屋根は開いた方がイイ フェラーリ296 GTSへ試乗 PHEVで830psのオープン・スーパーカー 後編

公開 : 2022.10.23 08:26

マラネロの新世代スーパーカー、296にオープンのGTSが登場。屋根が開くことで得る魅力を英国編集部は高く評価します。

特徴づける流暢な走りを生むシャシー

筆者はこれまで、フェラーリ296 GTBではアセットフィオラノ・パッケージが組まれたクルマしか運転した経験がなかった。これにはマルチマティックと呼ばれる、サーキット前提の本気で有能なダンパーが装備されている。

GTSでもアセットフィオラノは選択できるが、今回の試乗車にはノーマルのダンパーが組まれており、物足りないのではないかと想像していた。だが、それは間違いだった。ノーマルのダンパーでも、圧巻なほど洗練されている。

フェラーリ296 GTS(欧州仕様)
フェラーリ296 GTS(欧州仕様)

一般道で許されない速度域でなければ、姿勢制御は秀抜。ヒタヒタと安定性を保ちながら、靭やかな乗り心地を叶えている。公道との相性は抜群だ。他方、アセットフィオラノの場合は、凹凸が酷い区間で少し不安定になったことも事実ではある。

この姿勢制御が、フェラーリを特徴づける流暢な走りの素地を生み出す。296 GTSは、極めて機敏で落ち着きを失いにくい。ステアリングホイールやペダル、サスペンションが見事に調和している。タイヤの限界を超えても、自信を失うことなく操れる。

ただし、カーボンファイバー製タブシャシーで構成されるマクラーレンスパイダーほど、コーナー進入時の鋭いステアリングレスポンスや、前後タイヤの統一感は得ていない。そこまでシリアスではない。

操縦性の精度でいえば、クーペのGTBと比べて5%ほど落ちている可能性はある。旋回時にごく僅かな反応の遅れがあり、アンダーステア傾向が微かに強まっているように感じる。とはいえ、些細な違いでしかない。

非常にパワフルで洗練されたPHEV

プラグイン・ハイブリッド(PHEV)のパワートレインは、非常にパワフルで洗練されている。システム総合で830psの最高出力や、75.3kg-mの最大トルクの値は驚異的なものだが、それ以上にゾクゾクさせるのがエネルギーが生成される過程だ。

アクセルペダルを踏み込むと、166psの駆動用モーターが内燃エンジンの低回転域でのトルクを補完。息を呑むほどシャープな反応を引き出す。その敏感さは、想像以上。

フェラーリ296 GTS(欧州仕様)
フェラーリ296 GTS(欧州仕様)

仮に駆動用モーターがなくても、3.0L V6ツインターボ・エンジンは激しくレスポンシブな様子。フェラーリは、従来の自然吸気V8エンジンと比べて、回転上昇の鋭さは15%ほどしか劣らないと説明する。

ブースト圧の上昇も同様に鋭く、スムーズでリニアに8500rpmまで吹け上がる。タイヤのトラクション不足で、不意に水をさされることもない。ターボラグも皆無といえる。

ドライバーが望めば、ミシュラン・パイロットスポーツ4Sタイヤを自在に打ち負かすことも造作ない。不安を感じることなく。

事実、この296 GTSはフェラーリのテストコース、フィオラノ・サーキットを、260kgも軽い488 ピスタから0.3秒遅れで周回できるという。つまり、間違いなくサーキットも得意分野のオープントップ・ハイブリッド・スーパーカーといえる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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