中
ルノーは目下、ハイブリッド車「Eテック」の展開拡充を進行中    神村聖

調達コストをグローバル化してCMF(コモン・モジュラー・ファミリー)と呼ばれるプラットフォームというかモジュール群を共有バスケット化した、カルロス・ゴーン時代の遺産を、新しいアライアンス体制の下で日仏それぞれのコンストラクターがどれだけいかせるか? そこが焦点ともいえる。

ハードウェアの調達コストのみがメリットで、ネットワーク自体にメリットがなければ、次々世代のEVプラットフォームは独自開発となってアライアンスは消滅するとも考えられる。

ICE側の事業については、ルノーは国外へのアウトソーシング、つまり中国のギーリー・グループと協業を模索している。

ルノー/ボルボの旧い提携関係を思い起させるところもあるが、シリンダースリーブ入りのエンジンブロックを共有していた時代ならいざ知らず、今は日産の知財権に多々引っかかるともいわれている。とくに多気筒エンジンのノウハウ、ハイブリッドの制御技術、表面加工のようなすり合わせ系が、中国側の求めるところだろう。

安易な譲歩は後々、アメリカ市場で日産の首を絞めることに繋がるであろうため、この点を日本政府が警戒していること。もしかするとちゃぶ台返し要素になりかねない可能性が海外では指摘されている。

いずれEV事業とICE事業のアジェンダを確定させたいルノーの意向と、悲願の独立を果たしたい日産の意向が、強く働いていることは確かだ。

日産の決算発表会が予定されている11月8日をXデーとして、三菱を含めてアライアンス3社による何かしらの発表セレモニーがおこなわれるという見通しもある。

ただしまだ、EV化による囲い込み的な保護主義やブロック化の不利益をユーザーが被らない可能性は、今のところ保証されていない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    南陽一浩

    Kazuhiro Nanyo

    1971年生まれ。慶応義塾大学文学部卒業。ネコ・パブリッシングを経てフリーに。2001年渡仏。ランス・シャンパーニュ・アルデンヌ大学で修士号取得。2005年パリに移る。おもに自動車やファッション/旅や食/美術関連で日仏独の雑誌に寄稿。2台のルノー5と505、エグザンティア等を乗り継ぎ、2014年に帰国。愛車はC5世代のA6。AJAJ会員。

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