異例の祭典に パリ・モーターショー2022 まとめ 注目はフランス車と中国車

公開 : 2022.10.25 06:05

ルノー4

欧州のクラシックカーとして名高いルノー4が、EVとして復活する。ルノーが今後7年間に発売する7台のEVのうちの1台で、2025年に市場投入が予定されている。新型5と並んで、スタイルにこだわる消費者をターゲットにしたモデルとなる。

パリ・モーターショーでは、オフロード仕様のコンセプトモデルが公開された。

ルノー4のコンセプトモデル
ルノー4のコンセプトモデル

ルノー5のレーシング・コンセプト

初代ルノー5の誕生50周年を記念して、ドリフトモードを搭載したEVコンセプト「R5ターボ3 E」という奇抜なクルマが制作された。

市販モデルではないが、巨大なリアタイヤ、2基の電気モーター(379ps)、42kWhのバッテリーを搭載。車重はわずか980kgと非常に軽量だ。

ルノーR5ターボ3 E
ルノーR5ターボ3 E

インテリアはクラシックなコンセプトカーそのもの。レーシングシートとモジュール式の電子ディスプレイを備えながらもレトロに仕上げ、ノスタルジーとモダンを両立させている。

ルノー・オーストラル

ルノー・オーストラルは、カジャーの後継車種として2023年に欧州で発売予定の中型SUV。アライアンスパートナーである三菱日産と共同開発した第3世代CMF-CDプラットフォームをルノーとして初めて採用している。

ルノーの新しいスタイリングだけでなく、2種類のハイブリッドシステムも導入する。1.2L 3気筒または1.2L 4気筒に電気モーターを組み合わせ、出力は140psから200psと幅広い。燃費は最高26km/lを達成するという。

ルノー・オーストラル
ルノー・オーストラル

ルノー・セニック・ビジョン

ルノー4とともに、次世代ラインナップを構成する1台がルノー・セニックだ。セニックとは、1991年から2022年まで生産されていたMPVと同じ車名だが、2024年に大胆にも電動SUVとして復活する。

パリ・モーターショーでは、燃料電池を併用した先鋭的な電動パワートレインのコンセプトカーとして公開された。市販モデルでは完全なBEVとして販売される見込み。

ルノー・セニック・ビジョン
ルノー・セニック・ビジョン

新型メガーヌEテック・エレクトリックの上に位置する新型セニックに期待したい。

現地レポート(10月17日の会場の様子)

10月17日(月)07:00

ダチアのデザイン責任者デヴィッド・デュラン氏と、兄弟ブランドであるアルピーヌのデザイン責任者マルク・プーラン氏が、それぞれのコンセプトカー(アルペングローとマニフェスト)について話しているのは面白い。見た目の類似性はまったくないものの、軽量化、効率の最大化、必要不可欠な機能の搭載というアプローチにおいて、この2台のコンセプトカーは非常によく似ているという。「ダチアではライフスタイルを重視し、アルピーヌではスポーツ性を重視していますが、いくつかの価値観は共通しています」とデュラン氏。プーラン氏は、両者が完成品を見せ合うまで、どちらも「マニフェスト」と呼ばれていたことを明かした。(フェリックス・ペイジ、以下FP)

07:15

ダチアがマニフェスト・コンセプトを披露。チェコの競合であるスコダのように、アウトドアやアクティビティに焦点を当てたブランディング戦略をとっている。デザイン責任者のデヴィッド・デュラン氏は、他社が同じような理念を持っていることについてどう思うかと記者に問われ、こう答えている。「心配はしていません。スコダの製品は当社よりも高価で、異なる分野にあるからです」(FP)

07:30

パリ・モーターショー2022の一幕。マクロン大統領がブースを訪れている。
パリ・モーターショー2022の一幕。マクロン大統領がブースを訪れている。    AUTOCAR

