小粒なイタリアン・スーパーカー フィアットX1/9 ガンディーニxランプレディの秀作 後編

公開 : 2022.11.06 07:06

フィアットが生み出した小さなミドシップ・スポーツ、X1/9。誕生から50年後に、その魅力を英国編集部が振り返りました。

運転姿勢は1970年代のイタリア車的

ジュディ・トロウ氏がオーナーのフィアットX1/9 1300の荷室を開いたら、当時のアクセサリーで特に貴重な逸品が出てきた。イタリアのカロッツェリア、ベルトーネ社がデザインした旅行かばんだ。クルマのシートとコーディネートするように仕立ててある。

トランクリッドの前方には、1.3Lユニットへアクセスするためのエンジンリッドが切られている。開いても、エアクリーナーボックスが殆どを覆っていたが。

グリーンのフィアットX1/9 1300と、ブルーのベルトーネX1/9 1500
グリーンのフィアットX1/9 1300と、ブルーのベルトーネX1/9 1500

オリーブグリーンをベースに、ベージュとブラウン、オレンジのストライプがあしらわれたシートへ座る。スマートでスポーティな4スポーク・ステアリングホイールが正面に来る。その奥には、プラスティックなダッシュボード上に4枚のメーターが並んでいる。

センターコンソールにはスライド式のヒーター・スイッチと、複数のロッカースイッチが並ぶ。フェラーリ365 GT4 2+2の車内を思い出させるというのは、褒め過ぎだろうか。

ドライビングポジションは、1970年代のイタリア車的。シートの背もたれはリクライニングできず、膝を曲げて腕を伸ばす格好になる。足が大きいと、ペダルを2枚一緒に踏みそうになる。

エンジンを始動させると、4気筒1290ccのランプレディ・ユニットが小さなハミングを奏で始めた。特にドラマチックなお目覚めではなく、ストロークの長いクラッチペダルを踏み込み、軽く正確なタッチのシフトレバーを倒す。

高回転域でパワフルな1.3Lエンジン

X1/9 1300は、高回転域でパワフルなことが見えてくる。中回転域で若干息苦しそうになるものの、全体的には滑らかに吹け上がり、活発に回すことへ喜びを感じる。反面、4速MTのギア比が離れていることもあってトルク感は細い。

4速では、1000rpm当たり26.7km/hという計算。トップスピードが高いわけでもなく、100km/h出すのに約4000rpmも回す必要がある。

グリーンのフィアットX1/9 1300と、ブルーのベルトーネX1/9 1500
グリーンのフィアットX1/9 1300と、ブルーのベルトーネX1/9 1500

しかし、50年前のモデルとして考えると、操縦特性には心から驚かされる。ステアリングにはアシストが付かないが、素晴らしいのヒトコト。リニアで軽く、クイック。13インチの165/70タイヤから、充分な感触も伝わってくる。

フロントタイヤは不足なくグリップし、路面が乾いていれば、徐々に推移するアンダーステアへ持ち込むには想像以上に気張る必要がある。姿勢制御には締りがあり、見通しの良いコーナーへ果敢に飛び込んでいける。MGBでは、舗装を外れているかもしれない。

かなり攻め込むと、リア寄りのエンジンの重量を感じ始める。リアアクスルを中心にボディロールが強まるが、落ち着きを失うことはない。

心が踊ったまま、1500へ乗り換える。1978年に発表されたシリーズ2のX1/9は、基本的にはシリーズ1と同じユニットながら、ストロークを伸ばすことで1498ccの排気量を得ている。トランスミッションも、1速増えて5速マニュアルが組まれている。

シャシーも基本的にはキャリーオーバー。アメリカ市場に合わせたビッグバンパーが追加され、スタイリングは若干乱されている。全長はシリーズ1より140mmも長い。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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