ランボルギーニ・ウラカンLP610-4
公開 : 2014.08.19 23:40 更新 : 2017.05.29 19:21
■どんな感じ?
キャビンはここ最近のランボルギーニの文法が適用される。プラスティック素材のパーツは少なくはないが、設いのレベルの高さゆえに、高級感を欠くといった印象は皆無。
ほとんど四角形に近いステアリング上にはややボタンが多すぎる、というのが筆者の第一印象だったけれど、実際に使ってみると思いの外操作しやすかった。(おそらく)パウダー・コーティングであろうパドル・シフトの感覚も気持ちよく、同じくステアリング上に移設されたワイパーやウインカーのボタンもフェラーリより直観的に扱えた。
フェラーリで言うところの ’マネッティーノ’ は、ランボルギーニでは ’アニマ(=伊語で魂の意)’ と呼ばれ、ステアリング下部中央のスイッチを切り替えることによってスロットル・レスポンスやステアリングの重み、ダンパーの硬さを、’ロード’ ’スポーツ’ ’レース’ へと調整可能。舵を切っている最中でも変更できるほどに操作しやすい。
しかし当然、ステアリングが180度回転している際は、他のボタンは上下左右に移動する。この点には注意が必要だ。
低速でのクイックさもフェラーリ同様。ロック・トゥ・ロックはわずか2回転となっており、かなり軽く操舵が可能。これに関しては必須かどうかは分かりかねるが(650Sの方が優れているのも事実)、 4WDの車体を敏捷にしていることは確かだ。ダンパーはもっとも柔らかいモードにしておけば、硬い類ではあるけれど、ポンポンと不安定に跳ねるような感じではない。
スピードを上げてゆく。ステアリングの重みは増すものの、熱狂的とは言いがたくどこか冷静過ぎると感じるが、操舵は正確で、車体もピタリと地面に張り付くように直進しつづける。
ロード・ノイズは少なからず多からず、エンジンの機械的な音はスーパーカーの例に漏れず、明確に耳に届く。ただしパワフルなステレオと80ℓの燃料タンクのおかげで、日常的な使用にも充分に対応し得ると思えた。マクラーレン650Sにはまだまだ及ばないけれど、ガヤルドに比べれば着実に使用領域を広げたと言っていい。
ただしやはり大事なのは、エンスージアストの心をどれだけわし掴みにできるかである。つい最近、筆者はガヤルド・スーパーレジェーラを運転する機会があった。このクルマを引き合いに出してみると、ウラカンはやや薄味なのだが、ドラマティックに欠けるという意味ではないので、どうか安心されたい。
ガスペダルを踏み込めば、給排気系の雄々しいサウンドが響き渡る。マルチシリンダー・エンジンのきめ細やかな、嬉々とした音に耳を傾けるのは、実に気持ちがいい。ギアシフトの変速も迅速そのもの。ポンとアクセルから足を離せば、件のアフターファイヤー音がバラバラと鳴る。世界屈指のパワートレインと言っても過言ではない。
シェルは堅牢で、コーナーでのシャシーの懐の深さは計り知れないほど。終始フラットで、高い(高過ぎる)アビリティに目眩がするほどだった。日産GT-Rほどの炸裂感はないけれど、敏捷性は明らかにウラカンの方が勝っている。
グリップ・レベルとトラクションは世界最高水準だといえる。限界までアプローチしてゆけば、ステアリング・リムからは多大な情報量が伝わり、一抹のアンダーステアと隣合わせにコースを突き進む。’ドラマがある走り’ とはまさにこのことだと思った。
サーキットではどうだろう? 2、3周しかラップを重ねることができず、しかも路面はウエットだったので、正確にはまだよく分からない。ただし一般道での振る舞いを見る限り、予想から大きくずれることはなさそう。フロント・タイヤのトレッドは245mm、リアは305mmで、車幅はわずかにフロントの方がリアよりワイドになっているけれど、すでに全荷重の42%がフロントに集中しているため、ブレーキ制動下でボディが前部に大きく沈むようなことはない。
通常時は全トルクのうち30%がフロントに分配される。したがって、リアがジリジリと滑り始めようとする前に、素早く荷重を移動する必要がある。
ここを巧く操ることができば、コーナー出口でもニュートラルな姿勢を保つことができる。一歩間違えると、フロント・エンドから破綻し始めるため、注意が必要だ。
テスト・コースよりも幅が広く、平均速度が高いサーキットをドライ・コンディションで走るならば、より荷重をフロントに掛けて、フロントを落ち着けながらパワーを引き出してやる必要がある。その際のガスペダルでの調整のしやすさは、今のところR8の方が上。ここだけはもう少し熟成の余地がありそうだ。