最初に注目を集めたのは、新型ジープアベンジャー。見た目もよく、欧州でのジープの販売台数を大きく伸ばしそうな予感がする。(レイチェル・バージェス、以下RB)

07:45

BYDの巨大なブースは、欧州市場での成功の可能性を象徴しているに違いない。クロスオーバー、大型SUV、ラグジュアリーGT、高級セダンの4モデルをラインナップし、某カリフォルニアのEVブランドに照準を合わせていることに、疑問の余地はないだろう。(FP)

08:00

思いがけない発見があった。「アメリカン・カー・シティ」だ。エスカレードやラムTRXなど、4台のバカでかいクルマが並んでいる。欧州で売れるのだろうか……。(RB)

08:15

プジョー9X8(ル・マン・ハイパーカー)の実物を初めて見た。超カッコイイ。その後ろにあるのは508 PSEで、かなり近い関係にある市販モデルだ。WECへの取り組みによって、プジョーがさらに楽しいクルマになることを願っている。(RB)

08:30

今年のパリは量より質。2階建ての1ホールに凝縮された小さなショーだ。しかし、新車発表の数は多く、ステランティスのカルロス・タバレスCEOやルノーのルカ・デ・メオCEOなど、業界屈指のエグゼクティブが顔を揃えている。(マーク・ティショー、以下MT)

08:45

このモーターショーでは、適切な役員が適切な時間に適切な場所にいて、ジャーナリストと何百ものインタビューを行うことができるよう、何週間にもわたって計画が練られてきた。しかし、エマニュエル・マクロン大統領の訪問が決まると、すべてがぶっ飛んだ。フランスのシークレットサービスが警戒に当たるため、すべてのブースは1時間前までに片付けなければならず、インタビューのスケジュールも宙に浮いてしまったのだ。(MT)

09:00

いやいや、これぞモーターショーの醍醐味。トップと新車のスナップを狙う人だかりで、ブースは何重もの人垣に囲まれている。ルノーのルカ・デ・メオCEOはフランス語で話し、フランス市場に特化したショーであることを実感する。この後、英語で話してくれるそうだ。(RB)

09:15

ルノーは、マクロン大統領の到着が迫る中、大急ぎでブースを閉鎖した。ルカ・デ・メオ氏をはじめ、ルノーの幹部は少し緊張しているようにも見える……。(MT)

09:30

ルカ・デ・メオ氏がセアト(スペインの自動車メーカー)のCEOを退き、ルノーのトップに着任した後、セアトに目立ったニュースは見られない。ルノーを黒字にすること、日産との厄介な提携をマネジメントすることなど、現在の課題が大きなものであることは間違いないが、彼はストレスを見せない。まるですべてを受け入れているかのように見える。(RB)

09:47

ついに現れた。フランスのエマニュエル・マクロン大統領が、ルノーのルカ・デ・メオCEOと談笑している。マクロン大統領は、これで最近のストライキから注意をそらすことを望んでいるだろう……。(RB)

10:01

プジョー408はランボルギーニウルスに似ていると言われている。デザイナーのマティアス・ホッサンはそれについてどう感じているのだろうか?「まあ、キャラクターという点では、かなり自己主張が強いですね。悪くない比較です」(FP)

10:14

記者はフランスに短期間住んでいたことがあるが、小さなエクサム(Aixam、仏の超小型車メーカー)についての不平不満が今でも頭から離れない。もちろん今はEVもあるし、今となってはその魅力に驚かされるけれど。(FP)

10:38

ルノーのデザイン責任者ジル・ヴィダルは、SUVの「賞味期限」について話してくれた。彼は、SUVの車体寸法を小さくしながら、同じように広いインテリアを作ることが目標だと話す。それはもちろんEVのロングホイールベースのフラットアーキテクチャにも当てはまるものだという。奇抜なルノー4コンセプトについて、ボンネットのハンドルは残らないと言っているが、これは驚きではない。(RB)

