クラシカルなボディに秘めたZ34 日産フェアレディZへ試乗 405psの3.0L V6ターボへ
公開 : 2022.10.25 08:25 更新 : 2022.10.26 12:04
ためらうことなく7100rpmまで吹け上がる
とはいえ、動的能力は確実に向上している。望むべき走りを得るため、Z34型では3.7L V6エンジンを一生懸命働かせる必要があったものの、RZ34型の3.0L V6ターボは低回転域から余裕がある。
48.3kg-mの最大トルクが1600rpmで得られるため、発進直後からたくましい。そのまま回転数の上昇に合わせて急速にパワーが高まり、レブリミットへ飛び込んでいく。その過程で放たれるサウンドも勇ましい。
最高出力の405psは6400rpmで得られるが、ためらうことなく7100rpmのリミッターまで吹け上がる。気持ちの良いユニットだ。
6速MTはシフトレバーが軽すぎ、感触に優れるとはいいにくいが、正確にゲートを選べる。シフトダウン時に回転数を合わせるレブマッチ機能も備え、必要ならドライバーを助けてくれる。
シャシーの仕上がりも悪くはない。パワーステアリングは電動式に置き換わったが、適度な重み付けで反応はリニア。切り込んでいくほど徐々に重みが増し、フロントタイヤの感覚も掴みやすい。Z34型では、最後まで油圧式だった。
タイヤはブリヂストンのS007で、日常的な速度域のグリップ力は充分といえ、コーナリングラインを熱心に維持してくれる。トラクションも低くはなく、フルアクセルでも暴れることなくダッシュする。
低速域でテールを振り回せるシャシー特性
ところが高速で荒れた路面へ侵入すると、RZ34のシャシーがさほど磨き込まれていないことが見えてくる。不意の起伏ではダンパーの減衰力不足が顔を出す。シャシーには振動が伝わり、ドライバーを少し不安にさせる。
タイヤのグリップ力も、負荷が増大していくと急激にトーンダウン。きついヘアピンでは、想像より早くアンダーステアへ転じていた。Z34よりフロントノーズが重いことの現れでもある。
そのかわり、スタビリティ・コントロールをオフにすれば、リアタイヤを狙い通りに滑らせることも難しくはない。試乗車はLSD付きのパフォーマンス・グレードで、ドリフトを漸進的に維持できた。オープンデフなら、挙動は安定しないだろう。
低速域で思い切りテールを振り回せるシャシー特性は、Z34やZ33型にも通じる個性といえる。だが、惜しくもそれ以外でも前世代との密接さを感じてしまう。
新しいV6ターボエンジンはパワフルで扱いやすく、一歩進んだ印象はある。インテリアに実装されたデジタル技術も、2022年水準としては不足ない。とはいえ、それ以外のドライビング体験で新しいと感じる部分は決して多くないことも事実だ。