11:03

DSの販売台数がアウディを上回っている国がある。アルゼンチンだ。DSのベアトリス・フーシェCEOは、アルゼンチンには根強いフランス文化があり、それがDSの牽引力となり、高級車市場ではメルセデス、BMWに続く3位になったと語っている。(RB)

11:18

昔のモーターショーと比べると、パリは小さく感じる。しかし、主要な出展メーカーの1つであるプジョーは、このような物理的なイベントはブランドの価値観を伝える上で重要だと考えている。デザイン担当のマティアス・ホッサンはAUTOCARに対し、「デジタルでもコミュニケーションは可能」だが、408のようなまったく新しい製品は、実物で見せるのが一番だと語った。一方、CEOのリンダ・ジャクソンは次のように述べている。「パリ・モーターショーは、自動車産業にとって素晴らしいイベントであり、自動車の歴史に革命をもたらすような大きな変化について考える時間を与えてくれます」(FP)

11:38

マクロン大統領は、プジョーの新車に近づこうと躍起になっていた。プジョー208は、欧州で最も売れている乗用車であり、同時に最も売れている電動ハッチバックでもある。そして、フランスでは最も売れているEVでもあるのだ。(FP)

12:00

自分の帝国がどんなに大きくなっても、ステランティスのCEOであるカルロス・タバレスは、チームと常に連絡を取り合っている。DSのベアトリス・フーシェCEOは、週に2~3回タバレスと話すという。「彼は今まで(グループが小さかった頃)と同じように話しやすい」とのこと。(MT)

12:16

カルロス・タバレス氏とのインタビュー。中国の自動車メーカーに対し欧州での輸入税を課すこと、EU7の排ガス規制を廃止すること、そしてアルファ・ロメオの将来が担保されていることなど、発言に事欠かない人物だ。(MT)

12:20

ダチアのブースにボルダリング用の壁が。これは斬新。おそらく、障害を克服する、あるいは製品戦略を「スケールアップする」というメタファーがあるのだろう。あるいは、我々記者がショーの途中でちょっとした運動をするのが好きだと思われているのかもしれない。(FP)

12:31

A110 Rは、数年後にアルピーヌの電動スポーツカーが登場する前の最後のイテレーション(開発)になると、アルピーヌのプロダクト・パフォーマンス責任者であるソバニー・アンは明らかにした。軽量化(車重01082kg)のほとんどは、カーボンパーツと特殊なタイヤの使用によるものだと彼女は説明する。(MT)

12:43

アルピーヌのアルペングロー・コンセプトは、アルピーヌ車の未来を反映しているらしい。確かにわくわくするが、コンセプトの特徴である「水素」を導入するという確固たる計画はない。(RB)

13:01

新型408のリアエンドは、あまり気に入られていないようだ。最近のプジョーに比べれば、ちょっとうるさいかもしれない。(MT)

13:30

フランスの新興メーカー、ホピウム(Hopium)のブースには、クルマ、ターンテーブル、そしてロゴがある。ミニマルであるが、がらんとしていて、未完成に見える。人を引きつけるような展示ではない。アンダーコートの上にカラーを散りばめてもいいのではないだろうか。(MT)

13:57

中国企業はたくさん来ているし、抜け目のない動きだと思う。これまでのモーターショーにあったような質量や壮大さが今年はないため、まだ確立されていないブランドにもアピールの余地があるということだろう。ドイツの巨大メーカーと競合するわけでもなく、モーターショーを訪れた消費者は、比較的無名の企業のブースにも目を向けるかもしれないのだ。賢いやり方だと思う。(RB)

14:29

ベトナムのビンファストVF8が、ルノー・カジャーとアルファ・ロメオ・トナーレを掛け合わせたものに見えるのは自分だけだろうか?(RB)

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ愛知在住。幼少期から乗り物好き。住宅営業や記事編集者といった職を経て、フリーランスとして自動車メディアで記事を書くことに。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。

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